最近の動き 2004年12月2日 尺鮎裁判第16回弁論が開催されました。
原告側からの意見書
川辺川尺鮎裁判とは
「川辺川尺鮎裁判」とは、川辺川流域の漁民が提訴した、「川辺川ダム事業認定取消訴訟」のことです。
正式には「平成13年(行ウ)第4号川辺川ダム建設に関わる事業認定処分取消し請求事件」と言います。
原告は、吉村勝徳原告団長をはじめとした32名の漁民で、被告は国土交通大臣です。
2001年3月熊本地裁において提訴されました。
その後この裁判には、581名の漁民が補助参加(関係人として裁判に参加)をしました。
漁民が原告であることから、川辺川のシンボルである尺鮎にちなみ、「尺鮎裁判」と呼ばれています。
事業認定と収用申請事業認定とは、土地収用法にもとづいて「この事業には公益性がある(ので収用しても良い)」と認めるもので、事業認定庁は国土交通大省になります。
川辺川ダム問題では、2000年9月29日、起業者である国土交通省九州地方整備局が土地収用法に基づく事業認定の申請を行いました。
そして2000年12月26日、国土交通大臣は川辺川ダム計画の事業認定を行いました。事業認定が行われると、事業の公益性に「お墨付き」が付いたことになり、事業認定から1年以内の間に、県の収用委員会に対して「収用裁決申請」(任意交渉で補償契約が結べなかった諸権利について、起業者が強制収用をするための申請を出すこと)を行っても良いことになっています。
川辺川ダム問題では、2001年2月28日の球磨川漁協総代会、同年11月28日の球磨川漁協総会の二度とも、国の提示した漁業補償案受け入れを否決しました。
そのため国交省は、2001年12月18日、熊本県収用委員会に対し、球磨川の共同漁業権などの収用裁決申請を行いました。その後2001年2月から収用委員会審理が開催され、2003年10月以降一時中断、その後2004年11月25日に再開されるという経緯に至っています。
川辺川尺鮎裁判で求めていること尺鮎裁判は、この事業認定の取消を求めて提訴された裁判です。
この裁判で訴えているのは、事業認定の根拠の違法性です。つまり、事業の公益性を判断するための情報、ダムの効果や公益性が事実とは異なるため、事業認定は無効であることを訴えています。
原告である漁民以外でも、川辺川流域の住民たちが原告となり、同じような「事業認定取消訴訟」を提訴しました。しかし漁民を原告とした本裁判以外は、「原告適格なし」(原告となる資格がないので提訴できない)という理由で、裁判所から門前払いに合い、訴えは却下されました。
漁民を原告とした尺鮎裁判が、唯一の事業認定取消訴訟となり、現在も熊本地方裁判所で争われています。
尺鮎裁判原告団結成大会アピール(2003年5月30日)
裁判では何が問題になっているのか?裁判の内容は、「漁民に原告適格があるかどうか」の入り口のところでの議論が続いています。
国側の主張は、土地収用法における権利者は球磨川漁協であり、原告である漁協組合員は権利者には該当しない、と主張しています。
これに対し原告である漁民側は、漁協組合員一人一人こそが権利者であるので、当然原告適格があると主張してきました。
つまり、共同漁業権の関係人は誰か、権利者は誰なのかという議論です。
漁業権の権利者をめぐっては、収用委員会の場でも長い期間議論が行われていますが、最終的な判断はまだ出されていません。
もし原告適格なしと認められれば裁判は却下され、逆に適格ありと認められれば、実質的な審理に入ることができます。<現在の争点>
@原告(漁民32名)に「原告適格」(裁判を起こす権利)はあるか?
(被告の主張)漁協が共同漁業権を有しているので、漁協以外に「原告適格」がない。
(原告の主張)免許を有している漁協は漁業権を行使しておらず、管理者たる地位に止まっている。原告は組合員たる地位に基づいて漁業行使権を有しているので、訴訟の推移に重大な利害を有していて「原告適格」がある。A事業の公益性、合理性があるか?
(被告)多目的ダム法による4つの目的があり、公益性もある。
(原告)目的は喪失している。また、環境破壊、費用対効果からも問題がある。
権利者は誰かという問題は、ダムができて誰が被害を受けるかという視点に立つと簡単に結論は見出せます。ダムの実害を直接的に受けるのは、実際に漁をしている漁民です。漁業補償を出すこと自体が、ダムとの因果関係を示すまでもなく、漁場がダムで消滅するためであり、漁業補償額は漁民の漁獲高を参考にして算定されるこ、漁業補償を受けるのが漁民一人一人、つまり漁協組合員であることなどからも、権利者が漁民一人一人であることは事実だと考えられます。
しかし、国交省はあくまで「権利者は漁協であり、組合員ではない」と主張を続けています。
ダムの目的の喪失に関しては、住民討論会で治水を争点に議論されています。少なくとも、ダムでなければならない理由があるとは到底思えない説明しか国からなされていません。また、情報公開が進むにつれて国のウソが暴かれてきています。裁判経過
これまで16回に渡る弁論では、主に原告適格についての「入り口論議」しか行うことができず、実質審理に入ることができていません。
しかし裁判を通して原告側は、@ダムについての全般的な解説及び原告適格、Aダム事業認定の合理性、公益上の必要性がないこと、B漁業法の沿革や共同漁業権の考え方について、C最高裁判決の問題点、D裁判例からみた漁業行使権の権利性、E原告の漁業実態を記載した陳述書を提出し、漁民の思いを訴えてきました。
また、2004年10月、「行政事件訴訟法の一部を改正する法律(平成十六年法律第八十四号)」が公布され、原告適格の拡大等の改正を行うことが決まりました(施行は平成17年4月1日)。この法改正により、尺鮎裁判の原告適格についての議論にも大きな影響が出ると考えられています。
2004年12月2日、尺鮎裁判の第16回弁論が開催されました。
この席では、11月25日の収用委員会審理を受けて、収用委員会の判断を待って弁論を進めたいとし、具体的な裁判所の判断や実質的な審理には入らないまま次回期日を3月17日と設定しました。
収用委員会では、新利水計画策定の動きをみながら来春に収用についての判断を下すことを明言していますが、熊本地裁は、この収用委員会の判断を見てから尺鮎裁判の今後の進行を決めたいとしました。
市民の役割、市民が出来ること
裁判を傍聴して裁判の行方を見守って下さい。
そのことが、ダムや漁業権問題への関心の高さを裁判所や国土交通省に示すことになり、また、闘っている漁民や弁護団を勇気付けることになるのです。
また、熊本市での裁判には訴訟費用が必要となります。
原告らの負担は大きく、問題を広く社会に伝え、ダム中止を勝ち取るために市民のサポートが必要です。
ぜひ訴訟費用のカンパという形で、この裁判をささえていただけませんか?
全国からのご支援をお願いいたします!
郵便振替 17100-24605411
名義人 「川辺川尺鮎原告団小鶴隆一郎」
連絡先: 人吉市願成寺615-19川辺川尺鮎原告団小鶴隆一郎
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