2005年7月12日、九州地方整備局に対し、川辺川ダム、荒瀬ダム撤去への国の支援、五木村の整備計画、森林保全計画について、県民の会より申し入れを行いました。


■国交省側対応者 河川部水政調整官 半田又三氏 ほか2名
■提出文書  3種:
  「第21回水郷水都全国会議、第8回有明海・不知火海フォーラム
   2005共同宣言」
  「川辺川分科会・アピール」
  「川辺川ダム事業の中止及び、荒瀬ダム撤去に関わる国の助成
   を求める申入書」 提出文書はこちら
■申し入れ概要  こちら
■撤去費用をめぐる動きなど こちら


申入文書
水郷水都全国会議/有明海・不知火海フォーラム 2005共同宣言

  私たちは、九州の有明海沿岸地域である久留米市と柳川市に二つの会場を設け、全国各地から延べ1,000人が集まり、公共事業“新”時代 〜自然とのおりあいを求めて〜をテーマとして、さまざまな議論を交わした。
  1985年以来、全国各地の水環境問題にとりくんできた水郷水都全国会議と、有明海等の環境回復にとりくんできた有明海・不知火海フォーラムは、諫早湾干拓事業と川辺川ダム建設事業に焦点を当てながら、新しい時代の人間と自然の関わりを模索してこの大会を実施した。
 川辺川ダム建設事業は、事業目的のひとつである川辺川利水事業が福岡高裁で違法とされ、事業全体が白紙となった。にもかかわらず国交省は今日なお、川辺川ダム建設にこだわり、事業目的もあいまいなまま事業の継続を主張し続けている。また、有明海では、国営諫早湾干拓事業が環境悪化をもたらし、漁業被害が起きて漁業者らが自殺に追い込まれるほどに深刻化している。農水省は、自ら組織した第三者委員会の「原因究明のための中・長期開門調査をせよ」との提言を反故にし、さらに、「中・長期開門調査は、農水省の責務である」と宣言した司法の判断さえ無視して、現在、工事を再開している。
 人間は共同して自然に働きかけ、自然を改造する公共事業を不可欠とする。しかし、今日、巨大技術を駆使したわが国の公共事業は、経済至上主義に突き動かされ、自然・社会・文化・風土の将来に禍根を残すことが明らかになっている。それを見直してゆく方向と力をどこに求め、どのように調整するかが今日の重要課題である。
 現状を否定しただけでは将来の持続可能な社会は獲得できない。今大会に先立って、われわれは国、県、市に共同開催の意味をこめて後援の依頼をした。しかし、今大会が係争中の川辺川と有明海問題の一方の主張にかたよっているとして断ってきた。行政の専権事項と見なされていた公共事業の政策決定の場を住民の手に取り戻すために、行政上の知恵と業界・業者の技術や経営力をつなぎ合わせ、共同して社会と自然を再生するルールを構築したい。そのためには、自然の有り様を承認しながら自然を改造した先人の知恵、今日も各地に残る自然との折り合いある事業に学ぶことを確認した。
 われわれは改めて、「対立」を超え、持続可能な「共生」社会への転換の必要を痛感する。すでに半世紀前、筑後川上流の下筌・松原ダム建設反対の運動の中で室原知幸さんが唱えた「法にかない、理にかない、情にかなう」本来の公共事業の重要性を再確認する。
 持続可能な社会のためのより良い水環境の創造は、地域住民・国民の結集した力によるしかないことを胸に刻み、地域技術に根ざした事業者を含む住民パワーで行政を動かし、「市民による、市民のための公共事業」を創設することをここに期待するものである。
  
                                2005年6月12日

第21回水郷水都全国会議、第8回有明海・不知火海フォーラムin久留米・柳川 
参加者一同

川辺川分科会・アピール

 現在、国土交通省が進めている川辺川・球磨川の治水計画は、住民の意思が反映されないまま、「ダムありき」の計画になっています。
 私たちは、このような国土交通省に対して、球磨川流域の生命・財産を守るため、住民の意思に基づいた「ダムにたよらない」、より安全な治水対策を推進するよう強く求めます。
 また、熊本県が撤去を決定した「荒瀬ダム」について、熊本県知事は「国土交通省の財政的支援があれば、より早く撤去が実現できる」と言っています。
 川の再生事業として、画期的なものとなる熊本県の荒瀬ダム撤去事業に対して、積極的に、かつ、早急に支援することを求めます。
               
                                            2005.06.12

     第21回水郷水都全国会議、第8回有明海・不知火海フォーラムin久留米・柳川 
                                      川辺川分科会・参加者一同

2005年7月12日

国土交通大臣         北側 一雄  様
国土交通省九州地方整備局長  宮田 年耕  様
子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会 代表・中島康


