萩原堤防問題とは何か
「実施すれば川辺川ダムは不要」と指摘された直後に闇に葬られた
八代の洪水防御の要、萩原堤防強化計画「フロンティア堤防」


球磨川は八代市萩原地区で大きく蛇行し、八代海へと注ぐ。

萩原地区は250年に渡って決壊しておらず、河川拡幅工事も進んでいるが、萩原堤防は球磨川の流れによって深掘が進んでいる。そのため、深堀対策を行うとともに、現在の堤防を強化する「強化堤防工事」として、「フロンティア堤防」計画があった。
しかし、国土交通省は「フロンティア堤防」計画自体を、住民への説明なく中止し、2002年以降は説明資料からも削除した。フロンティア堤防のための予算がありながら、一部を調査費用として執行したのみで、その後は別の事業に予算流用を続けていたことが明らかになった。

国土交通省は萩原堤のことを、「いつ破堤してもおかしくない」危険な場所としている。川辺川ダム建設計画でも萩原堤の決壊を想定し、八代地区住民の生命財産を守るためにダムが必要と主張してきた。

平成13年の住民討論集会では、情報公開請求し開示された資料を基に、住民側は「フロンティア堤防計画を実施すれば、八代地区で球磨川は氾濫せず、川辺川ダムは不要」と指摘。国側も「八代地区に限れば洪水を防げる」と認めた。

ところが、その直後から国の説明資料にあったフロンティア堤防計画の記述がすべて削除された。説明を求める八代市民や市に対し、国は強化堤防を「堤防の強化」(河川改修の一部として)に、フロンティア堤防を「スーパー堤防」とすりかえ、従来計画されていた強化堤防・フロンティア堤防計画の存在そのものを否定してきた。

ところが、昨年12月、フロンティア堤防について実施設計がすでに作られていたことが判明。「フロンティア堤防はまだ検討段階であり詳細な実施設計はない」とした従来の国の説明がウソであったことが明らかになった。

さらに2005年4月には、予算がないため実施できなかったとしていたフロンティア堤防予算が、実は存在していたことが判明。計画通り実施されていれば、今年完成予定だったことが明らかになった。(記事こちら

「いつ破堤してもおかしくない」と緊急な危険性を国が自ら主張する萩原堤から、「フロンティア堤防」の計画を消した理由を論理的に説明できなければ、国交省は、川辺川ダムを作りたいがためにこの計画を消したとの誹りを免れない。ダムより堤防整備が緊急を要するものであることは明白である。

時系列による国の説明の変遷
住民討論集会発言緑より抜粋
2005年4月5日毎日新聞報道

「萩原強化堤防〜フロンティア堤防関連時系列」

1998(H10)

建設省(国土交通省)「平成10年度重点施策」の中に「フロンティア堤防」の記述あり

[フロンティア堤防]
際限ない自然現象に対し、想定を越える洪水が生じても被害を最小限にくい止めるため、たとえ越水しても急激には破堤しないよう、従来の堤防に比べて断面拡幅、緩傾斜化、越水シート等による法面保護、堤体内の水位の低下等を図るドレーン等の強化対策を実施した堤防をいう。

(国土交通省のHP「平成10年度重点施策」より)

 
1999(H11)

建設省九州地方整備局八代工事事務所事業概要(パンフレット)に「八代市の水害防御の要『萩原堤』をフロンティア堤防として整備し、冠水被害軽減対策を行う必要があります。」と明記

「●強化堤防(萩原堤)
大洪水による越水や浸透に対する耐久性を高め、地域に開かれた利用空間を提供します。八代市の水害防御の要「萩原堤」を、フロンティア堤防として整備し、冠水被害軽減対策を行う必要があります。(強化堤防のイメージ図)」

3月
「球磨川萩原堤防補強効果検討業務報告書」(作成:株式会社建設技術研究所 平成11年3月)という書類が存在。

このイメージ図は99.00.01のパンフに使用されている。2002年から図も削除された

表現の変遷:
99「フロンティア堤防」
00「フロンティア堤防」
01「強化堤防」「緩勾配の堤防」

堤防の図が同じということは、呼び名が変わっただけで、実質「フロンティア堤防」の計画は01年までは事業概要に乗っていたといえる。

2002年には事業概要から「フロンティア堤防」「強化堤防」「萩原堤」という記述が一切消える。


【参考】
2004 9・9国交省の配布資料より こちら
萩原地区の事業費
平成12年度 518百万円(捨石根固加工等)
平成13年度 0百万円(八代海域調査委員会を設置し、調査検討を行う必要が生じたことから、予算1億円を流用)
←2001(平成13)年9月の予算流用調書が後に発覚したことにより、これは虚偽の説明になるこちら
平成14年度 140百万円(捨石根加工)
平成15年度 240百万円(捨石根加工)
平成16年度 147百万円(捨石根加工)

