子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
ニュースレター 第19号 2002年(平成14年)6月11日発行


■八代市に川辺川ダム反対派の市長が誕生
 前市長の汚職疑惑による辞職に伴い、4月7日に行われた八代市長選挙で川辺川ダム建設反対を掲げた無所属で前県議の中島隆利氏が初当選しました。これまで国土交通省はダム事業推進の理由として「流域首長の一致した要望」をあげていましたが、球磨川流域の八代市に川辺川ダム反対派の市長が誕生したことにより、その理由は崩れたことになります。
 中島新市長は市民との対話集会を開催し、市民の意見を汲み取る方針です。前市長の時とは違い、ダム問題に関する八代市民の意見が国土交通省や熊本県に伝わりやすくなったといえます。また、川辺川ダム建設の是非を問うための住民投票の実施もあり得るという考えを中島市長は示しています。ダム推進派の巻き返しや市議会対策など不透明な部分もありますが、いずれにせよ今後の川辺川ダム問題の展開において八代市の動きが大きな鍵となることは間違いありません。

■激闘続く漁民の闘い
 川辺川ダムの本体着工を阻止している漁民の闘いは熊本県収用委員会、漁協内部の推進派との攻防と漁協内外に渡っています。
 まず昨年12月の国土交通省の収用裁決申請を受けて熊本県収用委員会における審理が2月から始まりました。これまで2月、3月、5月と3回審理が行われました(4月は現地検証)。同省九州地方整備局や「漁業権者」とされる球磨川漁協のみならず、ダム反対派の漁協組合員や水害体験者、川辺川利水訴訟の原告、ラフティングガイドなど川に関わる多くの人の意見陳述が認められました。
 国土交通省側は従来の主張どおり、「平成元年の最高裁判例によると漁業権は漁協にある」という意見陳述を行っているのに対して、ダム反対派組合員側は「漁業権は関係する漁民集団が総有する権利で、漁協への収用補償はできない」、「各組合員には漁業を行使する権利がある」と主張しています。
 収用委員会の審理は、現在までのところ7月まで予定されています。前号でも述べたように漁業現場を混乱させる前例のない収用はやるべきでないし、できません。ただこれまでの審理を見る限り、どういう裁決が出されるのか全く予断を許さない状況です。
 球磨川漁協内部では昨年11月の臨時総会でのダム反対派の勝利以後、推進派の執行部は総会や総代会でダム建設を前提とする国交省との和解の補償契約を決議できるように多数派工作を始めました。八代部会では執行部が例年の約20倍にあたる389人の新規組合員の加入を承認しました。2月26日に人吉市で開催された通常総代会でこの新規組合員の問題について「部会の資格審査へ差し戻す」とする緊急動議が可決されましたが、執行部はそれを無視。反対派組合員は熊本県に漁協の業務検査を行うように要請したり、5月の総代選挙差し止め仮処分申請を行ったりしましたが、結局総代選挙を中止させることはできませんでした。
 しかし5月12日に行われたその総代選挙は結果的にダム反対派の勝利に終わりました。反対派の発表によると新総代100名のうち反対派総代は44人であり、推進派が総代会で補償契約決議に必要な3分の2以上(66名以上)の総代を確保することは極めて厳しくなりました。良識ある組合員の勝利です。現執行部はこれまでの混乱を引き起こした責任を取り、早く退陣して組合員の意思を反映する新しい執行部に生まれ変わるべきです。

