会報
かわうそ
No.28
[発行責任者]
 清流球磨川・川辺川を
 未来に手渡す流域郡市民の会
 重松隆敏 熊本県人吉市九日町36-3F
 2001年6月11日発行 TEL/FAX0966-24-9929

国土交通省、川辺川ダム本体工事着工を2年連続断念!

 球磨川漁協が2月28日の総代会で、国土交通省が提示した川辺川ダム漁業補償契約の受け入れを否決したことで、川辺川ダム本体工事予算は、2年連続消化できず繰り越されるという事態となりました。
 これまで「いくら反対しても、どうせダムは出来るのだ」との声も耳にしましたが、それならばなぜ、国土交通省はダム本体工事着工を2年連続断念しなければならなかったのでしょう。それは、漁業権を持つ球磨川の漁民の皆様がダム漁業補償に同意しなかったからに他ありません。
 一時期、「漁業権が収用されると漁民が大きな被害を受ける」との噂がささやかれていましたが、漁業法上、共同漁業権の一部(ダム本体の区域)を分割して収用することが出来ないので、漁業権を強制収用することは不可能であることは、これまで指摘されて来た通りです。
 水産庁は「漁業権の消滅や変更など重要な問題については、組合員全員の同意取り付けを指導している」と見解したと、熊日新聞(01.3.7)は報じています。すなわち、球磨川の漁民全員がダム建設に同意しない限り、川辺川ダム本体建設は出来ないのです。
 「手渡す会」は、今後とも球磨川の漁民の皆様方との連携を強化し、漁民を支援する様々な活動に取り組みたいと考えております。皆様も、6月24日の集会に是非ご参加下さい。

(記事=熊本日日新聞(2001.3.1))


●手渡す会・1月〜5月の出来事
01.1.25 国土交通省の川辺川ダム事業認定に対して3350人の住民が行政不服審査法に基づく異議申し立てを行う。
2.1 八代海沿岸37漁協が、川辺川ダムに伴う八代海への影響調査を国土交通省に求めていくことを決定。
2.2 八代海東岸の7漁協が川辺川ダム絶対反対を決議。
2.17 八代郡坂本村で、川辺川ダム建設賛否の住民投票条例制定を求める署名活動が始まる。
2.18 川辺川ダム建設促進協議会(会長・福永人吉市長)が総決起大会。会場前で市民約100名がダム反対アピール行動。
2.20 八代海沿岸37漁協でつくる「川辺川ダム対策委員会」が鏡町で総決起集会を開き、八代海への影響調査の実施と川辺川ダム本体着工の延期を求めることを決定。漁民約1500人が参加。
2.20 長野県の田中康夫知事が「脱ダム宣言」。
2.28 球磨川漁協の総代会で、川辺川ダム補償案を否決。年度内ダム本体着工は不可能に。
3.6 日本自然保護協会が川辺川で育ったアユは球磨川本流のアユより大きいとする調査結果をまとめ、川辺川ダム計画見直しを国交省に要望。
3.7 潮谷・熊本県知事が川辺川ダム本体着工に慎重姿勢を示す発言。
3.14 熊本県議会一般質問で、自民党杉森県議は川辺川ダム計画について「国はずさんな資料で水害の危険性を強調し、ダム以外の治水対策はないとあおっている」と批判。
3.26 人吉市議会、川辺川ダム建設に関して法的アセス実施を求める意見書を採択。
3.26 川辺川ダム事業認定取り消しを求め、住民が熊本地裁に提訴。
3.30 国交省、年度内の川辺川ダム本体着工を断念。ダム本体予算を2年連続で繰り越し。
4.20 朝日新聞社の世論調査で、川辺川ダム計画に「反対」が「賛成」を大きく上回る。
4.24 国交省の「川辺川ダムの疑問にお答えする会」と題した住民説明会が、人吉市内で始まる。ダム計画への批判が相次ぐ。
4.26 川辺川ダム建設促進を目的とした「活気ある人吉をつくる会」がダム促進陳情の署名活動を開始。
5.2 人吉市で川辺川ダム本体建設の賛否を問う住民投票条例制定を求める署名活動が始まる。
5.25 川辺川利水訴訟、福岡高裁で控訴審が始まる。
 