2000(H12)
事業概要やつしろ
「強化堤防(萩原堤)」として「大洪水による越水や浸透に対する耐久性を高め、地域に開かれた利用空間を提供します。八代市の水害防御の要『萩原堤』をフロンティア堤防として整備し、冠水被害軽減対策を行う必要があります。」
という記述あり。
2001(H13)

1月萩原堤防のフロンティア堤防化の実施設計発注(2004.12に判明)こちら

事業概要やつしろ
「大洪水に対する越水や浸透に対する耐久性を高め、地域に開かれた利用空間を提供します。球磨川水系では、八代市の水害防御の要『萩原堤』を緩勾配の堤防として整備し、冠水被害軽減対策として、堤防の強化を図ります。

4月9日 西日本建設新聞
大洪水時の被害の最小化(強化堤防の整備)
「八代市萩原地区の萩原堤約2000mにおいて強化堤防として整備。実施に当たっては、現在建設中の九州新幹線工事で派生するトンネルずりを使用。工事費の大幅なコスト縮減も図る」
西日本建設新聞の記述は八代工事事務所の消えたHP の記述と同じ。

八代工事事務所の「消えたHP」

「大洪水時の被害の最小化〜強化堤防の整備(八代萩原地区)」
1.強化堤防の整備
越水や浸透に対する耐久性が高く、また水辺へのアクセスが容易となる質の高い堤防(強化堤防)を整備することにより、堤防越水時等の浸水被害を最小限にくい止めるとともに、地域に開かれた河川空間を創出します。

2.事業目的 2.事業概要
球磨川は、八代市を貫流する一級河川で、これまでの改修により基本的な堤防整備はほぼ概成しています。しかし、萩原地区は水衝部で局所洗掘が進行しており、越水、破堤により氾濫した場合の被害は甚大になることが予想されます。
 このため、八代市を破堤や越水による壊滅的被害から回避するため、堤防の質的強化を行う強化堤防の整備を進めていきます

3.事業概要
萩原地区は、球磨川が山間狭隘部より八代平野に出たところであり、流向を北から南へ転流するため大きな湾曲部となっており、洪水時は水衝部となるため局所洗掘による堤脚付近の深掘れが発生しています。
 この堤防(萩原堤)は、八代市の生命線とも言える堤防であり、過去、宝暦の大洪水(1755年5月)では破堤し溺死者506人、人家流出2,118戸との記録もあります。
 萩原堤が破堤した場合その氾濫区域は、球磨川右岸の八代市、千丁町、鏡町まで及び、更に九州の交通の大動脈である国道3号線、JR鹿児島本線が直ちに水没することになり、地域はもとより九州全域に甚大な被害を及ぼすことになります。
 
このため萩原堤約2,000mにおいて強化堤防として整備します。実施にあたっては、現在建設中の九州新幹線工事より発生するトンネルずりを使用することにより、工事費の大幅なコスト縮減も図るものです。



「フロンティア堤防」の名称が記述より消え、「強化堤防」「緩勾配堤防」と変わる

→HPに使われている画像

●位置図

        

注意!
フロンティア堤防とは川側に緩傾斜の断面を整備する難破堤堤防のこと。再三すりかえられているスーパー堤防とは異なる。

9月1日(流用希望年月日)予算流用調書(2004 7/27日に判明〜後述)
■「予算流用調書」(流用希望年月日平成13年9月1日付、平成16年7月開示)
「目の細分 工事費 減額70.000千円」
「実施計画額262.000千円を計上し、鋭意施工中であるが、萩原地区築堤根固工事においては、平成13年度より、新幹線のトンネルの掘削ズリを使用して根固工事を実施する計画であったが、地元漁協から、当該地区の根固ブロック(乱積)は漁礁としてウナギ、カニ、鮎、鯉など多数の魚類の生息の場を失うことになるので何らかの対策をとって欲しいという要望があった。従って、施工方法、施工時期などの再検討を行った結果、H13年度は盛土の施工を当初30.000立法メートルから10.000立方メートルに縮小することとなったことによって、
70.000千円の余剰が生じることとなった
使用について他の箇所とも検討を行ったが、いずれも使用見込みがないため、不足の生じている測量及び検討費に流用充当し、実施計画額192.000千円に減額変更し、予算の効率的な執行を図るものである。 

   
   
 後の説明との矛盾!!