■流域住民vs国土交通省、公開討論会第2ラウンド
 昨年12月の公開討論会に続いて、川辺川ダムの是非を論議する第二回「川辺川ダムを考える住民討論集会」(国土交通省主催)が2月24日、八代市で開催されました。テーマは第一回とは違い治水一本に絞られました。
 住民側は八代、人吉両地区でダムがなくても洪水防止は可能であること、国土交通省が主張する基本高水流量が森林の保水力を無視しており、過大であることを非常に分かりやすく主張しました。対する国土交通省は前回と同じように分かりづらい説明を繰り返しました。
 また住民側の疑問に答えずに、逆に森林の保水力の問題では時間延ばしとしか思えないような質問を何度も住民側に対し行いました。これは、基本高水流量は治水問題の論点の一つにしか過ぎず、住民側や会場参加者も治水問題全般にわたる討論を望んだにもかかわらず、それを無視し基本高水流量に論点を限定した熊本県の職員の進行のまずさにも起因するものです。
 過去2回の公開討論会を通して討論会自体の問題点も明らかになりました。一つは、一体この公開討論会での議論の勝敗は、誰がどういう基準で判断するのかということです。熊本県でしょうか?会場に居合わせた参加者でしょうか?熊本県はこの疑問に答えて欲しいと思います。
 もう一つは、利用できる費用やデータの面で住民側は圧倒的に不利だということです。国土交通省が過去2回の討論会に使った費用は1回目が約886万円、2回目が約1165万円です。住民側の費用は、それより遥かに小額でしかも全てカンパか手弁当でまかなわれています。データも住民側が国土交通省に開示請求している内、公開されたのは一部です。これでは住民側にとって、討論会の土俵に上がること自体が非常に不公平だといえます。

■ウソの同意を実証―川辺川利水訴訟現地尋問
 川辺川ダムの水はいらないとする国営川辺川土地改良事業をめぐる川辺川利水訴訟控訴審で、福岡高等裁判所(小林克己裁判長)は5月29日から31日までの間、人吉市や球磨郡の町村で現地視察や尋問を行いました。
 29日の視察では、小林裁判長ら裁判官3人と関係者ら約30人に対して、人吉市の農家が「水は十分足りている。いらない水を持ってくるのは税金の無駄遣い」と訴えました。
 5月30日、31日には、農家や同意署名を集めた町村職員への尋問が行われました。尋問を受けた農家全員が「(変更計画に)同意していない」と述べました。担当職員への尋問でも、約三十人の署名が代筆だったことが明らかになったということです。また代筆時、本人の同意を確認していないケースや白紙署名を集めたケースもあることが明らかになりました。原告弁護団によると、年内結審、年度内判決の道が開けたということです。

■県民はダム反対、国交省はダム建設を中止せよ
5月5日付けの熊本日日新聞の県民意識調査によると、川辺川ダム事業について、本体着工推進は8・9%にとどまり、計画とりやめ・工事見合わせを求める人が54・9%と半数を超えました。また国や熊本県の説明責任も「果たされていない」が48・1%で、「果たされている」を大きく上回り、早期着工をめざす国交省の方針に疑問を抱く人も多くいます。 これまでの新聞各紙が行った世論調査でも、川辺川ダム反対の数字が賛成のそれを大きく上回っています。
 折りしも国土交通省近畿地方整備局が計画していた和歌山県の紀伊丹生川ダム建設事業が中止されることが5月16日に明らかになりました。水需要の減少が主な理由とのことです。川辺川ダム事業においても、目的は破綻しています。建設目的が失われ、県民の多くが反対しているダム建設について、国交省はこれ以上の事業推進をするべきではありません。川辺川ダム事業の即時中止を国土交通省に求めていきましょう。

●「第3回川辺川ダムを考える住民討論集会」が6月23日(日)球磨郡相良村の相良村総合体育館で開催されます(詳細はイベントインフォメーションを参照)。
ここでは住民側が熊本県に提案している次回討論会での治水の論点について説明します。

 川辺川ダムの是非を論じる住民討論会は、潮谷義子熊本県知事がダム建設に対する行政の説明責任を果たす場として設けたものである。しかし、これまでの討論会では、ダム事業への住民の疑問に対して国の明確な回答は行われず、逆に国は住民側に質問を繰り返し討論会の時間を浪費している。
 私たちは、知れば知るほど多くの疑問が生じる。国土交通省が、討論会に必要なデータさえも公開しようとしないのは、治水にもダムが不要だということを分かっているからであろう。
 熊本県は論点の整理を行っているようだが、住民の疑問に答えるという原点に立ち返れば論点は明快だ。