故・池井良暢「手渡す会」会長を偲ぶ
 5月11日、病気療養中の池井良暢さんが自宅で逝去されました。82才でした。池井さんは、93年8月の「手渡す会」の創設時から長年にわたり会長を務められ、強い郷土愛と温厚な人柄で私達をリードして下さいました。池井さんには、是非「川辺川ダム建設中止」を見届けてほしかった。残念です。7年前の朝日新聞に掲載された池井さんのコメントの一部を紹介します。

(記者)来年度も川辺川ダムには70億円の予算が付いて、本体着工も近いようです。

(池井)運動は、どこまでも続きます。2,3人でほそぼそ始めたんですが、最近は「あんた達の言う通りばい」と思わぬ方から励ましを頂きます。ダム本体に着工したら、規模を縮小しろ、完成したら、大きなダム湖を造らずダムを空にしろ、早く撤去しろと言い続けます。川を敵視せず、人間と川が共存できるようにしようというのが私達の願いなのです。「清流を未来に手渡す」というのは孫子の時代までにらんだキャッチフレーズなのです。(朝日新聞 94.3.8)

(写真=故・池井良暢会長)



●会計報告(00,12,22〜01,5,21)
収入の部 金額 備考
繰越金 2,370
年会費・カンパ 1,495,794 グッズの売上、雑収入なども含む
合計 1,498,164

支出の部 金額 備考
郵送費 221,215 会報発送、資料発送
事務用品費 262,925 紙代、文具など
事務所維持費 335,015 家賃、電気、電話など
広報費 263,626 新聞折込費、資料印刷費
旅費 46,550 福岡など
その他 177,375 書籍購入費など
合計 1,306,706

(収入) 1,498,164−(支出)1,306,706=191,458

◇会費・カンパは、郵便振替01970−1−27826『手渡す会』までお願い致します。当会は、皆様方のご支援のみで運営しております。年会費未納の方はどうぞ宜しくお願い致します。カンパも大歓迎です。



●川辺川ダム事業認定に3350人が異議申し立て
 川辺川ダム計画をめぐり昨年12月、国土交通大臣が土地収用法による事業認定を行ったことに対し、1月25日、行政不服審査法に基づき、同大臣に処分取り消しを求める異議申し立てを行いました。国土交通省は「川辺川ダム建設に公益性はないし、事業認定の手続きも不当だ」との住民の意見を真摯に受け止め、直ちにダム建設を中止すべきです。

●八代海沿岸37漁協が総決起集会
 川辺川ダム計画をめぐり、八代海沿岸37漁協でつくる「川辺川ダム対策委員会」は2月19日、八代郡鏡町で1500人の集会を開き、国交省に対し、八代海への影響調査の実施とダム本体着工の無期限延期を求める決議をしました。

●人吉市議会、川辺川ダム環境アセス意見書を可決
 熊本県人吉市議会は3月26日、川辺川ダム事業について、球磨川水系と八代海で環境影響評価法に基づく環境アセスメント(法アセス)を実施するよう、国と県に求める意見書を賛成多数で可決しました。
 1994年9月「川辺川ダム建設促進に関する意見書」を採択した同議会の大きな方向転換を心より歓迎します。法アセスが実施されるとなると、およそ2年間の時間が必要とされ、川辺川ダム建設は「一時休止」を余儀なくされます。

●坂本村と人吉市で、「川辺川ダム建設賛否を問う住民投票条例」制定への署名活動が始まる!
 人吉市では、中間集計の署名数が同市の有権者(約3万人)の約3分の1にあたる9300人に達しています。残りの署名期間は、参院選明けの7月30日から8月8日までの10日間です。協力できる方は「人吉の住民投票を求める会」電話0966(22)1765までお願い致します。


編集後記 球磨川漁協が2月の総代会で川辺川ダム漁業補償を否決したことで、川辺川ダム建設をめぐる風向きは大きく変わり始めました。「受益者」であるはずの多くの流域住民や農民が反対するような無駄な公共事業をきっぱりと中止してこそ、小泉首相が掲げる構造改革ではないでしょうか。川辺川ダムは、それを示す好例です!前回の会報でお願い致しました「異議申し立て」の署名に多数御協力いただき、誠にありがとうございました。(N.O.)