参考:
2002(H14)6月22日 第3回住民討論集会現地視察発言録より
(「強化堤防をやるということが削除になっていると、この点どうしてなのか」と問われ)
国交省B:
「私ども
やろうと思っていましたけれども、結果的に、八代海域の調査委員会の調査費用などが、ちょっとかかりまして、そちらのほうに予算を充当して、出来なかったということでございます。

2004年9月9日説明会配付資料
八代海域調査委員会を設置し、調査検討を行う必要が生じたことから、予算1億円を流用」こちら


12月9日 第1回住民討論集会
国土交通省C
「確かに、八代地区だけをみれば、八代だけであれば、あと70億円で、八代の皆様だけは、80年に一度の洪水に対して、安全に暮らせるかもしれません。」

「強化堤防の整備、八代萩原地区ということで、今現在の堤防よりもさらに断面積を膨らまして、堤防を強化するという事業でございまして、これは八代工事事務所のほうで、今年度から実施することとしている、ということでございます。」

国土交通省配布資料
「堤防の断面が不足していることをふまえた危険水位を超え、この区間ではいつ堤防が破堤してもおかしくない状況である」とある。

従来の国の説明では、フロンティア堤防の予算1億のうち、八代海の調査に流用したとしていた。実際はこれはウソの説明だった
「1億円はフロンティア堤防の一環の深掘れ対策事業費であり、そのうち7000万を八代海の予算に流用」2004(H16 )7月八代工事事務所、川口

「八代海域調査委員会」
平成13年4月 発足
平成13年6月19日 八代海の調査開始(水質)




河床掘削などの代替案についての発言

【ポイント】
●9月1日の流用調書の存在。流用希望年月日は遡れる?
●国交省の河川の予算は、実施に障害があった場合、「流用」ではなく「複数回繰越」出来るし、それが慣例。「流用」ということは、堤防に緊急な危険性が無いことの証左。
●この場合「強化堤防」はフロンティア堤防を意味する。(01事業概要に「強化堤防」の図としてフロンティア堤防の図を使用)

2002(H14)


事業概要やつしろから、「萩原堤」「フロンティア堤防」「強化堤防の記述が一切消える

6月22日 第3回住民討論集会現地視察
◆土木技術者対論者E
「13年度の予算で、強化堤防という事業を組まれていながら、どうして実施されなかったのか、ということをお伺いしたいと思います。これは所内のパンフレットですけれども、萩原の強化堤防やるんだということをパンフレットの中でいわゆる目玉事業として位置づけておられたのに、事務所のパンフレットから、この
強化堤防をやるということが削除になっていると、この点どうしてなのかということをお尋ねしたいと思います。」

◆国土交通省B
「私ども
やろうと思っていましたけれども、結果的に、八代海域の調査委員会の調査費用などが、ちょっとかかりまして、そちらのほうに予算を充当して、出来なかったということでございます。H14年度も同じような状況で、現在萩原地区については、予算が付いていないと言うような状況でございます。平成15年度以降、予算がつけば、堤防の基盤の補強、河床の補強対策等、すすめていきたいというふうに考えております。」

「強化堤防になりますと、今の堤防の、昨日現場に行かれた方はお分かりだと思いますけれど、鹿児島本線側の、ここから180メートルくらいのイメージの幅の堤防でございます。そうしたことで強化していこうということではあるんですけれども実際洪水の時に破堤しない堤防これは、関東地方と近畿地方で今施工されてございますけれども、スーパー堤防という堤防でございます。これは洪水がこの上を流れても土が持っていかれない。堤防は土でございますので、洪水が流れて堤防の土が持っていかれて壊れるというのが一番恐ろしいところですから、非常に緩い勾配にしてあると、緩い勾配にしてあることによって、仮にこの上を水が流れても堤防は守られるという堤防でございます。こうした形のスーパー堤防にすると高さの30倍、180メートル、この地区で言いますと、位の幅の堤防になるということです。写真、ちょっと見づらくて恐縮ですけれど、場所的にいうと、ここが八代駅ですけれども、今の180メートルでいうとこの赤線の川側ですけれども、八代駅のかなり近いところまでのエリアになってくるということでございます。従いまして、先ほど堤防を強化すれば堤防が切れないということをおっしゃられましたけれども、そういうことはないということでございます。」

