【菊池郡区】 福山紘史氏(共産党、新人、62歳)からの回答

1.計画から30数年以上たった川辺川ダム計画について、どの様にお考えですか。
 賛成、反対、その他の立場から、理由もあわせてお答えください。


治水、利水、発電の建設目的は、すべて破たんしているだけでなく、とりか えしのつかない環境破壊と、国および熊本県の財政破たんを一層ひどくする「 ムダで有害な公共事業」の典型であり、ただちに中止し、今後さらに投入を予 定している1200億円以上の予算は国民・県民の暮らし・福祉・教育の充実のた めに活用すべきである。


2.現在、潮谷義子県知事の提唱による「川辺川ダムを考える住民討論集会」が開催され ています。もともとは「ダム事業の大義について、県民の方に国土交通省は説明を行う 必要があると考え、治水を中心とした川辺川ダムの論議について、オープンかつ公正に 論議する場として(知事発言)」企画されたものです。国土交通省の川辺川ダム事業に 対する説明責任とこの「住民討論集会」での議論のあり方について、どうお考えですか?


国(旧建設省、国土交通省、農水省)が、国民・県民に「川辺川ダムの必要性」 について説明責任を果たしてこなかったことは明白。国民から「ムダで有害」 と指摘されている大型公共事業は、他にも全国に山ほどあるなかで、これほど 大規模で、だれでも参加できる「住民討論集会」が継続的におこなわれ、国も 「住民討論集会の結論を最大限尊重する」(扇国交相)といわざるをえない状況 をつくりだしたのは画期的なことである。今後もひきつづき「治水」「環境」 「利水」や「財政」などのテーマもとりあげ、だれもが納得するまでつづけるベきである。


3.この「住民討論集会」における議論の中で出されている河床掘削や堤防かさ上げ、緑 のダム等の治水代替案とダムによる治水についてどうお考えですか?


「巨大コンクリートダムによる治水=洪水調節」という考え方は自然にたいする負 荷(環境破壊)が大きすぎるというだけでなく、堆砂による埋没の危険や、想定を超 えた降雨時における洪水調節機能の喪失=すなわちダムそのものが洪水を激化させる 危険すらある。河床掘削や堤防のかさ上げ、緑のダムなどによる自然と調和した治水 こそ、これからの治水のあり方であると確信する。


4.2月16日には環境をテーマとした「住民討論集会」が開催され、ダムによる環境への 影響を心配する住民の質問が続出しました。ダムによる環境への影響の有無をどうお考 えですか?理由もあわせてお答えください。


これはもう理屈でなく、国や一部の「専門家」が巨大コンクリートダムをつくって も環境はまもれる、清流を保つこともできるというのであれば、そうした例がどこかに 一件でもあるなら教えてほしいといいたい。巨大コンクリートダムができた河川は、 例外なく水賓が悪化し、清流の象徴である「アユ」などがほぼ全滅している。


5.2001年、球磨川漁業協同組合がダム建設受入を前提とする補償契約を拒否したこと により、国土交通省は漁業権の強制収用のための裁決申請を熊本県収用委員会に行い、 昨年から収用委員会で審理が続いています。
 審理の焦点は、共同漁業権が球磨川漁協に帰属するのか組合員個人に帰属するのかと いうことと、ダム建設による漁業への影響に対する補償をどう見るかということです。 強制収用という手法と収用委員会での審理内容についてどうお考えですか?


漁業権は、当該漁民一人ひとりにとって生存の基礎をなすものであり、財産権そ のものであって、漁民個々に帰属すべきものである。憲法で保証された国民の財産 (権)を強制的に取り上げることは本来あってはならないのであって、もし、強制的 にとりあげようというのであれば、その目的が、だれもが納得する「公共の福祉」に 資するものであり、かつ公正・妥当な補償がともなわなければならない。ところが、 川辺川ダム建設は「公共の福祉」どころか、「有害無益な公共事業」であり、川辺川 ダム建設のために、国民の財産権を強制的にとりあげることは絶対に許されない。


6.川辺川ダムのもう一つの目的である利水については、農水省の川辺川総合土地改良事 業に対して、受益対象農家の過半数が「ダムの水は要らない」と裁判に訴えています。
事業の同意数が焦点となったこの利水裁判は一審では原告農家が敗訴しましたが二審の 福岡高等裁判所の審理は1月に結審し、5月に判決が出される予定です。この問題につい て、どうお考えですか?