イベント掲示板

蘇れ!魚湧く不知火海・有明海
   〜清流川辺川が育む海の生命〜
■日時 6月14日(木)19:00
■場所 八代ハーモニーホール
■基調講演 東幹夫先生(長崎大学教授)
 「不知火海へ生かす有明海の教訓」
   連絡先 実行委員会(つる)0965-32-7359

「講演の夕べ」
“人間”とは?“自然”とは?“繁栄”とは?
 “民主主義”を主題にした分かりやすいお話です。
■とき 6月17日(日)19:00
■場所 人吉カルチャーパレス小ホール
■講師 今井 一氏(ジャーナリスト)
   人吉の住民投票を求める会 (0966)22-1765

川辺川・球磨川の鮎、そして
 球磨川流域のクマタカの実態は今!■日時 6月22日(金)19:00
■場所 教育会館(人吉市灰久保町)
■報告者 吉村勝徳(漁民有志の会会長)
     矢次智浩(熊本県クマタカ調査グループ)
 連絡先 クマタカを守る会(東)0966-23-4530

ダムはいらない!
清流川辺川・球磨川を残そう
 〜漁民ががんばればアユも清流も守れる!〜
■とき 6月24日(日)午後2時〜
■場所 JAくま・人吉藍田支所
■球磨川の漁民がどのような活動を通して ダム建設を阻止しようとしているのかを 明らかにします。
 川辺川・球磨川を守る漁民有志の会(0966)24-4222
□詳しくは同封のご案内をご覧下さい。




川辺川ダムが不要なこれだけの理由

1 事業の必要性がありません!
1)治水面で
大雨でダムが満水になった時の放流による急激な増水で、大水害の危険性がある。
これまでの治水対策により、同じ雨量でも球磨川流域の洪水被害は近年になるほど劇的に減っている。
治水計画自体が過大であり、ダムに頼らない治水対策が十分可能という指摘が専門家からもなされている。
ダムは堆砂に埋まっていき、将来の災害源となるのは明らかである。

2)利水面で
農業用水については、減反や農業後継者の減少が進み、農家は現在の水利用で充足している。
川辺川ダムの計画発電量は、水没などにより閉鎖が考えられる現在機能している発電所の発電量を補うに過ぎない。
 
2 環境に致命的なダメージを与えます。
環境庁の調査で「水質日本一」となった川辺川の清流を破壊し、391ヘクタールの広大な自然を水没させるにもかかわらず、法施行以前の計画と いう理由で環境アセスメントが実施されていない。
川辺川ダム建設予定地一帯では、絶滅危惧種のクマタカの繁殖が確認されるなど、貴重な生物が多数生息している。
川辺川ダムによる水質の汚濁や流量の減少により、アユや球磨川下りなどの観光にや八代海の自然環境にも致命的なダメージを与える。

3 本来「ダムの受益者」であるはずの多くの流域住民が異議を唱えている。
「ダムの受益者」であるはずの多くの流域住民は、大雨でダムが満水になった時の放流による急激な増水を恐れ、ダム建設に反対している。
「ダムの受益者」であるはずの多くの農民は、「ダムからの水は要らない」と裁判に訴えている。
流域の漁業権を持つ球磨川の漁民の過半数は、ダム建設に反対している。
国や地方の財政が危機的状態に陥っている現在、関連事業も入れると、4100億円もの血税が投入される。

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