子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
ニュースレター 第27号 2005年(平成17年)6月4日発行

【写真】川辺川-権現河原、2005年5月29日

■中止に向け動きつつある川辺川ダム問題
 前号では、収用委員会が却下裁決を出した場合どうすべきかという ことと、その後に策定される新治水計画をどのようにして策定すべ きなのかということについて考えてみました。 今回は、川辺川ダム問題全般について、国土交通省がこの間、目指 そうとしたことと、それが国交省にとって、ことごとく失敗に終わ っていること、即ちダムが中止に向け動いているということを明ら かにしたいと思います。

1.利水問題と収用委員会

 国交省にとって、現在策定中の新利水計画で勝ち取る目標は何だ ったのかというと、新利水計画を再度、川辺川ダムを水源とする利 水案(ダム案)にするということでした。ダム案にするためには、ダ ムによらない利水案(ダム以外案)を叩き潰す必要がありました。こ のため、昨年秋以降、年明けまで、国交省はダム以外案が成立しな いように様々な妨害工作を企んできました。ダム以外案は、川辺川 に堰を設け、そこで堰上げされた水を引き込んで田畑に補給すると いうものです。国交省は、ここで川辺川からの取水量には制限があ ることを主張してきました。川の機能を維持するためには、一定の 水量(「正常流量」という)が必要なので、利水用に多くは取水で きないというのです。即ち、既存の水利権を盾にとったのです。

 しかし、これには法律上の根拠が無く、国交省が恣意的に設けた制 限だというのが利水原告団・弁護団の追及で明らかになりました。 また、ダム以外案では、既存の水路を活用したりする必要があります。 これに対しても国交省が妨害しようとしましたが、失敗に終わりまし た。このように、国交省の妨害を利水原告団・弁護団が跳ね除けたこ とによって、ダム以外案は日の目を見ようとしています。農家負担金 もダム案、ダム以外案とも同じ額になることが決まりました。6月に は、両案が農家に提示される予定です。ダム以外案では、 2012年度 に水が補給される予定です。ダム案は早くても2015年度といわれてい ます。農家負担金が同じなら、早く水を必要とする農家がどの案を選 ぶかは火を見るより明らかです。

 このように、国交省の妨害工作によって、農家への新利水案の提示 が当初の予定より大幅に遅れましたが、このことによって、国交省は 熊本県収用委員会に出した共同漁業権や土地の裁決申請に対する却下 裁決を免れない羽目に陥っています。前号でも述べましたが、昨年11 月25日の熊本県収用委員会の審理で、塚本侃(つよし)熊本県収用委 員会会長は、 5月に開催される次回審理までに明確に、新利水計画 の策定によってダム計画がどう変わるか示すように国土交通省に求め ました。

 そして、もし、明確に示せない場合、収用裁決申請の却下を示唆し ました。国交省は新利水計画の策定を妨害したために、ダム計画がど う変わるか示すことはできませんでした。となると、収用委員会は却 下裁決を出さざるをえません。国交省の新利水計画策定作業に対する 妨害が、結局、収用委員会の却下裁決となって、国交省に跳ね返って きているという訳です。現在の見込みでいえば、ダム以外案が有力で すが、仮にダム以外案になれば、同じように却下裁決が出される見込 みです。国交省にとって、収用委員会を無傷に突破できる見込みは全 くないのです。

2.川辺川尺鮎裁判の意味

 3月17日に行われた川辺川ダム計画の事業認定取り消し訴訟(川辺川 尺鮎裁判)の口頭弁論で、永松健幹(たけもと)裁判長は、事業認定 の是非について次回から実質審理入りする方針を明らかにしました。 このことはこれまでの争点だった原告適格問題を実質上、裁判所が認 めたことを意味します。今後は、収用委員会で審理してきた川辺川ダ ムの公益性すなわちダム建設の目的があるのか無いのかが、裁判でも 同じように問題になってきます。万が一、国交省が収用委員会の裁決 の問題をクリアできたとしても、次には裁判所の審理もクリアしない といけなくなるわけです。