1.費用対効果
 八代地区では川辺川ダムなしでも完全に治水可能という事実が明らかになった。川辺川ダムの洪水調節によって八代地区の1700億円の被害軽減効果が意味を持たなくなった。これにより、川辺川ダム事業の費用対効果は1を大きく下回るが、なぜ事業の継続が可能なのか?これまで費用対効果が1を割って継続されたダム事業はない。国土交通省は明確な回答を迫られている。

2.人吉地区の流下能力
 国土交通省が計画している河川改修工事(計画河道の整備)を実施したら、人吉地区ではどれだけの洪水が流れるのか。住民グループの検証では、80年に1度の計画規模の洪水が流下可能という結果が出ている。計画通りの河川整備を行うだけで、計画規模の洪水が流せるのであれば、すべてを破壊する重大な過ちを犯す前に立ち止まらなければならない。速やかな情報の公開が必要だ。

3.代替案
 国土交通省の代替案ですら、適切な値に見直しすればダムより事業費は安くなる。代替案の可能性について、誠実に検証すべきである。

4.超過洪水
 ダムに頼った治水対策は、計画以上の洪水(超過洪水)によって大きな被害をもたらす。住民に対しダムのデメリットを正確に説明する責任が国にはあるのだ。国土交通省は、この超過洪水の問題に触れることを恐れているが、造りさえすれば後のことは知らないという無責任な態度を改め、人間として真摯な態度で物事に対処することを学ぶべきだ。

5.河川整備計画*
 国土交通省が法律(河川法)で義務づけられた新しい河川行政の制度を球磨川水系に取り入れないのは何故か?この作業が遅れている理由をきちんと説明しなければならない。河川整備基本方針及び河川整備計画を策定し、その中で情報公開と住民参加のもとに今後の川づくりを議論すべきなのだ。討論会で膨大な税金を使って住民と対立するのではなく、住民の求めているものを汲み取り、施策に反映する努力を惜しむべきではない。
 治水というひとつのテーマだけでもこのように多くの疑問が解決されない。すでに国が誤魔化しきれないところまで住民が迫っているのだ。住民の疑問に答えるという討論会の出発点に戻り、国は討論会において誠実な対応を行って欲しい。傍聴する住民の中に国への不信感が募るような対応は、もう止めるべきだ。

*河川整備計画
平成9年の河川法改正で河川工事を実施するためには、河川整備計画を策定し、
それに盛り込まれた事業しか実施できなくなった。ダムも例外ではない。
                     (県民の会 仲山隆一)

■ビデオ紹介―「ダムの水は、いらん!」がグランプリを受賞

 相良村在住の映像作家であり、川辺川を守る運動の仲間でもある佐藤亮一さん(自営業)のビデオ作品「ダムの水は、いらん!」が、「東京ビデオフェスティバル2002*」においてグランプリ(最優秀作品)に輝きました。
 ここ数年、川辺川の映像をビデオやインターネットで配信してきた佐藤さんの作品を目にした事のある方は数多いと思いますが、この作品は川辺川利水訴訟の控訴審において証拠として作成されたビデオ(福岡高裁の大法廷で上映されました)をリメイクして応募作品にしたものです。川辺川の美しさと今そこにある現実の問題がストレートに伝わってきます。
 審査員各氏から「このビデオは多くの人に見てもらって力を発揮するべき」という声が出ました。特に大林宣彦氏や椎名誠氏はビデオの装丁にも言葉を寄せています。このビデオ(約20分)は既に1000本以上実費で配布されていますが、県民の会でも配布を行っています。是非、この機会にお手元に一本おいて皆さんの周りにご紹介下さい。特に川辺川に行ったことのない方にこの川の美しさを実感して頂くには最適です。

【ビデオ注文方法】
郵便振替で以下の口座にビデオ代1890円(1本1,500円+送料390円)を振り込んでください。
口座番号:01940-8-13454
加入者名:川辺川を守る県民の会
※必ず通信欄に「ビデオ希望」とお書き添えください。