「利水事業=土地改良事業」は本来、農家の側からの申請事業であり、受益農 家の2/3以上の同意が必要とされる事業である。ところが、「川辺川総合土地 改良事業」は、(1)受益農家の約半数、2000人以上が「ダムの水は要らない」と 裁判を起こしている事実。(2)その裁判のなかで、「同意書Jのなかには 「署名した」とされる時点で、すでに死亡していた人のものや、明らかに本人の 筆跡でないもの、本人が知らない印鑑が使用されているもの、砂ゴムや修正ペン で改ざんの後が歴然としたものなどが、多数確認されている。などをみても公共事業として 成り立たないものであり、ただちに中止すべきである。


7.熊本県の財政状況は、まさに危機といってもいいくらいですが、900億円にも上る県 負担を強いる川辺川ダム事業の県財政に与える影響は計り知れません。以下の3項目に ついて具体的にお答え下さい。
 1)現在の熊本県の負債総額
 2)川辺川ダム事業が県財政に及ぼす影響
 3)この財政問題をどう解決するか?


1)現在の熊本県の負債総額は、約l兆l,200億円
2)川辺川ダム事業は、総事業費2,650憶円のダム建設だけでなく、ダム建設に関連する砂防ダム事業、 水源地域整備事業、国営川辺川総合土地改良事業、県営川辺川土地改良事業などをあわせると 総額約4,249億円うち県負担額約1,032億円にのぼる巨大事業である。すでに約2,995億円が 執行され、県費も約739億円が投入されており、県財政悪化の重要な要因になってることは明らかである。
3)なによりも、ただちに川辺川ダム建設を中止し、これ以上の財政負担をストップす ることが先決。その解決のためには「大型公共工事優先、県民犠牲」の県政のあり方 を、根本から切り換えることが肝要である。


8.30数年間、ダム問題に翻弄され続けてきた五木村、相良村の振興についてどうお考 えですか?


五木村、相良村の今日の事態は、もともと川辺川ダム建設に反対だった村民の願い を踏みにじって国(旧建設省=国交省、農水省)、県などが強引におしすすめてつくり りだしたものである。その責任は、あげて国・県にある。だから当然、国・県は五木村 ・相良村の振興についての責任をもってあたらなければならない。その際、五木村と 相良村の基幹産業である林業と農業で生計を立てられるようにすることが必要であると考える。 とくにコンクリートダムによらない治水の基本として、川辺川周辺の森林の保水力を高める ことがもとめられるが、そのために国・県が五木、相良両村民200〜300人を「緑の管理人」 として雇用し、森林の保護・育成にあたらせるようにすると「治水」と「雇用」の問題を いっきょに解決できるし、その経済波及効果も大きいものがある。


9.各種報道機関の世論調査によると県民の過半数がダム建設反対あるいは見直しであ り、ダム建設賛成は10%にも届きません。このことと御自身の川辺川ダムに対する見 解について、どうお考えですか?


共産党の信条は「主権在民=住民が主人公」です。1976年(昭和5l年)、熊本県議 会にはじめて「川辺川ダム建設基本計画案」が提案されたとき、 これに反対したのは共産党だけでした。いまや県民の過半数の方がこれに反対 されるところまで広がってきたことに深い感動を覚えます。「大義はわが方にあり」 の信念で、川辺川ダム建設を阻止するまで、そして県民のくらし・福祉などが充実 される県政の実現をめざして、ひきつづき全力でがんばる決意です。