環境アセス勉強会 参加レポート

2023年1月29日、自然観察くまもと(自然観察指導員熊本県連絡会)の総会に合わせて開かれた、川辺川ダム環境アセスメントについての学習会にオンライン参加しました。

ゲストは、元日本自然保護協会保護部長で環境アナリストの辻村千尋さん。
日本の環境政策、特に抜け穴だらけのアセス法を変えたいとの思いで、環境の視点から政治の世界に飛び込んだというユニークな経歴の方。
全国のアセスを見て来られた方で、川辺川ダム環境アセスの問題点と、一般市民としてどう向き合っていくかを考える視点が分かり、良い機会になりました。

自然観察くまもと会長でもあり、当団体代表であるつる詳子さんからは、補足解説として、先の川辺川ダム環境アセス「方法レポート」のおかしさ(ダム構造が決まらないのにアセスをやっている)、穴あき川辺川ダム環境アセスの参考とされた福井県足羽川ダム、数年前に完成した穴あきダムで、台風後に大量の流木が上流部に詰まった山形県最上小国川ダムの例などのお話もありました。

以下、辻村さんのお話について簡単なメモです。(報告:寺嶋)

 海外のアセスでは第三者組織がやることも。日本は事業者自身がやる。海外のアセスでは、事業をしてはいけない保護エリアなどが最初から指定されているが、日本は事業者自身がアセスをやるので、事業者主体で作りやすい場所、作りたい場所に計画される。

 日本のアセスにも、法律上は「事業をしないというゼロ案」も考える必要があるとなっているが、考えなくても良い、という法律の抜け道がある。だから、日本のアセスは事業をやること前提。

 こういう影響があるので調査をするよ、こういう調査結果が出ました、というのがアセス。今年春の早い段階で、川辺川ダムの次の段階の準備書(準備レポート)が出るだろう。「準備書」で市町村や住民の意見を受けて、修正して、次の「評価書」が出されたところで環境大臣の意見。修正した評価書が出た時点で、主務大臣が認可を出す形。アセスを実施し、事業終了後は、環境影響評価予測と結果が合っていたか結果を出し、報告書となる。

 環境保全措置の優先順位は、「回避、低減、代償」の順と決まっている。そもそも「回避する」ことが重要。しかし実際には、回避せずに代わりの代替措置による代償がほとんど。アセスで事業を止めるのはなかなか難しいが、止めた例もある。配慮書の段階だとやることをいろいろ並べると事業者は嫌がる。これじゃ足りないなど。四国の風力発電の例では、費用対効果を考えて、事業者が中止した。川辺川ダムでは、その段階はもう過ぎたので、次は「これでは評価されていないではないか」と書いてきちんと提出する必要がある。事業者は問題ないと返してくるだろうが、指摘することは大事。もし指摘した通りのことが起きたら、それは想定外と言えなくなる。想定外と言わせてはいけない。それが準備書の段階で大事な意見。

 アセスは、ガイドラインの通りに行うだけで、その地域の実情は見ない。

 川辺川ダムの環境アセスの問題点の1つは、これは穴あきダムでありながら、穴あきダムとしての環境影響評価がされていない。
これは大問題。方法書には試験湛水のことなど出てくる。しかし、穴あきで水は普段流れるのに、他の貯留型ダムと同じように、試験湛水のことしか書いていない。穴あきダムの特性を活かしたアセスになっておらず、普通のダムと同じアセス。しっかり見ること大事。

 また、アセスには書かなければならない項目がいろいろあるが、例えば「自然とのふれあい」について。実際のアセスでは、単に公園からどう見えるかなどしか書かない。本来は、地域の人たちが大事にしている自然とはどういうものか、それがどうなるのか、その評価が書かれなければおかしい。そういう「人々の視点」は、アセスに決定的に欠けている。

