2004年11月24日、熊本県収用委員会会長あてに、美しい球磨川を守る市民の会(八代)より以下の申し入れを行いました。
平成16年11月22日
熊本県収用委員会
会長 塚本 侃 様美しい球磨川を守る市民の会
川辺川ダム事業の収用採決申請の却下を求める要望書
私たちは、川辺川ダム計画の治水事業により、最大の受益地とされる八代市の住民団体です。
事業者が、この事業の妥当性を判断するために算出した費用対効果のうち、氾濫区域内資産の約85%を八代が占めていることからも、川辺川ダムによる治水事業は八代市民のためといっても過言ではありません。また、平成13年12月18日に貴収用委員会に提出された採決申請書にも、「事業の施行を必要とする公益上の理由」にも「洪水調節効果」として、「・…八代市の主要都市をはじめ沿川地域は、たびたび大洪水に見舞われ、甚大な被害を被ってきた」と、危険区域に八代のほぼ全域を加え、「本事業が完成すれば、洪水被害が大幅に低減される」と記載しています。しかし、八代市の過去の水害原因は、球磨川の決壊による氾濫ではなく、球磨川の北部を流れる水無川の氾濫によるものであることは、市民も行政も周知している事実です。
私たちを含め八代市民が、過去の水害を理由に、川辺川ダム事業による治水受益地に八代市が入っているという事実を知ったのは、収用採決申請直前に住民により出された代替案資料及び、その後に開催された住民討論集会の議論の過程においてのことです。
他の河川による八代市の水害を、球磨川が原因であるかのごとく採決申請書にも採り上げているにも関わらず、その採決申請書の内容を審査しないでいいという収用委員会のあり方は、現土地収用法のもとでは、仕方ないのかもしれません。少なくとも八代市にとっては受益地の根拠は全くない事業に対し、当該地住民に事業認定の取消しを求める行政不服審査訴訟を起こすことも、収用委員会の審理に参加する権利も認められないことも、納得いかないところであります。
しかし、土地収用法の目的が、事業が円滑に進まないことが、社会全体にとって大きな損失を招く事があってはならないということであるという基本に立ち返ると、収用委員会の社会的立場に立って、この事業が円滑に進まない場合、失われる公益性の妥当性についての判断も不可欠かと考えます。
また、収用委員会の審理の過程において、勘案すべき最も重要な事項は、先行処分である事業認定において、事業目的の一つである利水事業については、全く違法に対象農家の同意を取りつけたことが裁判でも明らかになったということです。利水事業は農家の要望によるものであるはずですが、国の違法行為のもと、望まない農家にまでダムからの取水を押しつけた事業であることが判明した時点で、ダムの目的から利水事業は消滅したと判断すべきだったと思われます。
新利水計画が利水容量の変化に与える程度により、採決申請された事業との相違が重大な瑕疵にあたるかどうかを判断することはもちろんですが、現在進行中の新利水計画策定による利水事業は、収用委員会に採決申請されたダム計画の目的となっている利水事業とは、別のものであると判断すべきではないでしょうか。農家に必要な利水事業は、農家が納得するまで話し合うことによって、決定するという当たり前の計画策定が行われている今、新利水計画の策定状況を、審理を先延ばしにする理由とするのも、土地収用法の趣旨に沿うものではないと考えます。
上記の背景を踏まえ、熊本県収用委員会は、11月25日再開予定の収用委員会において、国土交通省からの回答が有る無しに関わらず、先行処分に違法性が認められたという事実を重視し、またいたずらに農家や漁民を含む流域住民をこれ以上翻弄しないためにも、採決申請却下の決断をされるよう要請いたします。
以上
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