*「東京ビデオフェスティバル2002」
1978年にスタートした、日本ビクター(株)が主催する国際的なビデオコ
ンテストです。プロ・アマを問わない国際的なビデオの祭典として歴史を重ね、
これまで世界84の国と地域から、32,000点以上の作品が寄せられています。
2002年の応募作は世界43カ国、2270点のぼり、去る3月21日恵比寿ザ・ガーデ
ンホールにおける表彰式でグランプリが発表されました。その時の様子を東京
の会の高橋ユリカさんが今号でレポートされています。是非ご一読下さい。

■イベント・行動レポート

●福岡から川辺川を考えるシンポジウム

 2月16日、福岡市中央区の「ふくふくプラザ」で、福岡の会の若者たちが企画
した「今なぜ川辺川ダム?福岡から川辺川を考えるシンポジウム」がありました。
 川辺川ダム計画の概要や問題点をまとめたビデオを上映した後、現地からの報
告として、川辺川利水訴訟原告団長の梅山究氏、川辺川・球磨川を守る漁民有
志の会代表の吉村勝徳氏、球磨川大水害体験者の会事務局長の重松隆敏氏、
子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会事務局の川本正道氏の4氏
から地元の「生の声」をお聞きし、その後パネルディスカッションとなりました。
 会場からは福岡でも出来る清流・川辺川を守る活動についての提案やアイデア
が飛び交い、五木の支援などについても皆さんで考えてもらいました。
 いろんな心配がありましたが、蓋を開けてみると大成功!会場には110名を超え
る参加者が集まり、多額のカンパが集まりました。
 パネラーをはじめ多くの方のご協力で、無事シンポジウムは終了しました。ありが
とうございました。次回のシンポジウムは7月13日(土)を予定しています。
                  (福岡の会 松原学)

砂に埋もれる村 〜RWESA会議報告と海外のダム建設の現状〜

 アメリカのNPOであるInternational Rivers Networkが呼びかけ、2000年にタイのコンジアムでアジアのダム問題NGO国際会議が開かれ、RWESA(Rivers Watch East and Southeast Asia)という国際ネットワークが結成された。今年2月20日から2月23日にかけて、RWESA2回目の国際会議を開くということで、「日本を代表するダム問題である辺川の報告をして欲しい」と声がかかり、日本からの参加者3名と一緒にフィリピンでの会議に参加した。
 フィリピン第二の都市であるバギオで開かれた会議には11カ国から約80名が参加 し、3日間連日連夜、ほとんど外に出ることなく会議が続いた。私も川辺川ダム問題で漁業権などが国土交通省により強制収用されようとしていることをアピールし、川辺川ダム、徳山ダム、苫田ダムの強制収用反対の署名には10を超える国から63人が名前を連ねてくれた。
 しかしながら、悲しいことにこの手の会議に出席する度に日本人として恥ずかしい思いをしなければならない。日本の場合は国民の税金とは言え、自国の金でダムを建設し、環境や地域社会を破壊している。自分で自分を壊しているようなものだ。一方フィリピンなどの発展途上国は、日本のODA(政府開発援助)資金でダムが造られ、貧しい人々は長年住み慣れた場所を追われ、不便な生活を強いられ、生活環境も河川環境をも壊され続けているのだ。そのような事例がいくつも会議であげられる度に日本人の行いを恥じ、また歯がゆく思った。
 その思いは3日間の会議を終えて、4日目に行ったフィールドトリップの旅先でより一層重い塊となって胸にのしかかった。私たちが訪れたのは、サンロケダムが完成すれば移転を余儀なくされるダンプラップ村だった。村には棚田が広がり、カラバオ(水牛)が日陰でくつろぎ、鶏が放し飼いにされ、豚が養われ、家の裏手には魚が養殖されていた。その風景は「古きよき日本」を思い起こさせ、なんだか懐かしい気分になった。村人はほとんど自給自足の生活をしながら、川で砂金を取ることでわずかばかりの現金収入を得ている。家の中には必要最小限の家具と物。川には裸で元気に泳ぐ子ども達。一見平和そうなこの村も、下流に建設中のサンロケダムができれば堆砂で埋もれてしまうことになる。既に上流にはダムがあり、そのダム上流の村はダムで土砂をせき止めることにより深刻な堆砂が発生し、それは長さ18km、深いころでは深さ50mにも達するという。砂が家も畑も飲み込んでしまったのだ。ダムがきれば、ダンプラップ村の豊かな田んぼや畑や家が砂に埋まり、魚も捕れなくなり、金も採れなくなる。村人は生活の糧を全て奪われることになる。それがわかりきってるので、現在、村人は命をかけてダムに反対している。
 「そんなこと言っても、ダムによる発電で電気が来ると便利な生活ができるじゃないの?」と思う人もいるかもしれない。しかし、サンロケダムで発電を行うサンロケパワーコーポレーションには、日本の丸紅が42%、関西電力が8%、アメリカの企業が50%を出資している。ダム建設資金はほとんど日本国際開発協力銀行を通して出資される日本のODA資金(=もとは私たち日本国民の税金)である。発電した電気は貧しい人たちのところに行くわけではなく、富める人のところにしか行かない。
技術指導という名目で日本の会社が儲かる。発電によって日本の電力会社も儲かる。「政府開発援助(ODA)」と言うと、表向きの響きはいいかもしれないが、結局はフィリピンの自然環境を破壊して「富」を搾取しているだけにすぎない。私たち日本国民の税金が投入されている以上、私たちも無関心でいるわけにはいかない。これからも私たちは、国内のダム問題だけでなく、海外で日本のお金を投じて「開発援助」の名の下に行われている悪行を監視していかなければならないと強く思ったフィリピンの旅だった。
                          (県民の会 西田陽子)