 また、球磨川豪雨水害では瀬戸石ダムが洪水被害を拡大させたことは明白だが、それにも触れていない。そこもおかしい。

 穴あきダムが、国の言う通りなら、土砂も流木も流れていき下流で先の水害と同じことが起きる。穴あきダムとしての環境影響を考えるなら、穴を流れる土砂や流木が下流にどういう影響を与えるかも評価しないといけない。しかし、細粒物質がどう流れていくかなどは書かれているが、穴あきの状態でもっと大きなもの、大量の流木や土砂が流れることの環境影響は、調査すらされていない状況。ここはツッコミどころだと思う。発電用のダムも悪さをする可能性もあるわけで、そのこともはっきり書くべき。

 そもそも、穴あきだろうと何だろうとダムは無い方が良い。ただ環境アセスなので、「そもそも論」は書けない。それでも、意見書の最初に「そもそも穴あきダムは役に立たない」と書いた上で、「以下意見を述べる」と書いて良い。アセスに意見を出すことは、事業を認めていることではない。

 尺アユが川辺川にいるという意味は大事。魚は、魚道を上ることはできても、下ることはできない。鮎は遡上し下降する。魚道は効果あるのか。魚道の効果が出るのは陸封型の、海には下らないもの。例えば、うなぎは海に行かないと生きていけない。今の河川環境の3-4割しかうなぎは使えていない、だから数が減っているという見方がある。

 また、アセス対象となるのは希少種でなくてもいい。希少種だから守らなければならないではなく、普段いるもの、別の川にもいるものなど、すべての構成要素が生きていなければ意味がない。この生物は全国に多くいるから保護対象でない、というのはおかしい。遺伝子的に同一種なのか、そこまで調べたのかという話。

 「これは球磨川の宝だよね」と皆さんが言われることが、環境影響評価で評価されていなければ、そこは意見を言うべき。



(質疑の中での辻村さん回答)
質問■
アセスで止めた例と、事業者が民間か行政かの違いはあるかについて。

回答:
あれもこれもやらないといけない、という有無を言わせないプレッシャーを与えることは大事。
徳島の風力発電の例では、早い段階で大学の先生も入って勉強会をした。民間は利益が出ないといけないから、費用対効果を考えて中止した。行政がやる事業は、嘘のB/C(費用便益比)を出すので、赤字でも事業が進むと言う面はある。

行政がやる事業を止めるのは、選挙しかない。さまざまな人が意見を言うことが大事。政治家にとって大事なのは、票と金。川辺川ダムが問題だと言っている人がこれだけいることを示すことが、県知事にとっても影響力がある。
川辺川ダムを見ていて感じるのは、水害で被害を受けた人がダムをいらないと言っている点。そういう人たちと連携する。
水が浸かった人たちもいるので、そこをディスカッションして、意味がないということをどう知ってもらうかは大事。

質問■
環境専門家ではないので、生物や調査方法の問題点を書くことができない。それがアセスへの意見提出のハードルを上げている。できることは何か。

回答:
さまざまな立場の人がいることを活かす。
専門的なことは例えば自然保護協会に頼めば良い。彼らがそれをできるのは、ネットワークの中に専門家がいるから。世論を上げていくことができる方は、率先してやれば良い。つるさんの活動を手伝うことでも良い。「生き物は分からないが自分の暮らしにこう影響があるから」ということで、意見をいうこともできる。ダムは生き物だけではなく暮らしに直結する。

専門的なことは、生き物専門家に頑張ってもらう。つるさんからプッシュすれば日本自然保護協会も協力してくれるだろう。
みんなで役割分担していかないと運動は広がらない。
それぞれができることをしっかりやる。それを横串のようにつなげることも重要。

質問■
ダムのアセスの影響範囲は集水域の3倍程度までで良いことになっている、と国は言うが、それがそもそも非現実的では。
アセス実施後にそのアセスが正しかったかの報告書を出すが、ダムの例ではその報告書が役に立っていない、他のダムの参考になっていないということなのか。

回答:
そもそも、アセスで事後報告書を出している事例がほとんどない。ダムでは1個もないかもしれない。そこはまた水源連などに尋ねてみたい。
「集水域の3倍」というのは技術指針みたいなものにあるのだと思うが、それはダムの技術屋が決めたこと。環境省など生態系を見るところには、そんなガイドラインは存在していない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です