2/3up: 記事・考・白川 第1部 検証 立野ダム③ 洪水調節 緑川、市房の”能力”下回る

考・白川 第1部 検証 立野ダム③
洪水調節 緑川、市房の”能力”下回る

 昨年7月12日朝、熊本市中央区本荘の代継橋は記録
的な豪雨で、水位が堤防ぎりぎりまで迫った。「ゴォ
ーゴォーと音を立てる白川は激しくうねっていた。
プロパンガスやコンテナ、流木が次々と流れてきて、
これまで見たことのない濁流だった」。同校区自治協会
長の榮そのみさん(52)は、緊迫した状況を振り返る。
 仮に立野ダムが完成していれば―。国土交通省熊本
河川国道事務所は「代継橋地点で水位を約30センチ下げる
効果がある」と試算する。河川改修と遊水地を整備す
れば同地点で約25センチ、これにダムが加わると約55センチ下
げることができるという。
 国交省が当面の目標として掲げるのが、「20~30年
に一度の大雨」に対応する白川水系河川整備計画。2
日間雨量が400ミリ前後の1980年8・30水害や90
年7・2水害、昨年7・12水害クラスの豪雨を想定す
る。代継橋地点で想定される最大流量毎秒2300トン
のうち、立野ダムで200トン、県が整備する黒川遊水
地群で100トンをそれぞれカット(洪水調節)し、残
る2千トンを河道で安全に流す計画だ。
 同事務所の中元道男調査第一課長は「立野ダムが完
成していれば、雨が短時間に大量に降った7・12水害
時は200トン以上のカットが期待でき、河川改修と遊
水地の効果と合わせ、代継橋では推定最大流量230
0トンを1900トン程度に減らせた」と強調する。
 しかし、白川で過去最大級となる53年の6・26大水
害は、2日間雨量が550ミリを超える「150年に一
度の大雨」。代継橋地点での最大流量は推定3200
~3400トンで、現行計画の河川改修、遊水地、ダム
すべてを整備しても耐えられる状況にない。
 将来的な目標として国交省が掲げる「150年に一
度の大雨」に対応する河川整備基本方針では、同地点
の最大流量(基本高水)を3400トンと設定。立野ダ
ムはダムヘの流人量が増えることで効果が増し、最大
400トンをカット。残る3千トンを河道で流す構想だ
が、さらなる河川整備に膨大な予算が必要で、めどは
立っていない。
 毎秒400トンカットは代継橋地点での最大効果。ダ
ム地点では600トンカットに相当する。
 これに対し、他ダムの洪水調節能力は(ダム地点)
は、緑川ダム(美里町)が毎秒800トン、市房ダム(水
上村)650トン、竜門ダム(菊池市)440トン。立野ダ
ム工事事務所は「ほかのダムと比べても効果は決して
小さくない」と説明するが、三つのダムはいずれも利水
機能などを備えた多目的ダム。治水専用である立野ダ
ムのカット量は緑川、市房両ダムを下回り、決して大
きな効果とは言えない。
 同ダム建設に反対する市民団体の中島康代表(72)=
同市=は「ダムは想定を超える洪水では、ダム湖が満
水になり調節不能となる。環境にも悪影響を与えるダ
ムに頼るのではなく、河川改修や遊水地など代替治水
策を徹底して進めるべきだ」と指摘する。(横山千尋)

【写真】昨年の7・12豪雨で増水した白川。奥は代継橋
    =熊本市中央区本荘

熊本日日新聞 2013年2月2日

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