3.漁協との任意交渉路線も失敗

 このような問題を回避しようと、国交省は再度、球磨川漁業協同組 合との任意交渉に活路を見出そうとしました。すなわち、収用委員会 の裁決申請を取り下げて、漁協と任意交渉を再度行い、漁業補償の契 約を交わして、ダム本体着工の同意を得るという方法です。しかし、 この目論みも失敗に終わりました。 5月15日に、漁協組合員の地域代 表である総代選挙が行われました。この選挙で、国交省の意を体した ダム推進の漁協執行部は、様々な不正まがいの工作を行ったと言われ ています。定数100人の総代のうち、ダム推進の総代が3分の2以上を 占めれば、総代会で3分の2以上の同意で漁業補償の契約を交わすこと ができるからです。総代選挙の結果、ダム推進の総代が3分の 2以上 を締めることはできませんでした。ダム反対派の総代が3分の1超を確 保したと言われているからです。国交省はここでも、敗北したのです。

4.五木の土地は収用できない

 仮に、国交省が漁協との任意交渉が出来て、漁業補償契約を交わし たら、ダム本体着工できるのでしょうか?答えは「否」です。という のは、ダム本体着工するには、漁業権の問題だけでなく、五木村にあ る土地の問題もクリアしないといけないからです。五木村には、ダム 反対派の方が所有されている土地や土地所有者が分らない土地があり、 ダムが出来るとそれらの土地は水没してしまいます。そのため、国交 省はそれらの土地を取得するために、収用委員会に裁決申請していま す。こういう土地の収用裁決が下りなければ、国交省はそれらの土地 を取得できず、ダムを作れません。

 収用委員会が却下裁決を出すことが予想できるため、仮に国交省が裁 決申請を取り下げて、漁協と同じようにこれらの土地も任意交渉で取 得しようとしても、ダム反対派の方は任意交渉に応じることはありま せんし、土地所有者が分らなければ任意交渉が出来るはずもありませ ん。国交省は収用委員会の結論を待つしかないのです。ここで収用委 員会が却下裁決を出せば、国交省は打つ手はなくなり、これらの土地 を取得することは不可能になります。

5.最大の難関・・・基本計画変更と熊本県

 収用委員会の結論がどうあれ、川辺川ダムの基本計画は変更をせざ るを得ません。これは、新利水計画によるダムの利水目的の見直しが 避けられないこと、また国交省自身昨年、ダム事業の総事業費を増額 せざるを得ないと明らかにしていることによります。  川辺川ダムの基本計画変更手続きは、利水目的が残れば、特定多目 的ダム法(特ダム法)によって行われ、利水目的が無くなり、治水目的 だけとなれば、河川法によって行われます。

 前号では、河川法に基づいた手続きをどう進めていくべきか述べま したが、いずれの手続きにしろ、最終的に熊本県知事の意見が必要で す。現在、熊本県が総合調整役の住民討論集会でダムの治水目的や環 境に対する影響について議論中であり、結論は出ていません。熊本県 はダムに対する是非の判断はできない状態です。よって、県知事がダ ム計画に対して簡単に意見を出すとは考えられません。

 また、特ダム法による基本計画変更手続きでは、県知事意見に対す る県議会の過半数の同意も必要です。熊本県議会は、前回の基本計画 変更時 (1998年3月)に比べて、川辺川ダム事業に批判的な議員が増え ています。県議会の多数派であり、ダムに賛成といわれる自由民主党 議員であっても、強力なダム推進派は数名しかいないと言われていま す。川辺川ダム反対派の議員がほんの少数だった前回の基本計画変更 時でさえ、県議会でダム事業推進の決議を上げることには、かなりの 議論がありました。ダム建設見直しを求める県民世論が過半数となっ た現在、世論に反する決議を簡単に議会がしてしまうとは考えられま せん。

 国交省にとっては、先送りにしてきた住民討論集会の議論や森林保 水力共同検証作業を行わなくては、前には進めません。そして、前に 進んだからといって国交省が望む結論が出るとは限らないのです。