●「川辺川」ますますの全国化〜知名度大躍進!

 東京の会がスタートした98年、「川辺川」がどこにあるかを知る人は、東京にはほとんどいなかったのではないでしょうか。
 でも、今年とうとう「川辺川」はブレイク!わたしの身の回りでも、環境問題に関わる人だけではなく、クリーニング屋さん、歯医者さんからも「テレビでやってたね。きれいだね〜」なんて話題がでるようになりました。NHK、フジテレビ、テレビ朝日の「ニュース・ステーション」など全国区のマスコミでとりあげられる機会が増えたということですね。「漁業権の強制収用」という悪名高い話題に負うところも大きいと思いますが、いまや、「川辺川ダム」は、無駄な公共事業の象徴という地位をしっかり築き上げて、全国から注目の的。国交省も、へたな行動が許されないところに来ているという覚悟をもってもらいたいものです。
 ブレイクにさらに拍車をかけて下さったのが、3月21日、佐藤キョショーの「東京ビデオフェスティバル」大賞受賞です。
 おしゃれな街として知られる恵比寿の、しかも東京きっての文化的ス
ポット「恵比寿ガーデンプレイス」での表彰式。出席なさった佐藤亮一
さんが、人吉でお見かけするのとまったく同じスタイルでいらしてほん
とに感動しました(サンダルは新調されたそうです)。わたしたちが誇る
「川辺川」と佐藤キョショー!
 日本ビクターという私企業が、国策である「川辺川ダム」に反対するためのビデオ作品に大賞を授与した背後には、首脳陣の迷いと議論があったとのこと。審査委員の大林宣彦監督は、堂々と「大賞授与ということは、審査委員全員がビデオのポリシー、川辺川ダム反対を支持するということです。このフェスティバルはビデオのNGOです」と高らかに語って、裁判のために作られたビデオに大賞をくださったことに胸が熱くなりました。わざわざ椎名誠さんと野田知佑さんの川辺川をめぐる対談まであって、まるで授賞式が川辺川のためにあるかのようでした。
 ビデオは佐藤さんお得意の美しい川辺川が印象的。そして、人吉の緒方紀郎さんが撮っておいたという役場の人とのやりとりの記録映像が圧倒的な存在感。動かぬ証拠としてビデオの力を見せ付けていました。
 ベスト30本に選ばれたということで佐藤さんが授賞式に出席のため上京。前夜に東京の会でお祝い会をしたのですが、さすがに大賞とは予想できず、翌日、授賞式会場で選考発表が進むにつれ、佐藤さん、東京の会の渡辺誠さん、わたしは胸がばくばく状態〜。その後のパーティ+お祝い会には東京の会の他のメンバーがかけつけ、ダム中止に向けて、さらなる絆が深まった一晩でした。
          (東京の会 高橋ユリカ)