◆土木技術者対論者E(住民側)
「強化堤防先ほど今国土交通省Bさんが肥薩線ですか、鉄道のある方に盛り土をするような絵を描かれておりますけれども、私どもが見た強化堤防の絵というのは、川側に、つまり萩原地区は非常に幅が広いわけですから、もう少しコンパクトに河川に水を流して、そういった設計の絵を見ております。」


国土交通省のHPに載っている「フロンティア堤防の図」
(川側を整備〜黄線部分)

後の説明では
2004 7月16日
「平成13年度についた1億円の予算は、みんな深掘対策事業費である」
「『深掘対策』は『フロンティア堤防』の一環。すなわち29億の予算の中に含まれる」とも発言。
(「市民の会」への回答 八代工事事務所にて川口氏)

パンフレットやHPの図を見ても、萩原では川側に整備されている図が載っているので、鹿児島本線(今肥薩おれんじ鉄道)側に180メートルという説明は無意味。

→「フロンティア堤防」ではなく
「スーパー堤防」にすり替えて説明。以後常套手段化。

萩原に計画されているのは線路側に張り出すスーパー堤防ではなく、緩傾斜の断面を川側に整備する「フロンティア堤防」であるのに、両方を一般市民が混交していることを利用して再三、線路側に張り出すスーパー堤防の図を持ち出して、不可能と強調するのが常套化。
 
すり替えを指摘

→2004. 8月、9月の説明資料にも「スーパー堤防」の図を使用。

7月1日
国土交通省の堤防設計指針が変更される。
→この変更を受けて、フロンティア堤防計画を見直したことになっている。が、2004年7月まで公表されず、それまでの「実施する」という発言が嘘だったことになる

12月21日 

第5回住民討論集会
市民の会対論者G(住民側)
「私が要は言いたいのは、八代というのは今後強化堤防を工事されます。で、八代というのは今度の強化堤防というのは、200年に1遍の洪水まで耐えうる堤防ということで工事をされようとしてるんじゃないですか。それでこれは萩原堤防の業務やっているのをちょっと紹介しますと『本業務は計画洪水以上、上回った場合でも絶対に破堤災害を許すことなく、超過洪水に対して被害を軽減する目的として球磨川下流、萩原堤防に置いてフロンティア堤防の築造を計画しており、当該地区の現況堤防流下能力、後背地現況等を留意したフロンティア堤防の概略設計を実施するとともに、被害軽減効果について検討し、今後の球磨川水系治水計画立案の基礎資料とするものである』ということで、測量調査設計実績情報サービスの方で、萩原堤防このように紹介されています。」

→参考 
:H 11.3月
「球磨川萩原堤防補強効果検討業務報告書」の存在が初めて明らかにされた日。

:毎日新聞2004.8.
「萩原堤防は八代市街地の上流で球磨川が大きく湾曲している部分にあり、決壊すると八代市街はもちろん、近隣の千丁町や鏡町まで浸水し、約1兆円の被害が出ると予測されている。
 それゆえ国は01年3月、堤防の厚みを大幅に増したり、防水シートを施し、球磨川の治水目標である80年に1度の洪水よりも大きな洪水(超過洪水)でたとえ越流しても、急には破堤しない強化堤防の整備に着手すると発表。川辺川ダムをめぐる住民討論集会でも「強化堤防はやる」と明言していた。
 国から委託されたコンサルタント会社は99年3月、200年に1度の大洪水でも水は堤防からあふれず、被害をゼロに抑えられる上、事業費は29億円で済むとの検討結果を出している。
 計画を取りやめた理由について同事務所は、「国が02年7月に策定した堤防の設計指針と合わない部分があることが分かったため」と説明。当面、堤防を安定させるために川底がえぐれた部分を埋める工事だけを独立して行うことにしたという。同工事が終わった段階で新たに堤防の拡幅計画を立て直すが、「超過洪水にも対応できるものにするのか、堤防の厚さが不足している部分を補うだけで終わるのかは未定」としている。」

2004(H16)