 以上、見てきた通り、国交省にとって、現在、ダム建設できる展望 が全く見出せない状況といってもいいでしょう。国交省の目の前には、 幾多のハードルが待ち構えています。私たちは、現在の状況や、住民 と国の力関係を冷静に見極め、悲観することなく、楽観することなく、 ダム中止に向け、声を上げていきましょう。勝利の確信と行動だけが 運命を切り開くのです。


■流域委員会とは何か・・・他地域に見るダム問題

 1997年、河川法が改正され、河川工事、河川の維持など河川整備 の全体像について定める河川整備計画を策定する時に、河川管理者 (国土交通大臣または都道府県知事など)は必要な場合、「公聴会 の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなけ ればならない」と定められました。その規定に則り、各地で流域委 員会というものが設置され、住民が流域委員会の傍聴をしたり、流 域委員会で意見を述べたりすることができるようになりました。  球磨川・川辺川の川作りにも本来なら、流域委員会を設置して、 治水対策に流域住民の意見を反映させていくべきです。  今回は、大阪府の淀川水系のダム問題に取り組んで来られた増田京 子さんに、流域委員会の現状を報告してもらいます。

ますだきょうこ
箕面市在住23年。子どもを産み育てる中で、この 子達に残せる社会なのかと疑問を抱き、原発・自然環境・女性問題 について友人たちと市民活動を始める。1996年8月の箕面市議会選挙 で初当選。現在3期9年目。


【地図】淀川水系の地図

●淀川水系流域委員会の成果は 

 私の住む箕面市にも国直轄の余野川ダム計画があることを知った のは、1995年。このダム湖周辺には大阪府事業の「水と緑の健康都 市(約320ha)」など大型開発計画があり、第二名神高速道路以外、 全てこの年に都市計画が決定された。環境アセスメントへの意見や 市に対して要望等を繰り返してきたがなんの見直しも無く工事が始 められた。しかし1999年にオオタカの営巣が「水と緑」開発地内で 発見され、私たちは開発中止活動を開始。結果はオオタカ営巣エリ ア 55haを保全するだけで 2004年工事が再開された。

 一方で2000年、淀川水系流域委員会の準備会が立ち上げられてい ることを知る。国土交通省が設置する委員会でしかなく、結局は開 発に御墨付きを与えるだけではと期待はしていなかったが、オオタ カ問題に取り組んでいたメンバーが「国が認めた機関で発言するこ とは重要」と委員になった。 2001年4月から本委員会が始まり、と にかく傍聴に駆け付けたが、高級ホテルで開催される様子には違和 感を覚え、また現状説明や近況報告がだらだらつづく委員会にうん ざりもした。

 しかし、余野川ダムの他、滋賀県の丹生ダム、大戸川ダム、三重 県の川上ダムの4つの建設中のダムが議論され始めるころから、傍 聴者発言が認められることもあって、河川管理者が報告しないこと や委員が知らない箕面市の現状、利水の必要性がないことなどにつ いて他の傍聴者とともに発言をくりかえした。

 この委員会の評価できる点は、傍聴者発言を聞き置くだけでなく、 委員が取り入れるべきは取り入れ、納得できないことは河川管理者 に説明を求めるなど、公開の原則が貫かれたことだろう。その結果、 「計画中、工事中のダムも含めてダムは原則として建設しない、中 止することも選択肢の一つ」と提言。どのダムも「工事の中断を継 続したまま、治水について調査、検討を詳細に行う」となり、現在 ダム以外の治水対策を検討している。

 しかし、委員会運営に5年間の年月と何億円という費用を投資し て、未だ最終結論が出されないということは、何らかの力関係があ るのではと思われても仕方が無い。また、基本高水流量の議論や生 データー等基本資料の提供などがなかったことは問題点として残る。

