平成28年4月の熊本地震で、阿蘇では大動脈である国道57号と阿蘇大橋が大規模な土砂崩れで崩落しました。そのすぐ下流の立野ダム建設予定地周辺も両岸が大きく崩壊し、工事用道路や現場事務所等が崩落した土砂に埋まりました。周辺には多くの断層も露出しています。立野ダム完成後にこの地震が起こったとしたらダム上流は多量の土砂や流木で埋めつくされ、洪水調節できなくなっていたことは明らかです。断層が集中する火山地帯のカルデラの切れ目は巨大なダム建設の立地条件として最悪です。
国土交通省は熊本地震による大規模な土砂崩壊や断層の露出を受けて7月27日、「立野ダム建設に係る技術委員会」を設置しました。同委員会は初会合からわずか3週間で3回の会合を行い、8月17日に「立野ダム建設に技術的な課題はない」との結論を出しました。国土交通省の主張に関し、同省が選んだ7名の委員は何の疑問も表明せず、ダム建設継続をそのまま承認しました。
立野ダム予定地の大半が土砂崩壊し、周辺に多くの断層が確認されているにもかかわらず、同委員会の見解は「立野ダム建設予定地に考慮すべき断層はなく、岩盤の健全性に問題はない」。流木や巨石で立野ダム下部の穴(高さ5m×幅5m)がふさがり、洪水調節不能となる懸念については「流木対策でダムの穴がふさがることはない」と結論付けました。しかし、直径約10mの立野ダム仮排水路トンネルの入り口は、土砂と流木でふさがっています。同委員会の検証は極めて不十分と言わざるを得ません。そのような中、国土交通省は、来年度にも立野ダム本体工事に着手しようとしています。
白川流域の治水対策は、立野ダムではなく河川改修を進めるべきです。国は917億円の立野ダム事業費を、震災復興に充てるべきです。熊本地震の立野ダム建設への影響をまとめた当会作成の報告書、当会が「立野ダム建設に係る技術委員会」や諸行政機関に提出した文書、学習会資料などをまとめました。
■10月15日緊急学習会パート2「熊本地震と立野ダム」プレゼン資料(pdfファイル)
緊急学習会パート2「熊本地震と立野ダム」村田重之先生の講演(動画)と、当会からのプレゼン(動画)です。ご覧ください!
■6月5日緊急学習会「熊本地震と立野ダム」プレゼン資料
須藤靖明先生の講演(動画)です。
当会からのプレゼンテーション(動画)です。
■「立野ダム建設に係る技術委員会」に関して提出した文書
■国土交通省、熊本県、熊本市に提出した文書
■報告書
熊本地震直後の立野ダム予定地周辺現地調査報告書2016.4.24
緊急報告・熊本地震直後の立野ダム予定地現地調査2016.4.20
第2報・長陽側からの立野ダム予定地 現地調査報告2016.4.30