5月27日
九州地方整備局に市民の会が「萩原堤防の強化堤防化要望」について申し入れ。

対応;調査第一課課長川口芳人「出身は八代ですが、今年4月に佐賀から来たばかりなので、何を聞いても『知らない』『認識していない』の繰り返し」

6月1日
九州地方整備局に中島八代市長と執行部が萩原堤防の強化について要望書提出。
要望主旨「『萩原地区強化堤防の整備』萩原地区の強化堤防の整備に向け一層の配慮と予算の確保をお願いする。」

7月16日
「市民の会(つる・出水)」八代工事事務所訪問
対応:河川管理課長の田中氏、調査第一課技術士、川口氏。

@平成13年、萩原堤防についた一億円の予算の事業内容の詳細を示す、事業計画書の提示。A川口課長の前回の発言「フロンティア堤防の計画があったが、それはなくなったと聞いている」が、この計画と、その内容は?
B現在実施している深ボレ対策と、一億円の予算がついた強化堤防の関連性は?C今後、予定されている「腹付け」の事業計画書を提示してほしい。について質問

《回答、川口氏の主な内容》
『文書での回答はできません』という前置き。
「強化堤防(=フロンティア堤防)の事業はまだ生きているが、全体の設計をどうするかはまだ今から」
「平成13年度についた、1億円の予算は、みんな深掘れ対策事業費である。」「深掘れ対策は、このフロンティア堤防の一環。すなわち、29億円の総工事費の中に、含まれる。」

7月26日
九州地方整備局に中島八代市長と議員4名が萩原堤防の強化について要望。

【おさらい】
国のすり替え常套手段は主に次の二つ
 強化堤防→堤防を強化
  (通常の河川改修に言い替える)
 フロンティア堤防→スーパー堤防
  (線路を盾に不可能な堤防を説明)

まとめ】
国交省は、「破堤しない堤防はといわれれば、高規格堤防(スーパー堤防)しかない」と再三、スーパー堤防の図を持ち出し、また「強化堤防の実施」を訴えられると「堤防の強化はする」と強化堤防の説明をせず、論点を常に摩り替えてきたが、私たちが問題にしているのは、「事業概要」で重点施策としてあった「難破堤堤防」としての「フロンティア堤防」計画のことである。「いつ破堤してもおかしくない」と緊急な危険性を自ら主張する萩原堤から、「フロンティア堤防」の計画を消した理由を論理的に説明できなければ、国交省は、川辺川ダムを作りたいがためにこの計画を消したとの誹りを免れない。
ダムより堤防整備が緊急な危険性に間に合うのは明白。

7月27日
「流用調書の開示」
八代工事事務所の川口氏より、「前回、資料請求していたフロンティア堤防に関してついた予算1億円が八代海の調査費用に変更されたことを示す変更調書を見せたい」旨。

「フロンティア堤防の計画はこの前は生きていると回答したが、『なくなった』と訂正。「平成10年以降に河川堤防設計指針の変更があったため、萩原のフロンティア堤防は、費用対効果や設計(最低の盛り土で、最大の効果をだしなさいというような説明)について、指針に沿うものではなかったため、計画の見直しが必要となった。しかし、堤防の強化は必要なので、腹付けなどしていくが、その方法の詳細については今からで、まだ決まっていない。」

「フロンティア堤防という考え方は、なくなったわけではないが、球磨川に関しては、29億円の予算がついたフロンティア堤防の計画はなくなった。」(フロンティア堤防はあったことは認めている)

13年9月1日付け予算流用調書によると、1億円のうち、八代海に流用したのは、7000万円で、追加理由は八代海の調査が緊急に必要になったためとあり、7000万円を当初の予算から削除した理由としては、球磨川漁協より、「深掘れ対策事業が予定されていたところは、コイ、フナにとって、大事な場所なので、計画を変更してほしい」と要望があり、事業を中止したため、7000万円が浮いた。

【矛盾】
04.9/9の説明では、国交省は29億とはひとことも言っていない旨の発言をしており、この川口氏の「29億の予算がついた〜なくなった」の言を無かったことにしている。

【矛盾】
04.9/9の国交省配布資料に
「平成13年度 0百万円(八代海域調査委員会を設置し、調査検討を行う必要が生じたことから、予算1億円を流用)」と明記されており、説明がちがう。

