子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会 ニュースレター 第2号 平成9年(1997年)6月15日発行 |
◆◆トピックス◆◆ ●利水裁判、原告+補助参加者が1805名に! 川辺川利水裁判とは、農家が農水省を相手取って起こした行政訴訟です。農水 省は対象農家の範囲を公表もせず、89%の農家の同意を取ったとして、利水事業を 進めようとしました。ところがこの同意取りには地元役場職員を使っての詐欺紛 いの方法がとられていました。農家が当然の事として求めた同意撤回を昨年3月農 水省が却下したことにより、866名もの原告団による裁判が始まりました。 5月21日は第3回公判でしたが、この日も傍聴席に入りきれない支援者がロビー にあふれました。この日明らかになった事は原告と補助参加者の数が、1805名に なった事です。この数は対象農家とされる4000戸の45%に及びます。3分の2の同 意を条件とする国営利水事業は既に破綻していると言えます。今後は、この数字 の確認作業が重要な裁判闘争の要件となってくるでしょう。 また、信じられないような話ですが裁判後の報告会では、生活保護を受けてい る補助参加者に役場から「補助参加に名を連ねるなら生活保護を打ち切る」とい う圧力がかかったという事実も明らかにされました。現在、弁護団が究明にあた っています。これは、この時代に現に日本で起きている事です。 この利水裁判は、川辺川ダムに反対して行われているものではありません。た だ利水事業そのものがダムを前提としている為、利水事業が破綻すれば、ダムの 建設目的の一つは失われます。利水裁判を支援することは、間接的にダム事業見 直しを支援する事になります。 利水事業の破綻により新たな水利用目的を建設省がでっちあげる可能性も出て きました。最初にダム建設ありき。このような公共事業のあり方をいいかげんに 私たち納税者はストップさせるべきではないでしょうか。 ●仮排水路トンネル工事に関する資料開示を要請 5月15日付けで、川辺川ダム仮排水路トンネル工事に関する資料開示要請を工事 事務所宛に送付しました。クマタカを守る会で行っているクマタカ調査を基に、 今回の工事の影響が著しく大きいと判断した結果です。また、この工事は実質的 川辺川ダム本体の着工とも言える工事でもあります。着工前に情報の開示を求め ました。この時点ではまだ、工事事務所は起工式日程を明らかにしていません。 19日付けで受け取った工事事務所から回答は、公開されているものばかりで、 私たちの知りたい情報が含まれていなかった為、6月12日再び開示要請を行いまし た。特にダム本体の骨材を採取する原石山がどの山であり土砂をどこに捨てる か?発破をいつ使うか等の要素は周囲の自然環境に多大な影響を与えるものと思 われます。 ● 建設省、仮排水路トンネル工事を着工 ダム本体着工 5月23日、建設省川辺川工事事務所はダム本体着工とも言える仮排水路トンネル 工事の祈願祭を工事現場で行いました。仮排水路トンネルとは、ダムサイトの川 床を乾燥させる為に水の流れを強制的に変える為のトンネルです。クマタカの営 巣地と思われる地域に高速道路並みのトンネルを掘る工事が始まりました。川辺 川はここで実質的に寸断されます。 建設省は予想を上回るスピードでダム本体工事を進めようとしています。これ は建設省の焦りを表していると私たちは考えています。ダム本体完成まで10年か かります。この間、日本の世論及び国内外情勢が、この事業の存続を許すわけが ないと確信しつつも黙ってみているわけにはいきません。一連の抗議行動を行い ました。 仮排水路着工を受けての要請・抗議行動 22日午前10時熊本県庁ロビーにメンバー約10数名が集合。知事宛の要請書をも って環境保全課および森林保全課を回りました。マスコミの関心は高くほとんど のTV局、新聞社が取材しました。要請はクマタカ保護が主な目的です。記者会 見を行った後、数名が次の要請先、川辺川工事事務所へと向かいました。 建設省宛には仮排水路工事中止を求める要望書を提出しました。建設大臣あて は在京の会員と水源連のご協力で直接建設省に届けて頂きました。九州地方建設 局へは郵送しましたが、川辺川工事事務所では、所長との会見も報道され、今後 の話し合いにむけてのきっかけを作った会見となりました。 翌23日は、手渡す会メンバーが中心となり祈願祭会場近くで抗議文を読み上げ ました。 ● 国会請願へのご協力ありがとうございます。 みなさんのご協力で多くの方々の請願書が集まりました。この請願活動に関し ては、文案の作成段階より日本婦人有権者同盟会長紀平悌子氏(前参議院議員) の全面的なご協力を頂いて進めてまいりました。