砂防ダム崩落現場。その上に2つの新規砂防ダムを計画。

引き続き つる 詳子 さん、 家中 茂 先生と共に、災害と山の現場を歩いた。
昨日は、流域で1、2を争う砂防ダム土砂堆積の現場、川辺川支流の宮目木谷を見学した。

砂防ダムのために、土砂と立木で被害が逆に拡大してしまった谷。山の対策をせずに、新たに砂防ダムを作り続けることについて考えさせられる。

川辺川との合流点から3キロほど上流に、昭和58年に作られた巨大砂防ダムがある。
一昨年の球磨川豪雨災害では、この上流の山が大規模に崩落。
もともと溜まっていた土砂の上に、さらに大量の土砂、岩、立木が溜まり、砂防ダム上流数キロに渡って、谷を埋め尽くした。

仮の砂防ダムのそばも斜面が崩れている。さらに上流には数百メートルにわたる大規模な深層崩壊がある
仮の砂防ダムを作り、 その上流側と下流側に二つの大きな砂防ダムを作る計画という

山の対策は放置したまま、この対策として国県がやっているのが「新たな砂防ダムを2つ建設する」というもの。
現場では、ブロックで仮ダムが作られ、砂防ダム2基新設のための準備が始まろうとしていた。

巨大に見えるその仮ダムの上流側には、10mほどの土砂の山。
両側の斜面は一昨年の崩落したまま。ここだけでも土砂は雨で流れ続けているだろう。

大きな雨が降れば、この仮ダムも一瞬で埋まる。
さらに大きな雨だと、上流からさらに土砂が流れ、仮ダムも破壊し、下流へ向けて谷の両側を埋め尽くして被害は無限に続く。

仮の砂防ダム上流には大量の土砂。 大きな雨が降ればこの砂防ダムもすぐに埋まり、越えて下流へ流れ込む。

砂防ダムが役に立たないとは言わないが、でも、少なくとも万能薬ではなく、効果は限定的。
流水型ダムと同じく、「想定した量の降雨の時にいくらか役に立つのかもしれない」「でも根本的な解決策ではない、一時的な対処療法。山の対策をしない限り、土砂流出は無限に続く」。しかも「建設と引き換えに、生態系や清流は永遠に失われる」。

こんなことが、球磨川水系全体で、無数に行われている。
今後もさらに無限に続いていく。
そんな河川整備で良いのか。

以下は、この宮目木川の砂防ダム土砂堆積で被害を受けた方の言葉から。


<五木村/住民>
2020年11月2日(月)に五木村で開催された「住民の皆様の御意見・御提案をお聴きする会」での発言記録より。

【発言者⑭】
私は宮目木谷というところに、上流に山と棚田を持っておりました。その下流に30年前ぐらい前に砂防ダムが出来まして、それにどんどんどんどん土砂が溜まっていって、そのときは止めてあるので土砂が溜まるのはそれは当たり前のことだろうというぐらいの感じで見てたんですけれども、それが毎年毎年どんどん溜まってきて、2年前、それから今回ので、その上にあった私の棚田とワサビ田と山林と、その地域の方々の畑、棚田も全部埋まってしまいました。砂防ダムも今、いろいろ話はありますけれども、場所によってはそういう上流部にあるものが全部それに土砂が溜まって埋まってしまうようなところには、これはどうかなというふうに今考えております。ぜひこれは現状は見ていただきたいと思います。

それを見て思ったんですけれども、川辺川ダムも一応そういう話があってもし作るとすれば、大小は違いますけれども、五木村にもどんどん上流から土砂が溜まってきて、それを毎年溜まった分ずつ取り除かないことにはまた蓄積していくわけですので、ダムによってそれを10年、20年の単位ではなんとか防げるにしても、その単位で五木村はどんどん土砂に埋もれていくんじゃないかというふうに思います。それでダムはちょっと私は賛成は今のところできないです。

それよりも川にある、今、五木にも4か所あります、野々脇、板木、神屋敷、宮園の横手、そういう堤とか、あとは今、新聞報道で出てますけれども瀬戸石ダムとか、逆にああいうのを全部一回流れをよくするように取っ払って、それで今、やっておられるような川底を下げるなり、両側の堤を上げるなり、そういうこともできないと川幅を広くして、それの流れをオーバーしないような工夫をまずやっていただいた上で、最終的にダムの問題を考えればどうかなというふうに思います。

それともう一つですけれども、私は林業をやっておりまして、山で今、伐採をしております。それで我々が伐採するときに使う機械が、木材搬出用の重機を入れるときに、山に作業道、作業路を開設します。そのときに山を傷つけて道幅3メートルぐらいの道を入れると、そこに下流域に生活されている方や生活水を谷からとっている方からいつもお叱りを受けます。「お前たちが山荒らすもんで、水が出るたびに赤濁りする。それで崩壊する」ということで、もちろんそれもあるかもしれませんけれども、私が一番感じてるのは、鹿が相当増えております。

中を歩くと、雑山の中で大きい木は立ってますけれども、中の小さい草や灌木がほとんど食い尽くされて、表面の土がむき出しで、降るたびにその表面を大雨のときなど削って、どんどんそれが川に流れ込んでおります。そして崩壊もそれでまた招く。これはもうどうにも調整ができないので、山から川に行くまでのその部分をどうにか考える、その鹿による被害も。そちらのほうの対応もやっぱり考えていただいたほうがよくはないかというふうに思います。それ3点です。よろしくお願いします。

(報告:寺嶋)

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