●リバーミーティング 〜日本一の清流川辺川と友達になる2日間〜

 ゴールデンウィーク恒例となった「リバーミーティング」が今年もパドラー(カヌー愛好家)が中心となって開催されました。一日目の5月4日は朝からあいにくの雨にもかかわらず、大勢のパドラーが川辺川に集まり、約40名が30艇程のカヌーでゴミを回収、同じように陸でもゴミ拾いが繰り広げられ、回収されたゴミは300kgにもなりました。夜には約100名が川辺川の河原に集まり、川への思いを語り合い、大いに盛り上がりました。
 二日目の5月5日は快晴に恵まれ、リバートレッキング(川下り)には約50名の参加があり、カヌーが足りなくなるほどの大盛況ぶりでした。その後は下球磨・葦北川漁師組合が稚鮎の放流を用意してくれていて、大人も子どもも「大きく育ってね」と願いを込めて小さな鮎たちを川に放しました。
                (参加者からの聞き取りを元に編集・構成)

●潮谷知事講義傍聴記in京都

 全国の知事にそれぞれの地方行政を語ってもらうという京都・立命館大学の「全国知事リレー講義」に、5月14日、熊本県の潮谷義子知事が登壇され、関西の会数人で行ってきました。
 大教室は学生でいっぱいで、講義は、潮谷知事の県民重視・福祉重視・環境重視の姿勢がとてもよく伝わってくるものでした。
 その中で、「知事への直行便」はすべて知事本人が目を通している―たとえば今日ここで講義をすると知った京都の学生さんから「川辺川ダムのことについて話してほしい」というメールをいただきました、ちゃんと読んでいるんですよ―と発言されました。
 さらに、講義が終わる数分前になって、学生さんからのメールに答える形で、川辺川ダムについてもコメントされました。川辺川ダム計画は発表から35年近くたって、今、本体着工直前という状態になっているが、流域市町村の中からダム計画見直しを明言する市長も現れたし、流域の命と財産を守る方法が本当にダムなのかどうかということについて国も熊本県も説明責任を果たしてきたのか疑問がある―このようなことからもダムをつくるかどうかは予断を許さない。これからも住民討論会を継続していくし五木・相良の二村の振興策はダムにかかわりなく力を入れていく。このようにダム問題に真剣に取り組んでいくことを力説されて講義は終わりました。
 ダムありきではなく、あくまでも県民の総意を汲み取っていこうとする真剣な姿勢が伝わってくる京都での講義でした。
           (関西の会 柳原哲郎)

■県民の会の総会を開きます

 今年はシンポジウムを同時開催することにしました。住民討論集会で国土
交通省を追い詰めている治水代替案の説明を受け、危機に瀕している県財政
の問題を掘り下げ、さらにアジア各地で起きているダム問題についても考えます。
 ホットな情報が盛りだくさんの総会&シンポジウム、ぜひお越しください。

 日時:6月29日(土)17:45〜21:00
 場所:くまもと県民交流館パレア 会議室1
    (熊本市手取本町8−9 TEL:096-355-4300 4月にオープンした
     テトリア熊本の9階です)
 資料代:500円
    開場 17:30
    総会 17:45〜18:45
     ・今年度活動計画及び予算案の審議など
    シンポジウム 19:00〜21:00
     「ダムと財政破綻、ダムの水で火の車!」 
     ・治水代替案とは 研究者グループ
     ・逼迫する熊本県財政 青木秀和さん(財政問題研究者)
     ・ODAとアジアのダム問題 寺嶋悠さん(川辺川を守る福岡の会/
                     債務と貧困を考えるジュビリー九州)