今国会に提出が間に合わなかっ たものについては、次国会で提出して頂けることになっています。ご協力いただ いた方々にこころより感謝致します。 請願提出数 衆議院 465名 参議院 870名 紹介議員となって頂いた議員の方々(敬称略) 衆議院議員:辻元清美、土井たか子、中川智子、濱田建一 保坂展人、管直人、大野由利子、佐々木秀典 参議院議員:大脇雅子、山田俊昭、栗原君子、島袋宗康 清水澄子、山口哲夫 ●平成9年度総会開催 県民の会として初めての総会は、第2回シンポジウムの午前中に同じ会場で行 いました。約30名の方に参加していただきました。詳細は同封の議事録を参照し て下さい。不慣れで準備不足の感が否めませんが、志を新たにすることが出来た と思います。総会のあり方については、今後検討を重ねて、より会員のみなさん の参加や意志表示を促す内容にしたいと思います。 ●第2回シンポジウム開催 5月25日熊本市の大江市民センターで「巨大なムダ川辺川ダムは誰のため」と題 して、約150名の方にご参加頂きました。約3時間半近くにわたるシンポジウムと なりましたが、途中で退場される方も少なく、内容の充実したシンポジウムとな りました。報道では100名とされていましたが、椅子を並べたメンバーのカウント では150名以上との事でした。 特別講演をお願いした星野村村長の松永雅男氏の講演は、時折ユーモアをはさ み非常に軽快なテンポで村のダム反対運動の歴史を紹介して頂きました。日本で 唯一建設省にダム建設のつけいる隙を与えない村と呼ばれています。「ダムはと にかく駄目!」の一点張りで自治体住民が一丸となって意志表示を続けた成果で あると感じました。 パネルディスカッションでは、それぞれの専門分野から示唆に富んだ発言がな され、会場からの質問も相次いで非常に熱気あるシンポジウムとなりました。竹 中弁護士は絶妙な進行の合間に工事差し止め訴訟の可能性について触れ、地質学 者である松本幡郎先生の、「人間の驕りかならずしっぺ返しを食らう」という言 葉も強く印象に残りました。利水裁判の原告団長である梅山さんは「負ける理由 がない」この行政訴訟の本質を民主主義の観点から明快に述べられました。 参加された方からは、「公共事業の問題点、国のシステムの問題点が明らかに なった。それは(日本が)『民主主義の国になっていない』事だ。」との感想が 寄せられましたし、また、「何かしたい。手伝えることはありませんか。」とい う若い男性の発言にも大きく勇気づけられました。今後に向けての反省点として は、もっとわかりやすい、子供がこれるようなシンポジウムをやろう。という声 が大きかったように思います。より多くの人たちに来てもらい満足して帰っても らえる様なシンポジウムに次回も取り組みたいと考えています。 ●諌早湾干潟救済行動へメンバーが参加 事務局メンバーら5名が5月31日に諌早湾で行われた海上デモ&国会議員リレー トークに参加しました。参加したメンバーは一様に干拓規模の大きさに驚いたと いう事です。諌早干拓事業も川辺川ダム事業も構造は同じであると言えます。県 民の会としても出来るだけ干潟救済活動を支援していきます。 諌早のスタッフの方に大変親切にして頂きました。川辺川の事をアピールする 機会もあり、参加した環境派国会議員に資料を渡すこともできました。諌早湾で 高まった大規模公共事業への国民の疑問を川辺川ダム事業にもぶつけましょう。 諌早干潟が生き返る事を切に希望します。 ●民主党熊本、第2回定期大会で工事の見直しに言及 5月24日、民主党熊本の第2回定期大会開かれ、田中昭一代表(前社民党衆院議 員)は、川辺川ダムについて、工事の見直しを含めて取り組む姿勢を明らかにし ました。県民の会運営委員の原豊典さんも来賓として出席、「熊本の財産を守る ため、ダム建設を止めさせる活動を開始して頂きたい」と要望しました。田中代 表は、党本部にも要請して現地調査をする考えを明らかにしました。 ●地元選出の矢上議員がダム事業見直しを建設省へ要請 人吉市・球磨郡を含む熊本5区より選出された衆議院議員矢上雅義氏が6月9日 「川辺川ダム事業計画の見直し」を表明しました。県庁での記者会見の後、川辺 川工事事務所へ出向き、今後の対話を要望しました。地元紙熊本日日新聞は、こ の件について政治欄コラムで小さく報じただけですが、要望の内容は、川辺川ダ ムの規模を縮小(高さを1/2に。容積を1/4に)することで、余った予算をダム以 外の治水計画に振り向ける事を提言しています。 地元選出の唯一の国会議員が縮小であれダム見直しを表明した事は、世論の流 れが確実にダム見直しに動いている事実の証左であると言えます。先月の相良村 議選の結果が大きく国政レベルに影響を与え始めたとも言えるでしょう。今後の 矢上議員の議会活動に注目したいものです。 ●日本科学者会議熊本支部、今年度の活動方針に川辺川ダム問題を取り上げる。 5月10日に行われた日本科学者会議熊本支部総会において、今年度の活動方針に 川辺川ダム問題が盛り込まれました。「3.平和・民主主義・生活向上のため に」の三番目の項目として以下の決定が為されています。心強いニュースです。 水俣病訴訟は決着をみたが、水俣地域の再生はこれからも大きな課題であり、 引き続き取り組んでいきたい。また、川辺川ダム問題は正念場にさしかかってお り、環境アセスメントなど調査研究活動を通じて「川辺川を守る県民の会」と協 力していきたい。 ◆◆ 以下の話題はインターネット上での会の活動に関する項目です。インターネット をご利用でない方で、以下の項目に興味を持たれた方は、事務局までご連絡くだ さい。画面をプリントしてお送り致します。 ●毎日新聞のホームページに広報担当西田さんが川辺川情報連載 環境のページで、「西田陽子の 川辺川は、いま」と題して、連載を始めまし た。同じエリアに木頭村を応援しているまさのあつこさんのページもあります。 川辺川の名前が全国に広がる一つのきっかけになるでしょう。URLは以下の通りで す。 ◆http://www3.mainichi.co.jp/hensyuu/kankyo/index.html 同じく西田さんが3月に研修してきたInternational Rivers Network(国際河 川ネットワーク)という米国のNPOのホームページに川辺川ダム問題の紹介文が載 りました。英文でタイトルは"Finance Ministry: Millions Again in 1997 for t he Unnecessary Kawabe River Dam" となっています。 ◆http://www.irn.org/irn/programs/other/kawabe.html 英語で川辺川を紹介する場合にご利用下さい。 IRN連絡先 1847 Berkeley Way Berkeley, CA 94703 USA phone (510) 848-1155 fax (510) 848-1008 email: irnweb@irn.org ●会報をそのままインターネットで! PDFファイルという新しい形式で保存した会報(1号、2号)をインターネット 上で公開しています。AcrobatReaderという無料で配布されているビュアーを使っ て、ほぼ現物と同じイメージを画面上で読むことができます。検索、拡大縮小も 思いのままです。お試しください。 http://www.aminet.or.jp/~kawamoto/axera/axera.html ◆◆こんなことやりました。◆◆ ●5/11 利水裁判補助参加者集めに参加 11日は中島さん夫妻、土森さん、13日は大畑さんが熊本からの参加。人吉のメ ンバーに付いて農家を回り、裁判への補助参加を勧めて歩く。利水事業をめぐる 農家の実状を肌で感じる事が出来ました。 ●5/13 シンポジウム実行委員会 11名が参加して、シンポジウムの進行予定と役割分担決め。また川辺川工事事務 所への資料開示請求についての検討。 ●5/21 利水裁判第3回公判を傍聴 ●5/18 活き生きフェスタへ参加&下通りでビラ配り 熊本市郊外の秋津レークタウン内公園で開かれた活き活きフェスタ(講演はグ リンピース日本支部の松本泰子さん)でシンポのビラ配りや、国会請願署名集 め。またその後で市内アーケド街でのビラ配り。 ●5/25 総会・第2回シンポジウム開催 ●5/25 源流水リレーへ参加 早朝、川辺川と球磨川源流部から水をくみ、人力で下流の八代海まで運ぶとい うイベント(球磨川水系ネットワーク主催)へ事務局メンバーが参加。その様子 をシンポジウムで紹介。 ●5/26 代表が生協で会の活動を紹介 グリーンコープの集まりで代表の國徳さんが川辺川問題に関して説明&質疑応 答。 ●5/29 事務局会議 国会請願署名の分類整理作業を行いました。 ●5/31 諌早湾干潟救済行動へ参加。 ●6/1 八代の干潟を考えるウォッチングとシンポジウム へ参加 事務局から西田さん川部さん矢次さんが参加。山下弘文さんと八代干潟を見 る。 ●6/3 6月度運営委員会 シンポジウムの反省、今年後半の活動予定等。 ●6/6 事務局会議 川辺川源流行の詰め、機敏な対応に向けた事務局体制の見直し等。 ●6/9 川辺川現地調査会実行委員会へ参加 8月30日の具体的な見学ルートの設定、8月31日の討論集会のパネリストメンバ ー等について話し合いました。 ●6/10 事務局会議 仮排水路工事資料の開示再要請にむけての準備。 (ニュース欄で取り上げているものはタイトルだけ掲載しています。) ◆◆今後の活動予定◆◆ ●川辺川工事事務所との話し合い 前回の仮排水路トンネル工事に関する資料開示が不十分であった為、6月12日資 料の開示を再要請しました。また今後定期的に話し合いの場を持ちたいという申 し入れも同時に行っています。18日に工事事務所より何らかの回答を受け取る予 定です。仮排水路工事を監視するとともに、話し合いの場を持つことで私たちの 疑問点を直接、建設省に届けることになると思います。住民に対する誠実な情報 開示が行われる事を引き続き要望して行く予定です。 ●川辺川を知るための勉強会を実施します。 シンポジウム会場で、「もっと知りたい。勉強の場が欲しい。」という声を幾 度と無く伺いました。小規模でもいいから、自分たちの勉強も含めてリラックス した雰囲気の中で川やダムに関する基本的な問題について勉強&話しをしたい。 そんな声から生まれた勉強会の企画です。 さっそく7月3日に先の川辺川ダム審議委員会でも意見陳述された中島重旗先生 を講師としてお招きして川辺川と球磨川のお話を伺います。質疑応答の時間を多 めにとった学習会のスタイルにしたいと考えています。みなさんのご参加をお待 ちしています。(イベント案内参照) ●夏は川辺川へちょくちょく行きます。 川遊びするには、丁度いい季節となりました。川辺川の事を知ってもらうに は、飛び込んで泳いでしまうのが一番?です。まあ泳ぐのはちょっとという方に も楽しめて参考になる催しがいろいろあります。夏の川辺川を堪能しませんか。 (イベント案内参照) ●第3回シンポジウムに向けて 1回目2回目の実績を踏まえて、3回目はどーんと行こうという事で、11月末の 予定で現在計画を進めています。お楽しみに。またシンポジウムに対するご意見 も是非遠慮無く事務局にお寄せ下さい。 ●国会請願 次期国会にむけて請願活動は継続していきます。引き続きご協力をお願い致し ます。次期国会向けには様式を改めてお願いする予定です。国会請願は会期ごと に可能です。今回、請願署名して頂いた方も、再度署名して頂けます。 ●投書活動 新聞投書は手軽にできて、なおかつ世論形成への影響も少なくない有効な手段 です。ところが最近、投稿王緒方さんの投書を各紙なかなか取り上げてくれなく なったと聞いています。いろんな人が川辺川に関する新聞投書を実践する事で市 民が川辺川の事を知るきっかけになります。今月は事務局の西田さんが毎日新聞 と熊日新聞で、大畑さんが朝日新聞で投書デビューしました。次は誰がデビュー するのでしょうか。みなさんも是非どうぞ。 ◆◆その他の話題◆◆ ●緒方さんが通信開始!(パソコン通信の勧め) 手渡す会の投稿王と呼ばれた人吉市の緒方さん(運営委員)が、パソコン通信 を始められました。さっそくネットワーク上で情報発信を活発に初めておられま す。事務局でも電子メールを活用しています。FAXと並んで便利な情報交換の為の 道具です。県民の会の活動や、県外のダム?ゥ直しグループの声も毎日流れてきま す。みなさんも始めてみませんか?パソコン通信&インターネット。 ●熊本県保険医協会会報で川辺川特集予定 昨年は現地視察も実施した保険医協会の会報7月号で4名の方の川辺川にまつ わるエッセイが小杉邦夫さんの写真とともに特集されます。今後も引き続き川辺 川には注目していきたいとの事でした。 ◆◆事務局より◆◆ ●定期カンパ&継続入会お申し込みのお礼とお願い 前回のニューズレターでの呼びかけに応じて早速、定期カンパの申し込みを数 名の方々から頂きました。ありがとうございます。また年度が変わりましたので 会費のお振り込みもよろしくお願い致します。現在、郵便振替口座以外の入金口 座として銀行口座の開設を準備しています。 ●会員の皆さんへのFAXでの情報提供を試行します。 会員の方でFAXを持っている方に県民の会から会議の議事録などをお送りしま す。希望される方は事務局までご連絡ください。 ●総会&シンポジウムのビデオお貸しします。 御希望の方は事務局までご連絡ください。 ●事務局をお手伝い頂ける方いらっしゃいませんか。 運営委員会の度に、あれもやりたい、これもやりたい。といろんな貴重な意見 が出てきます。出来る事ならなんでもしたいのですが手が足りません。出来る範 囲で結構です。お手伝い頂ける方ご連絡ください。 ◆◆1号の誤植訂正◆◆ ●ニューズレタータイトルの会の名称に誤りがありました。 誤:子守歌 正: 子守唄 ◆◆編集後記◆◆ 月に一度発行するという目標を掲げてみましたが、現実は待ってくれません ね。どんどんいろんな事が起きます。ちょっと今回は盛りだくさんすぎたかも知 れません。もっと軽い話題もあって、会員のみなさんが相互交流を図れるニュー スレターになればと思います。相互交流といえば野外イベント。7月のイベント でお待ちしています。(川) |