 この2月から規模を縮小し委員構成を変更して第2ラウンドが始ま ったが、河川管理者がダムをどうするのか、という結論を出さない 限り進展はない。河川法改正によりこれまでにない流域委員会とな ったがその成果は未定である。私たちはダム一点に絞り、早急に結 論を出すことを要求し続けていく。そのためには相手の論点をきっ ちり押さえ、客観的にみてもおかしいということを公開の場で明ら かにすることは不可欠と考えている。

 以上のような経過と問題点を踏まえ、川辺川ダム問題に取り組む 皆さんと共に全国のムダなダムを止めるために、今後も諦めず最後 まで学習しながら傍聴を続け、今年中に結論を出すことを求めて頑 張ります。


■学習会感想  

2月25日及び5月16日に熊本市で開催した学習会には多くの方に参 加していただき、ありがとうございました。県民の会の名物イベン トにもなった観のあるこの学習会ですが、講師の森徳和弁護士の話 が分かりやすいということで大好評をいただいています。2月の学 習会に参加された方の感想を紹介します。

【写真】講演する森弁護士(2月25日)

「森マジック!?」              会員 河野恭子

 私は熊本市在住の主婦ですが、以前からダムのことは気になって たまりませんでした。特に川辺川の実物を見てしまった後は、あの 貴重な自然を不必要に汚すことがいたたまれなくて、ダム反対 パレードに出たり、署名を集めたり、福岡高裁に判決を聞きに行っ たり、鮎を産直で買ったり、各種集会をのぞいたりと、出来るとこ ろでささやかに参加してきました。

 が、このごろ長引く「マンネリ感」に捉われ、何かしら受身にな っていたと思います。そんな折「今年、川辺川ダムが止まる。」と いう題に惹かれて学習会に参加してみました。まず100人を超える 参加者の数に驚きました。森先生は利水裁判に関わってこられた経 緯を振り返り、おととしの高裁勝訴を経て今年予定されている新利 水計画策定にいたるまでの国、県、利水農家の事情を、舞台裏の点 描もまじえながら説明して下さいました。

 時系列にそった客観的な分析のおかげで、断片的だった私の聞き かじりは一つにつながり、ダムによる利水案に関する「今年がクラ イマックス」の意味が浮かび上がってきました。特筆すべきは 講師の「話芸」とでも呼びたいような語り口で、100人で大笑いを した後どこからか新たな力が湧いてきた気がするのは本当に不思 議です。

 私の走り書きメモの「もぐらたたき方式@熊本」「個性のひと K氏」などは、今となってはただの謎です。なので、5月16日の次 の講座(高座?)こそ見逃せない!と意気込んでいます。川辺川 のダムをとめる運動が、日本でも極めてユニークなものであると 知り、そして農家の要望聞きとりなど膨大な部分を黙々と支えた 人たちのことを知り、「倦(う)まず、弛(たゆ)まず」のお手 本をたくさん見つけました。私も無数の小さな点、意志を持ち、 動き続ける点の一つになりたいと思っています。

【写真】2月25日の学習会の様子

■団体紹介コーナー

このコーナーでは日本一の清流を守るため川辺川ダム問題や利水問題に取り組んでいる様々な団体を紹介します。ご近所の団体に顔を出してみませんか?

団体名:子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
会員数:約350名
設立年月:1996年8月
活動概要:漁民支援、農民支援、ダム中止署名キャンペーン、 ニュースレター発行、インターネットによる情報発信など
一言コメント:川辺川ダムに反対し、真の住民参加型の社会を 求め活動します。また地元漁民、農民、市民の活動を支え、 ダム問題や自然の大切さについて勉強会を開きます。一緒に 活動する仲間を随時募集しています。
連絡先はこちら

団体名:子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る東京の会
会員数:常時8-12人ほどで活動していますが、さすが東京。 イベントなどで人手が必要なときはいわゆる「環境系仲間」 がこぞって援助してくれます
設立年月:1998年1月
活動概要:設立当初からの目標が、「川辺川問題」を全国区 にすることで、首都の特性も活かし、ロビー活動も展開
一言コメント:情報系職業の会員が多く、問題の広報化など に特化してマスコミ向け、政治家向けに活動してきました。 できるだけ、楽しみながら活動できることを考えているので、 お酒や食事会、ハイキングなども多くなっています。
連絡先:こちら