■イベントインフォメーション

第3回川辺川ダムを考える住民討論集会
 期日:6月22日(土)現地視察
     6月23日(日)討論集会
 現地視察:
  日時:6月22日(土)10:00〜
  視察場所:八代市萩原堤防、人吉市繊月大橋付近、水の手橋付近、深田村古町橋付近、
       免田町北吉井付近、錦町一武平岩、錦町木綿葉大橋付近
  視察行程:八代市萩原堤防からスタート(10:00)
   *詳細なスケジュールについては、後日、熊本県が案を作成して提示。
  説明方法、説明時間:調査地点一箇所ごとに双方5〜10分を原則とし、質疑の時間は
   全体の進行状況の中で県が調整。
 討論集会:
  日時:6月23日(日)12:30〜17:50
  場所:相良村総合体育館(球磨郡相良村深水2500番地の1)
  討論テーマ:治水
  内容:専門家討論、一般質問
 主催:国土交通省
 問合せ:熊本県企画振興部企画課川辺川ダム総合対策室 横井、緒方
        (TEL:096-383-1111内線3537)
 *天候次第で現地視察、討論集会とも延期される可能性があります。
  当日の報道発表にご注意ください。
熊本県収用委員会
 日時:6月25日(火)13:30
 場所:メルパルク熊本(熊本市水道町15-11,TEL:096-355-6311)
 問合せ:毛利(090-8834-1533)
講演会「森と海をつなぐもの」
 日時:6月30日(日)13:00開演
 場所:八代市厚生会館(八代市西松江城町1-47、Tel:0965-32-3196)
 出演:天野礼子,C.W.ニコル
 参加費:1,000円
 主催:美しい球磨川を守る市民の会
 問合せ:出水(TEL:0965-32-2261)
田中康夫長野県知事に聞く「これからの地域づくり」講演会
 日時:7月7日(日)13:00
 場所:錦勤労者体育センター(球磨郡錦町一武1930、TEL:0966-38-4450錦町教
 育委員会)
 資料代:500円
 主催:「これからの地域づくり」講演会実行委員会
 問合せ:中沢(TEL:0966-22-1765)
原生林保護集会講演会「緑のダムを考える」
 日時:7月14日(日)13:30
 場所:やつしろハーモニーホール・多目的ホール
     (八代市新町4-1、TEL:0965-53-0033)
 講演:中根周歩(なかねかねゆき、広島大学教授、森林生態学専攻)
 入場:無料 
 主催・問合せ:脊梁の原生林を守る連絡協議会(TEL:096-344-2050)
川辺川利水訴訟控訴審第6回口頭弁論
 日時:7月19日(金)13:30
 場所:福岡高等裁判所(福岡市営地下鉄赤坂駅下車徒歩10分)
 内容:弁護団・森徳和弁護士に対する証人尋問
 問合せ:利水訴訟原告団(TEL:0966-24-4844)、松原(TEL:092-623-1765)
第6回川辺川現地調査
 期日:8月31日(土)現地調査
    9月1日(日)シンポジウム「公共事業と住民の意思」
 日程:
  8月31日(土)11:00参加者受付(柳瀬農業構造改善センター)
         13:00開会式、日程、諸注意等説明
         13:30出発(見学コースは六角水路、高原台地、五木村頭地代替地、
              子守唄公園、ダムサイト予定地)
         18:30大交流会(権現河原)
         21:00閉会
  9月1日(日) 9:00受付(会場は相良村総合体育館を予定)
          9:30開会
         12:00閉会
 費用:参加費2500円(含む資料代)、交流会費2500円、民泊2000円
 主催・問合せ:川辺川現地調査実行委員会(TEL:0966-24-4844)