2008年6月5日、県民の会ほかより熊本県知事に対し、以下の抗議文を提出しました。


                               2008年6月5日
熊本県知事 蒲島郁夫様
 
      子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会 代表 中島 康
      清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会 会長 緒方俊一郎
      球磨川大水害体験者の会             代表 堀尾 芳人
      川辺川利水原告団                団長 茂吉 隆典
 
 
 
     抗議文
 
 昨日6月4日、貴職は県営荒瀬ダムの撤去方針を凍結し、発電事業を継続する方向で再検討すると発表しました。代替の架橋工事等も含む撤去費用が100億円近くにかさむことなど「県財政再建」「温暖化対策」を理由に上げていますが、以下の理由で強く抗議するものです。
 
 まず第一に、荒瀬ダム撤去は、流域住民の間で長年、幾度も論議を尽くされた結果の、住民の意思です。これまで50年間の坂本村民や流域漁民の荒瀬ダムによる水害や振動、水質汚濁など被害やそれに対する思い。2002年6月の坂本村民による「荒瀬ダムを考える会」の発足。同年9月の坂本村議会の荒瀬ダム継続反対の意見書可決。潮谷前知事の荒瀬ダム撤去表明。そして今日までのプロセスを、貴職は認識されているのでしょうか。この住民の意思と、これまでの経緯を無視することは、許されることではありません。
 
 50年前に荒瀬ダムができてから出現した、水害被害地とそこに住む人々について、貴職はどのように考えておられるのですか。住民はダムによる水害と環境破壊から逃れられる日を、待ち焦がれています。旧坂本村民、球磨川の流域住民及び熊本県民が納得できる説明を求めます。
 
 第二に、貴職が先ほどの県知事選挙で提示したマニフェストに、「荒瀬ダムの撤去方針の凍結」はどこにもありません。マニフェストにあるのは、「お役所仕事の時代は終わりました」「県民みんなの力で難局に立ち向かう」「熊本の宝・農林水産業を活性化します」「日本一の環境立県くまもとを目指します」など、「荒瀬ダムの撤去方針の凍結」とは真反対のことばかりです。
 
 第三に、貴職のマニフェストにもある「県財政再建」に関してです。貴職は、荒瀬ダム「撤去」よりも「継続」のほうが県財政にとって有利であると判断されたわけですが、それは大きな間違いです。荒瀬ダムは、発電で年間1億円の利益が見込めるとのことですが、球磨川の漁業・観光資源は、少なく見積もっても30〜35億円の価値があるという試算もあります。荒瀬ダムを撤去すれば、球磨川の河川環境が今より飛躍的によくなることは明らかで、球磨川の漁業・観光も繁栄するなど、有形無形で大きな公益を県民にもたらします。貴職のマニフェスト「熊本の宝・農林水産業を活性化します」は、荒瀬ダムの継続ではなく、荒瀬ダムの撤去で実現するものです。
 
 また、荒瀬ダムを継続すれば、今後もダムの維持管理費、ダム湖周辺の護岸や道路の補修などが、ダムが存在する限り必要となります。ダムが寿命を迎える日には、当然撤去費用も必要となります。
 
 熊本県にとって100億円近くの出費は極めて厳しいことは、私共も十分承知しております。一方で、川辺川ダムの建設費を3300億と見込んだ場合、県負担総額は735億円と見込まれています。このような多額の出費は、当然熊本県には無理なはずです。有識者会議などの形をとらなくても、「県財政再建」の一言で川辺川ダム建設は中止すべきです。
 
 現在、地球上の自然を守り、自然を回復させる必要性が叫ばれています。そのことは、「日本一の環境立県くまもとを目指します」とマニフェストでも明らにされた貴職も十分認識されていると思います。
 
 ダムが環境や生態系に甚大な打撃を与えることは、世界的にも常識となっています。広大な森林を水没させ、メタンガスを放出するなど、総合的に見た場合、ダムは地球温暖化の解決策になるどころか、逆に温暖化を引き起こしています。
 
 荒瀬ダムの撤去を、各新聞は社説などで高く評価して来ました。また、International Rivers等国際的に活動するNGOからも、荒瀬ダム撤去は環境的、社会的、民主主義的視点から先駆的事例として高い評価を受けています。貴職は、自然保護の旗手として、自然回復のさきがけとして、世界にこの日本の熊本から「荒瀬ダム撤去」を発信されるはずでした。貴職は、日本の、世界の誇りとなる栄誉を自ら捨て去られたのです。
 
 以上のことを勘案して、「荒瀬ダム撤去方針の凍結」を即時撤回されることが、熊本県知事として当然のことと考えます。目を覚まして下さい。
 
                                 以上



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