【写真】国土交通省との交渉(2004年8月27日)

団体名:子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る福岡の会
会員数:30名ほど
設立年月:1998年6月
活動概要:多くの人に「川辺川」の清らかで、豊かな流れ知って もらうことを中心に活動を続けています
一言コメント:熊本県を除く、九州の全域をカバーする「福岡の会」。あなたも、私たちとともに、川辺川に遊び、川辺川を食べ、 川辺川を守る活動にご参加下さい。いつでも、参加をお待ちしています。
連絡先:こちら

【写真】イベント「川辺川を食べよう!」(2004年9月26日、福岡市)

団体名:子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る関西の会  
会員数:25〜30名ですが、主な活動メンバーは5〜6名です
設立年月:2000年3月
活動概要:川辺川の知名度アップと川辺川ダムの問題点を知っ てもらうためイベントへの参加や投稿などを行っています
一言コメント:関西方面でも、より多くの人に川辺川の素晴らしさを 知ってもらいたいと、イベントへの参加など細々と活動を続けていま す。関西在住の方の積極的なご参加をお待ちしています。現地で頑張 る仲間を応援しましょう!
連絡先:こちら

団体名:清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会

会員数:約1200名
設立年月:1993年8月
活動概要:結成以来毎週月曜夜8時から事務所「くまがわハウス」にて 例会を開いています。 最近では国土交通省に対して「瀬目トンネルに ついての説明会」を開くように要請したり(3月11日開催)、抗議行動 を行ったりします。個々の会員が、利水訴訟、尺鮎裁判、森林保水力 検証、クマタカ保護等あらゆる分野に関わって活動しています。
一言コメント:川辺川ダム問題は昔と比べて話題になることが多く、 一般の人々は止まると思う人が多くなり、安堵感が漂っています。これ が一番危険なことです。ダムを止めるのはそんなに簡単なことではあり ません。確かにダムは建設しにくい状況ですが、国土交通省も必死なの で、今が一番大変な状況なのです。今こそ力を結集してダムを止めましょう。
連絡先:〒868-0004熊本県人吉市九日町36-3Fくま川ハウス
TEL/FAX:0966-22-4004

団体名:美しい球磨川を守る市民の会

会員数:74名
設立年月:1996年8月
活動概要:川辺川ダム、荒瀬ダムの球磨川流域に与える影響の検討、川に 関する啓発活動など。例会は毎月第2第4月曜日開催、年会費は1000円。
一言コメント:会報「どんかっちょ」を年3回発行しています。球磨川 水系のいろんな問題点を、真剣にかつ楽しく話し合っています。そして、 ときにはレクリエーションも。皆さん、お気軽にご参加ください。 連絡先:〒866-0883八代市松江町366-9間垣方
TEL/FAX:0965-32-8107 E-MAIL:こちら

団体名:やつしろ川漁師組合

会員数:128名
設立年月:2001年9月
活動概要:ダム建設により失われた球磨川の清流と鮎をはじめとした 魚族を回復させることで、球磨川流域の環境を守る
一言コメント:かつて、八代市には十数軒の鮎問屋があり、多くの川 漁師が鮎漁で生活していました。しかし、現在、川漁師は姿を消し、 鮎問屋も一軒を残すのみです。鮎が溢れる川に戻すことは、地域の活 性化にも繋がると思います。
連絡先:〒866-0896 八代市日置町3838-3毛利方  
TEL/FAX:0965-34-0835 E-mail:こちら

【写真】総代選挙対策を検討中の事務所内

団体名:やまんたろ・かわんたろの会
会員数:30名
設立年月:1994年3月
活動概要:フィールドでの環境保護の啓発活動。植林活動("きゅうせんぼうの森" 作り)。球磨川水系ネットワークへの参加。
一言コメント:山と川と海はひとつにつながっているんだね!自然が元気だと私た ちも元気だよ!ふわふわと活動を続けてきましたが、今秋に「きゅうせんぼうの森10thお 誕生会」を迎えます。是非、山でお会いしましょう!
連絡先:〒869-6101八代郡坂本村西部2403木下方
    TEL/FAX:0965-45-3770

