2008年5月13日、県民の会ほかより熊本県知事に対し、川辺川ダム問題「有識者会議」に関する要望書を提出しました。

2008年5月13日
熊本県知事 蒲島郁夫様
             子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会 代表 中島 康
             清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会 会長 緒方俊一郎
             球磨川大水害体験者の会             会長 堀尾芳人
             川辺川利水訴訟原告団              団長 茂吉隆典
川辺川ダム問題「有識者会議」に関する要望書

 今年、川辺川ダムは計画発表から42年を迎えました。昨年、農水省が「利水」から、J‐POWER(旧電源開発)が「発電」から相次いで撤退し、多目的ダム法に基く「川辺川ダム事業」は白紙状態にあります。残るダム建設の「目的」は治水だけとなりましたが、球磨川流域で近年の記録的な豪雨で浸水したのは、改修が完成していない地区ばかりです。

 昨年5月から、球磨川流域の12市町村など計53会場で開催された、国土交通省の「河川整備基本方針の流域住民への報告会」に、流域住民等のべ1481名が参加しました。参加した住民から川辺川ダム建設を望む意見は全くと言ってよいほど出ませんでした。国土交通省のホームページに公開された発言記録を見ても、河川改修などすぐにできる治水対策を求める声がほとんどで、全発言数887件のうち「治水のために川辺川ダムが必要」との発言はわずか4件でした。

 球磨川流域で、近年の記録的な豪雨で浸水被害にあわれた方に聞き取り調査した結果を見ても、ダム以外の治水対策を求められている方が67戸で、治水対策に川辺川ダム建設を望まれる方は、わずか2戸でした。

 最近の世論調査を見ても、川辺川ダム反対が賛成を大きく上回っています。特に熊本日日新聞の調査(3月17日付)では、地元球磨人吉が最も反対が多く、68.5パーセントにも上っています。

 潮谷県政の8年間に、川辺川ダム問題に関する議論と検討は尽くされました。上述のとおり、熊本県民・球磨川流域住民・水害被災者の民意は、川辺川ダム建設を否定しています。

 そのような中、マニフェストで公約されたとおり、貴職は5月7日の定例記者会見で、川辺川ダム建設の是非を判断するために設置した「有識者会議」の初会合を、5月15日に東京都内で開くと発表されました。委員に地元関係者は一人もおらず、各委員とも川辺川ダムや球磨川水系の問題に関与した経験はなく、委員の多くは川辺川ダムに関し「これから勉強する」「研究対象にする機会はなかった」と語っていると報道されています。

 球磨川の水害被害の実態と、求められる治水対策を一番理解しているのは、地元で実際に水害被害を体験された方々です。現地を知らない委員が、県民から遠く離れた東京で、地元とかけ離れた目線で議論することは、あってはならないことです。

 また、川は一本として同じものはありません。その川に合った具体的な検討を行う上で、期間を限定し、いたずらに結論を急ぐようでは科学的な議論とは言えません。

 公共事業は全て住民のために実施され、住民の理解と合意に基づくものであるべきことは、貴職もよくご理解のことと思います。私達県民は、「有識者会議」によるダムに対する判断の手法に対し、大きな懸念を持っています。

 球磨川水系の流域市町村で組織する川辺川ダム建設促進協議会(会長・柳詰恒雄球磨村長)は、5月8日に県庁を訪れ、貴職に対して初めて、川辺川ダムの建設促進などを求める要望書を提出しました。これに対し、貴職は「ダム問題についてはマニフェストでも述べたように、9月の県議会で決断するということで、第3者の有識者会議を立ち上げた。この要望書は、私の判断材料の大きな1つになる」と答えたと報道されています。

 また貴職は、田中信孝人吉市長が市民対象の公聴会(5月22、23日開催)を経て計画の賛否を決める方針を示したことには、「そこでの結論はとても重要。私の決断の参考にしたい」と述べたと報道されています。

 これまで、地元首長の大半は川辺川ダム推進の立場をとってきました。しかし、前述の世論調査などの結果を見ても明らかなように、川辺川ダム問題に対する民意と首長の意思には大きな隔たりがあります。このことが、川辺川ダム問題を長期化させている大きな要因です。

 貴職、そして「有識者会議」が地元住民の意見を聞き、議論を公開し、従来の河川行政を打開するきっかけになって欲しいと期待しております。そこで、以下2点について要望します。

                     記


1.貴職、そして「有識者会議」は、熊本県民・球磨川流域住民・球磨川流域の水害被災者の意思を真摯に受け入れること。

2.「有識者会議」は審議の期間を限定せず、現地で開催し、民意を十分に検討できる運営をすること。審議は全て公開とし、住民の傍聴を可能とすること。

                                        以上




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