2009年9月11日
熊本県知事 蒲島郁夫 様
子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
他52団体
連絡先 〒860-0073熊本市島崎4-5-13 中島 康
要   望   書
 昨年9月11日、蒲島知事の「現行の川辺川ダム計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求すべき…」の表明は、私たち川辺川ダム計画に永年疑問を持ち続けた者だけでなく県民の85%以上の人々が支持をしました。知事の表明に基づいて現在「ダムによらない治水を検討する場」なる会議が行われています。ここでダムなし治水を考えるという事はダムなし治水計画を策定することです。そしてダムなし治水計画は河川法に則り川辺川ダムを考えない「球磨川河川整備計画」を策定する作業であるはずです。

 しかし現在具体的に川辺川ダム計画が根拠としているのは、基本高水流量と計画高水流量の組合せで、治水対策の選択肢を事実上ダムのみに限定した「球磨川水系河川整備基本方針」です。知事が言われる現行の川辺川ダム計画を白紙撤回するということは、この基本方針を撤回することに他なりません。知事は、まず「ダムによらない治水を検討する場」において、「球磨川水系河川整備基本方針」の白紙撤回を国交省に要求すべきです。

 次に、知事は治水の理念について「洪水を治めるという旧来の発想から脱却し、洪水と共生するという新たな考え方に立脚すべきである…」と言われました。この発言は、治水を考える上でもっとも先進的な考えであると高く評価します。しかし、今行われている「ダムによらない治水を検討する場」における議論は、知事の理念及びよく言われる民意を重視するということに全く反した議論がなされています。住民は傍聴するだけであり、発言の機会はなく、住民の意見が反映されている様子は全く見ることができません。

 その上、議論内容も県側が出した素案に対し、国交省はシミュレーションを繰り返すだけで、国交省としての治水案を出そうともしていません。また県の出した素案も、市房ダム再開発を除けば、国交省が住民討論集会や、基本方針検討小委員会でダム代替案として否定したものばかりで、白紙撤回されなければならないはずの河川整備基本方針の枠内から一歩も出ていません。

 その市房ダムの再開発についても、かつて予想雨量以下で予定放水量を大きくオーバーする放流を長時間続けた結果の放流水害と住民が主張する昭和40年水害等があったせいで、放水操作の難しさを骨身で知っている流域住民は、今以上の市房ダム依存に、反対するであろう事は明らかです。この様な見せかけの議論は早々に止め、国交省は「ダムなしの球磨川水系河川整備基本方針」を策定することを公式の場で表明すべきです。また県は「ダムによらない治水を検討する場」において、この事をはっきり確認すべきです。

 知事は、「人吉球磨地域に生きる人々にとって球磨川そのものがかけがえのない財産であり、守るべき宝なのではないかと思う」と言われました。この言葉には、流域住民のみならず、おそらく県民すべてが賛成するところでしょう。流域には上流から下流そして海まで人々が住み、川や海を愛しています。知事が本当に球磨川水系流域に住む住民にとって球磨川は宝であると認識されているのであれば、ダムによって川を分断し、住民を分断し、自然を破壊するようなことは、知事の言われる「県民の総幸福量」の概念からも容認出来ないはずです。

 流域住民の多くが考えるその幸福とは、豊かな自然を守り育て、自然の一員として生きることではないでしょうか。荒瀬ダム撤去は流域住民の願いであり、球磨川を宝と思う皆の総意なのです。そのことを再度お考えいただくことをお願いし、要請文とします。

以 上 


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