団体名:川辺川を守りたい女性たちの会

設立年月:2001年2月
会員数:尺鮎トラスト賛同者1300名。鮎の里親賛同者は50〜100名
活動概要:尺鮎の産地直送という尺鮎トラスト運動と鮎の里親運動をし、 ダム反対の漁民を支援している
一言コメント:二つの運動を継続していくためには鮎の不魚と、球磨川漁協問題を 見過ごすわけにはいきません。不漁の原因究明と、「川は誰のもの?」「川を本物 の漁民と市民の手にとりもどそう」キャンペーンを張る必要があると思っていま す。
連絡先:〒862-0939熊本市長嶺南7-8-115永尾方
TEL/FAX:096-389-9815 E-mail:こちら HPはこちら

団体名:川辺川利水訴訟原告団
設立年月:1996年6月
会員数:2004名
活動概要:利水事前協議において、「水源をダムに特定しない」、「情報の共有 」  を前提とした「農民が主人公」の新利水計画を策定する。
一言コメント:「わからないことには同意はできない」として始まった農民による自主学習組織・川辺川利水を考える会が中心になり、国営川辺川土地改良事業変更計画の見直しを求めてきました。福岡高裁ではついに、農民逆転勝訴を勝ち取り、同計画は白紙となりました。今年が、新利水計画策定の山  場となります。皆様のご支援をお願いします。
連絡先:〒868-0095熊本県球磨郡相良村柳瀬94-3
TEL/FAX:0966-24-4844、携帯:090-1346-4526 e-mail: こちら

■県民の会からの御礼と報告  
 前号で会員の皆様に、会費納入の呼びかけをさせていただいたところ、多くの 方に納入していただきました。また、カンパも13万円以上もいただき、誠にあり がとうございました。おかげをもちまして、2004年度の収支決算は赤字にはなら ずにすみました。会員をはじめ、県民の会を支援してくださる方に、この場をお 借りして御礼申し上げます。
 環境問題に高い関心を示す米国大手アウトドアウェア会社「パタゴニア」の 日本支社は、環境助成金プログラムを通じて、日本国内の草の根の環境グループ の活動を支援しています。県民の会は、この助成金の申請を行っていましたが、 このたび40万円の助成金が提供されるという通知がありました。これは、現在、 住民と国、県で行っている森林保水力の共同検証作業に必要な資金ということで 、 認められたものです。「緑のダム」の実証作業が社会的な評価を受けたものと認 識しています。よりいっそうダムに頼らない治水策の実現に向け、この助成金を 有効に活用していきたいと思います。


■水郷水都全国大会・川辺川分科会と現地ツアーのごあんない

 第21回水郷水都全国会議・第8回有明海・不知火海フォーラムが久留米市と柳 川市で開催されます。
 その中で、全国からの大きな関心を集める川辺川分科会が開催されます。全国 からの参加者とともに、改めて川辺川の今を見つめ直し、未来を考えていきたい と思います。また、大会開催に先立って、五木村や日本で最初のダム撤去となる <荒瀬ダム>を見学するバスツアーを企画いたしました。みなさんのご参加をお 待ち致しております。

●川辺川分科会
日時:2005年6月12日(日)9:00〜11:45
場所:久留米大学御井キャンパス
参加費 :1,000円 ※6月11日(土)の午後は、全体会議が開かれます

●川辺川バスツアー
集合日時:2005年6月10日(金)11:00(時間厳守)
集合場所:JR博多駅・筑紫口
参加費 :13,500円(一泊二日)  (バス代・高速代・宿泊・11日の朝・昼食を含む)
※お手軽な現地集合・宿泊なし¥4,500コースも有ります
問合せ:川辺川を守る福岡の会 e-mail:こちら松原
水郷水都全国大会の詳しい内容は、こちらをご覧ください。
http://www.sui-sui.sakura.ne.jp/



