●農政局が「川辺川土地改良事業」を第三者委員会で再評価?

 8月13日の熊本日日新聞の報道により、「九州農政局が第三者委員会を設け、六月から川辺川土地改良事業など八事業の必要性などを再検討している」ということが明らかになりました。これは昨年、橋本龍太郎首相(当時)が、採択後、一定期間を過ぎた公共事業について再評価をすると発表したものを受けて農政局が設置したもので、「時のアセス」とも言います。
 川辺川土地改良事業では、2000名を超える農家(受益農家4000戸の半数以上)が「ダムからの水はいらない」として、農水省を相手に行政訴訟中なのですが、記事によると《第三者委員会の開催日時も事前には一切、公表されなかった。また、原告農家からの意見聴取もなく、第三者委員会は川辺川土地改良事業については現地調査も行わなかった》というのです。また《反対農家から意見聴取しなかったことについて、事業管理委副委員長の倉嶋清次農政部長は「受益農家でつくる土地改良区から意見を聴くことで、農家代表の意見を聴いたと解釈している」》とのこと。受益農家の半数を超える原告団には何ら「第三者委員会」の存在を知らせず、意見聴取もせず、絶対数がずっと少ない(337名)土地改良区の意見を農家代表の意見だと見なしているのです。(《 》部分、熊本日日新聞記事(8/13)から引用:http://www.kumanichi.co.jp/dnews/980813/kiji1.2.html

 これを知った川辺川利水訴訟の原告団は翌14日、「再評価」に当事者である農民の声がまったく反映されてないことへの抗議と、第三者委員会が公正な「再評価」を実施するためには、農民の意見を述べる機会を保証すべきであるという申し入れを行い、「第三者委員会に農民(原告)側の意見を提出したい」「原告と九州農政局局長との直接交渉(懇談)の機会をつくって欲しい」と要望しました。
 またこの時、第三者委員会による審議会はすでに3回実施(1回目 6/24, 2回目 7/27〜28, 3回目 8/10)され、現在まとめの報告書を作成していることがわかりました。この時の農政局側の回答は「上部側と相談し、なるべく早く返答する」ということでした。

 8月21日には、「川辺川利水訴訟を支援する会」が九州農政局に川辺川利水事業の再検討に関する情報公開を申し入れを行いました。検討内容は(1)再検討のために設置した第三者委員会の人選経緯(2)利水訴訟原告団が、事情聴取者の対象から外れた背景(3)第三者委員会に提供された資料や討議事項の内容―など。(熊日報道より:http://www.kumanichi.co.jp/dnews/980822/kiji1.4.html)この時も農政局の信田雄一・事業調整室長は「本省とも審議した上で回答したい」と回答しました。

 そして8月31日には、改めて「川辺川利水訴訟原告団」「川辺川利水訴訟を支援する会」「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」が農政局に対し、「原告団からの意見聴取がないまま、事業の再検討が進められている。再評価の本来の意味からいっても、事業に疑問を持つ原告側と事業者側が対等に、公開で意見を述べ合う場が必要だ」として、熊本市で行う緊急シンポジウムへの参加を要請しました。この時の農政局からの返事も「出席できるかどうか、本省とも相談の上で連絡する」とのことでした。