市長たちの要望・陳情三回はフロンティア堤防の指針見直しについては隠したまま、「堤防の強化はします」とすり替えて応対している

7月30日
中島八代市長と議員4名が萩原堤防の強化について政府陳情。

8月6日
川辺川ダム事業費が3300億とする内部文書が明らかになる。

8月12日
「市民の会」中島市長へ要望書提出
1.八代市民の財産と生命を守るために必要だというフロンティア堤防の中止について、国土交通省に強く抗議を行い、新堤防の設計指針によって事業の計画を経て直し、早急に予算をつけるよう国土交通省に申入れを行うこと。
2.建設費の増嵩に伴う県の負担が150億円もの増額が明らかになった川辺川ダム建設は、熊本県の財政上から見ても困難である。その一方、29億円の事業費で効果が期待される萩原フロンティア堤防は、早急な実施が不可欠であるとして、国に対して、熊本県からも要望を上げるよう潮谷知事に対し要請を行うこと。

8月13日
「県民の会」ほか萩原堤防に関する抗議声明発表。
 同日、八代工事事務所も記者会見。(熊日
このときの記者発表資料にも「スーパー堤防」の図を使用。
フロンティア堤防については「検討することとし」「検討中」とあいまいな表現。

八代工事事務所記者発表資料(8月13日)
9月1日
9月1日付け「市長通信」(中島八代市長)『萩原強化堤防の促進を』
「川辺川ダム建設より、球磨川流域の河川整備を促進すべきであると考えております。」
「萩原堤防も一日も早く強化堤防とするための整備促進を国に働きかけて行きたいと考えます。」
9月9日
ダム事業費増額と萩原堤防問題について、国交省が説明会開催。

国の当日配布資料
 1.川辺川ダムの事業費について
 2.球磨川萩原堤防について
 

■塚原発言(平成13年12月9日の住民討論集会で萩原強化堤防の整備を『本年度より実施』といいながら同年9月付けでその予算を流用していることの指摘を受け)
塚原氏:「前年度の言い間違いである」

⇒実施設計が平成13年の3月(平成16年11月に判明)であるから、前年度に工事を実施できないはずで、この発言がその場をごまかすためのウソであったと判明。

12月20日
2001年当時、フロンティア堤防計画に関して具体的な改修策を定める実施設計が策定されていたことが判明。従来の国交省の「フロンティア堤防は構想段階にとどまる」との説明がウソであったことが明らかになる。

毎日新聞2004年12月20日
「国費8610万円投入後『白紙』 国交省ウソ説明」
 「川辺川ダム建設問題で、熊本県八代市の球磨川・萩原堤防を大洪水にも対応可能な「フロンティア堤防」に強化する計画は白紙に戻されたが、国土交通省はまだ計画が検討段階にもかかわらず、国費8610万円を使って実施設計まで済ませていたことが分った。同省八代河川国道事務所は今年8月、取材に対し「概略設計だけで詳細な実施設計は行なっておらず、まだ検討段階だった」とウソの説明をしていた。
 
萩原堤防は八代市街地の上流で球磨川が大きく湾曲する部分にある。決壊した場合の想定被害額は約1兆円。球磨川の治水上最も重要とされるため、堤防の厚みを大幅に増すなどして、「80年に1度の洪水に耐えられる」という球磨川の治水目標を大幅に超える200年に1度の洪水に備えるフロンティア堤防計画が構想された。
 その後、
川辺川ダム建設反対派が「計画通りフロンティア堤防にすれば、ダムがなくても八代市街は安全なはずだ」と指摘。同事務所は今年8月、毎日新聞の取材に「フロンティア堤防を検討していたが、01年7月に策定された堤防の設計指針に合わない部分があると分かり、検討し直すことにした」と、白紙に戻したことを明かした。
 ところが毎日新聞が開示請求した同省の資料によると、萩原堤防のフロンティア堤防化は98年度に概略設計、99、00年度に水理模型実験が行なわれ、その結果に基づいて01年1月に実施設計も発注されていたことが判明。一連の業務に投じられた国費は計8610万円
に上る。(略)九地整の塚原健一・河川調査官は「あくまで検討段階だったが、萩原堤防は非常に重要なので、予算がついて実施できる状況になれば実施できるよう準備していた」と釈明している。」

国の従来の説明
「フロンティア堤防とは…現時点ではどのような構造とするか確定しておらず、一般に施工していない。」2004年9月9日国の説明資料より

熊日2004年12月20日
「フロンティア堤防」問題 国交省の実施設計に反対住民ら反発

2005
(H17)
4月5日
フロンティア堤防について予算がありながら、国は中止していたことが判明。これまで虚偽の説明を繰り返していたことが分かり、また計画通り実施していれば、フロンティア堤防は今年完成見込みだったことが判明。
 


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