■特別投稿  
熊本では、川辺川ダム問題以外にも、水俣病問題やハンセン病問題 など戦後の日本社会のあり方を問う社会問題が起こっている。今回は、 これらの問題に一貫して支援者の立場から関わって来られた北岡秀郎 さんに、これまでの支援活動を振り返ってもらった。

きたおか ひでお 
1943年生まれ。高校卒業まで熊本市。大学卒業後、 熊本県内で高校教師。1970年から水俣病訴訟弁護団事務局、その後、 編集・著述業。川辺川、ハンセン病、興人二硫化炭素中毒、原爆症等 裁判の支援運動に従事する。2002年から3年間、熊本学園大学非常勤 講師(ハンセン病講座)。


【写真】著者近影

●齢(よわい)60、夢なかば!    
       北岡秀郎

水俣病との出会い  
 初めて水俣に足を踏み入れた時、28歳であった。胎児性だったか 小児性だったか、当時は区別もつかなかったが患者の女の子に会っ た。衝撃だった。世の中にはいろんな病気がある。仕方がないもの もある。でもこれは違う。加害者がいて被害者がいた。仕方がなく ない病気だった。加害者は加害の事実を認めようとしない。

 当然、何の救済策もない。こんな理不尽なことがあるかと思った。 今思えば、それが私のその後の人生を変えたとも言える出会いだった。

 しばらくして水俣病訴訟弁護団が事務局員を求めてきた。私の事 務局員としての最初の仕事は、原告患者を訪ねて供述録取書を確認 していくことだった。患者本人の前で、綿密な調査に基づく供述を 読み上げ、誤りを訂正し、署名捺印を求めた。人生を語り、夢を語 り、崩壊していく生活と健康を語り、かなわない現実を見据えてい た。ひとり一人が深刻なドラマだった。一緒に涙を流した。これが 私の原点となった。

政治解決までの道のり
 一次訴訟ではチッソに勝った。補償協定が結ばれた。しかし補償 の条件は行政による認定だった。行政は認定を厳しく制限し加害企 業・チッソを守った。二次訴訟ではその認定の壁を破った。それで も行政は認定基準を変えなかった。「行政と司法は違う」と平然と 宣うた。患者たちの目は当然ながら国へ向かった。国賠訴訟(三次 訴訟)だった。

 福岡、京都、東京、新潟でも起こされた。新潟以外は不知火海沿 岸からの出稼ぎ先での発病だった。熊本地裁では一次提訴と二次提 訴、京都地裁が国に勝訴した。東京、新潟は加害企業のみへの勝訴 だった。それぞれが高等裁判所に係属した。当然なことに裁判は長 期化していった。

 1993年から福岡高裁、東京高裁、熊本、福岡、京都、東京、新潟 地裁などがあいついで和解による解決を勧告した。時を同じくして 日本中の県知事が政府に早期解決の意思表示を行い、ついに1995年 12月、村山富市首相(当時)が謝罪談話を発表。事態は関西訴訟を除 く各原告団、被害者団体が政治解決を受諾。これによって1万人を 越える被害者に一定の一時金給付と医療救済が実現した。

 この政治解決には私たちの支援組織でもさまざまな議論があった。 しかし私は支援組織(水俣
病闘争支援熊本県連絡会議)の責任者とし て一切の言及を避けた。闘いを継続するも収束させるも被害者であ る患者が判断すること。どちらを選ぶにしても患者に取って苦渋の 選択となる。支援組織が口をはさむべきことではない、これが私の スタンスだった。このことはその後の支援運動でも基本的に貫いて いる。

 私はこの間、「みなまた」紙を発行し、全国への発信を続けた。 一次訴訟の頃(1970年前後)、公害関係のミニコミは全国各地で数多 く発行された。しかし数年で消えた。闘いは知らせ続けなければ国 民は知らないで終わる。1975年から始まった「みなまた」紙は1996 年まで205号を数えた。e-メールやインターネットがない時代であ った。