川辺川ダム事業の中止及び、荒瀬ダム撤去に関わる国の助成を求める申入書

 2003年5月、福岡高等裁判所における「国営川辺川土地改良事業変更計画に対する異議申し立て棄却決定取消請求控訴事件」の原告勝訴の言い渡し、それに続き、農水省の控訴断念を表明を経て、川辺川利水裁判の判決は確定し、利水事業は白紙となりました。
 あれから2年が過ぎた今日、未だ、新たな利水計画が策定できないまま、国土交通省は、川辺川ダムの計画変更の手続きをとらないばかりか、熊本県収用委員会に対して収用申請を出したまま、その取り下げもせず、無駄な労力を多くの市民に課し、貴重な国民の税金を浪費し続けています。
 これは、明らかな違法行為であり、許されることではありません。
 公共事業は、「法にかない、理にかない、情にかなう」という公共事業の本来あるべき姿をもう一度、見つめ直し、川辺川ダム事業の即時中止を求めます。
 私たちは、国土交通省が、一日も早く国民のための働く機関として、正常に機能することを期待し、以下のことを申し入れ致します。

                          記

1.国土交通省は、川辺川ダム基本計画の主たる目的の一つである、利水事業計画が違法であることが確定したことを受けて、即時、川辺川ダム事業を中止すること。また、川辺川ダム計画中止後、40年近く同計画に起因する物心両面の苦痛を強いられてきた五木村の生活再建に責任を持つこと。

2.国土交通省は、熊本県が進めている「荒瀬ダム」撤去に関して、河川の再生事業の観点から、その事業に積極的に参加し、資金、技術、制度などに関して、必要な措置を早急に行うこと。

                                                   以上

                  連絡先:子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る福岡の会
                                           事務局      松原  学
        〒812−0053 福岡市東区箱崎 3−6−15−205
                 TEL&FAX 092−641−1215


申入概要
最終的なこちらからの質問事項は次の4点。
1.荒瀬ダム撤去に対する河川管理者として対応
2.川辺川ダム事業の継続の違法性と事業の即時中止に対する対応
3.五木村の整備事業計画の開示
4.森林保全に関する具体的な事業計画の開示

以下詳細。まず、水郷水都会議・有明海・不知火海フォーラムの開催に ついて説明した上で、文書を手渡し朗読。
 川辺川ダム計画について、ダムありきではなく住民の意志に 基づく治水計画づくりを要望。住民討論集会、改正河川法とのからみについて。河川整備基本方針は球磨川では作られておら ず極めて取り組みが遅れていること、利水やダム事業費増額問 題もありながら、国が旧来のダム基本計画から変更を行わずに 収用手続きを進めていることの違法性について指摘。どこがどう合法なのか、収用申請を取り下げるべきではと質問。半田氏 は「4月に異動したので詳細は分からない。担当ではないので 回答できない。申し入れの趣旨は上司に伝えたい」と回答。  荒瀬ダム撤去について、これまでの経緯や知事発言、坂本村 からの請願書などを話した上で、これらをどう受け止めている か、河川管理者として国の責任について質問。半田氏は、「河 川管理者として、荒瀬ダムに関心は持っている。しかしどのよ うな関わり方があるのか、申し入れの趣旨のような支援等につ いては即答できない」と回答。荒瀬ダム撤去のための委員会が あり、そこに積極的に関わり支援していくべきではとの問いには、「そういう場があるのであれば関わった方が良いかもしれ ないが、詳細は分からない」と返答。
 続いて、申入書を提出。川辺川の治水について、ダムの即時中止の要望に加え、五木村の生活再建の問題について。五木の 生活基盤整備にはどのようなものがあるのか、事業名、進捗具 合、今後のスケジュールを開示するよう要望。地元の村や住民 が要望しても、これまでまったく回答がなされていないことについて、国の誠意の欠けた対応を指摘(五木での毎年のダム事 業説明会、議会の声、今年5・6月の尾方茂氏の申入れと国から の回答内容について)。村の整備はダムと切り離すべき、どのような事業計画があるかすら公表できないのはなぜかと質問。 文書での回答を求めた。

 最後に森林整備について。国交省は森林整備の推進を掲げているが、球磨川で具体的な事業計画や取り組みを示してほしいと要望。五木村にとってもプラスになり、治水にも役立つと伝え、今後どのような取り組みを計画しているか、事業計画の公表を求めた。

 これらについて文書での回答を希望したが、半田氏は「自分では判断できないので確約できない」と回答。そのため、文書 で回答できるかできないかを福岡の会宛てに近日中にFAXまた は文書で回答してもらい、その上で、回答できない場合はその理由、回答できる場合は後日文書で回答をもらえるよう依頼した。

◆川辺川ダムの中止申し入れ 熊本の市民団体(西日本2005年6月13日朝刊)
◆福岡の反対市民団体 九地整へ事業中止求める申し入れ書
熊日2005年7月13日
◆川辺川ダム問題:事業中止など求め、国交省に申し入れ書−−「守る県民の会」 /熊本
毎日新聞2005年7月15日


【参考】  荒瀬ダム撤去への国の支援要請をめぐる経緯
       熊日新聞 特集荒瀬ダム撤去のページ



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