川辺川ダム、ハンセン病の闘いへ
 水俣病の闘いが一定の解決を見た後、弁護団は川辺川利水訴訟と HIVからハンセン病国賠訴訟へと重点を移した。それにしたがって 私も川辺川利水訴訟を支援する会、ハンセン病国賠訴訟を支援する 会・熊本とウイングを広げることになった。その中で川辺川ダムの 闘いはこれまでと異質だと思う。それは水俣病、八代興人二硫化炭 素中毒、ハンセン病といった過去の人的被害とは異なり、いわば将 来の被害を防止するものだからである。もちろん「社会的被害者」 はすでに五木村をはじめ多く存在した。

 しかし、これらの問題の本質は共通であると思う。住民の声を時 の政治や経済が押しつぶしていく構図である。利水訴訟のきっかけ となった川辺川利水事業の同意書作成の強引なやり方は、私には水 俣病の見舞金契約に重なって見えた。どちらも結局は裁判によって 無効とされていく。しかし、それまでには多くの人たちの血と涙の 物語があった。それなくして裁判での勝利はなかったと言った方が 良いかも知れない。裁判になった時、マスコミも含めて多くの人た ちの注目をあびる。しかしこれは闘いのほんの一面に過ぎない。そ こに至る、あるいはその影に多くの人たちの努力があり、悩み・苦 しみがあることを知ってもらいたいと思う。これらの部分は川辺川 ダムの闘いに関してはほとんど顧みられていない様に思う。

 実はこの点では、ハンセン病において一定の見るべき成果がある。 そのほとんどは患者(元患者)自身の筆による。中には患者のプロ作 家によるものもあるが、多くは聞き書きも含めて普通の人の手にな るものである。つたないものも多いがそれを越えて心うつ作品が多 いのは被害者自らの手になるからだと思っている。

「支援」の在り方
 我々が「川辺川利水訴訟を支援する会」を立ち上げたのは、直接 にはそこに住民の闘いがあり、それが訴訟という形を取っている以 上、一般的な支援ではなく、特別な形態での支援が必要だと判断し たからである。現地住民と志を同じくする市民団体は「県民の会」 をはじめとしてすでに存在していた。しかしそれは訴訟という形態 を取る闘いを直接支援することを目的とした組織ではなかった。裁 判には、裁判固有の支援を必要とすることがある。我々の会の存在 する理由はそこにあったと思う。ハンセンでも同じだった。

 利水訴訟の勝利は、ダム建設の本丸にせまっている。その包囲網 には多くの市民団体、いやそれを越えるものまで実質的に参加して きている様に思える。細心の注意を払い、間違いなく攻め込んでい けば本丸での勝利も見通せるところまで闘いは進んでいる。

 そろそろもう一つの課題である川辺川を越える闘いに目を向け始 める時期かと思う。川辺川ダムで勝っただけでは「住民の声を押し つぶす社会構造」を変えるまでには至らないのではないかと思うか らである。

 そこへつないでいく闘いへ今年は手をつける時期になっているの ではないか。齢(よわい)60を越えて、そのことを考えている。


■イベント・インフォメーション

●第9回川辺川現地調査
日程:8月27日(土) -28日(日)
テーマ:公共事業と住民決定PART2
内容:現地バスツアー(ガイド付き)、学習会(川辺川ダム反対運動 が、なぜここまで来たのか。住民決定をより確実にするには)、シ ンポジム(公共事業の弊害と、それをどう打ち破り、住民主導の地 域振興をめざすか)
問合せ:川辺川現地調査実行委員会事務局
(TEL/FAX.0966-24-4844, 携帯.090-1346-4526)

●川辺川尺鮎裁判(事業認定取消訴訟)
日時:9月1日(木) 10:30門前集会11:00口頭弁論
場所:熊本地方裁判所101号法廷
問合せ:090-8834-1533毛利