子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
ニュースレター 第15号 平成12年(2000年)11月21日発行





■12月3日川辺川大集会に全員集合!
 いまや川辺川ダム問題は国会でも取り上げられるほどの国政問題となっています。
これは建設見直しを求める漁民、農民、市民の活動とそれに呼応して広がってきた世
論によるものです。これに対して、追いつめられた建設省は何が何でも今年度の本体
着工を目指して、さまざまな手段を講じてきています。
 現地ではさる11月3日「川辺川ダム建設阻止11・3集会」が相良村総合体育館
にて開催され、鳩山由紀夫代表をはじめとする民主党国会議員も交え700人の参加
者で、大成功を収めました。この集会では野党第一党までもが建設中止を求めて行動
するということが公式の場で明らかにされました。
 現地では、引き続きダム建設中止を求めての企画が予定されています。12月3日
(日)、相良村総合体育館で開催される「川辺川大集会」です(同封チラシ参照)。
これは、ダムに反対している漁民を励まし、農民・漁民・市民の枠を超え、地元から
皆でダム建設に対してNOをアピールしていくためのものです。
 集会では、全国からさまざまな立場の人に集まってもらい、川辺川への思いやダム
建設への怒りをそれぞれの方法で表現してもらう予定です。
 県民の会では、この集会に合わせて現地ミニツアーを企画しています。まだ川辺川
を目にしたことのない会員の皆さんも、既に何度も清流を体験された方も、この機会
に是非、川辺川大集会に参加されますようお願いいたします。

■川辺川利水訴訟、不当判決に原告農家の9割が控訴
 「川辺川ダムからの水は要らぬ」と農水大臣を相手に熊本地裁で争われた川辺川利
水訴訟は、9月8日に熊本地方裁判所で判決が出されました。農水省のずさんな同意取
得の実態が明らかになったにもかかわらず原告農家側の敗訴に終わりました。
 判決は、事業の必要性については判断を避け、事業への同意取得が適正に行われた
かについては詐欺まがいの行為が裁判の中で明らかにされましたが、「全体的には問
題はない」としています。さらに同意取得数では、「土地改良法で定める対象農家の
3分の2以上の同意がある」としながら、対象農家と認めた原告と補助参加者の合計(
裁判所が認めた事業への反対者)は40.52%となっており、大きな矛盾をはらんでい
ます。
 判決は原告側の主張を一部取り込みながらも、全体的には国の主張に追随しており、
行政に対するチェック機能を果たしておらず、司法の自殺ともいうべきものです。
 判決当日、上京した原告団弁護団は農水省に赴き、この利水事業の最高責任者とも
言える渡辺好明構造改善局長と面会し、利水事業の中止を求めました。それに対して、
渡辺局長はなんと「だまされて判子を押したほうが悪い」。また事業についてアンケ
ートをとって農家の意向を確認したらどうかという申し出に対して、「現時点でアン
ケートをとれば、事業を進めるにあたって不都合な結果がでるのでアンケートはとら
ない」と言い放つ始末でした。
 このような不当判決、農水省の体質に対して、原告団は怒りを新たにしました。
判決当日の東京での報告集会、9月10日の人吉での報告集会を経て、原告の皆さん
は控訴へと決意を固めていきました。
 控訴期間の2週間足らずの間に、地元では私たち市民団体の協力を得ながら、控訴
の署名集めのため800名以上の原告農家の自宅訪問や地区集会が行われました。
最終的には一審判決時の原告数862名の約9割にあたる760名の農家が9月22
日、第二審に控訴しました。
 この間、不当判決に怒る多くの声が日本全国から沸き起こりました。これは農家の
人が訴えてきた主張の正しさが、多くの人を納得させ共感を呼んだからに他なりませ
ん。
 舞台は福岡高裁へと移りますが、公共事業や農業・農政のあり方を問う利水訴訟を
わたしたちは今後も支援していきたいと思います。


■川辺川をめぐる動き(2000.8月〜11月)

8.22 公共事業チェック議員の会、川辺川ダム利水問題ヒアリング(東京)。
8.25 県民の会、熊本県漁政課に球磨川漁協対応に対する抗議。熊本県知事に川辺川
ダムと県財政に関する質問書提出。
8.25 建設省、来年度予算概算要求に、本年度中の本体着工を前提に川辺川ダムの建
設費として151億円を予算要求。
8.26,27 第4回清流・川辺川現地調査。県内外から約350名(最終的には約430名)が
参加。
8.29 球磨川漁協組合員アンケート、ダム反対が過半数。
8.31 川辺川利水訴訟原告団、九州農政局を訪れ「土地改良事業の変更計画中止を求
める要求書」と9233人分の署名簿提出。熊本地裁に「公正な判決を求める署名」6725
人分を提出。裁判官への署名者は合計21246人に。
8.31 日本洞窟学会、川辺川ダムによって水没する九折瀬洞窟を守るため「洞窟保全
・保護委員会」の設立準備に着手。
9.1 球磨川漁協臨時総代会で理事・監事全員の解任と補償交渉委員会の設置を決議。
9.3 (財)日本自然保護協会、川辺川のアユを一年間かけて調査することを発表。
9.4 利水訴訟原告団、漁民有志の会、県民の会、市民の会など、熊本県庁を訪れ、
潮谷知事に面会申し入れ。
9.5 潮谷熊本県知事、川辺川ダム予定地視察。
9.5 川辺川ダム事業費の熊本県負担分が派生事業を含めると880億円になること
が判明。
9.7 川辺川利水訴訟、判決前夜集会。
9.8 川辺川利水訴訟、原告に不当判決。原告団は上京し、農水省構造改善局渡辺好
明局長に面会。「たとえ騙し討ちであろうと、署名をしたほうが悪い」と局長発言。
9.10 川辺川利水訴訟、現地報告集会。
9.22 川辺川利水訴訟原告760人(4年前に提訴した866人のうち約9割)が「
一審判決は不当」と福岡高裁に控訴。
9.27 球磨川漁協ダム反対派総代ら、9月1日の臨時総代会の議決取り消し処分を潮
谷義子熊本県知事に請求。
9.27 県民の会、漁政課に質問書提出。
9.29 球磨川漁協臨時総代会、ダム容認派が新役員の大半を占める。
9.29まで 建設省川辺川工事事務所、土地収用法(漁業権も含む)に基づく事業認定
を建設大臣に申請。
10.4 球磨川漁協理事会、「事業認定申請に納得いかない」として川辺川工事事務所
に抗議。
10.6 川辺川のクマタカ調査で、熊本県クマタカ調査グループと建設省が調査データ交換。
10.6 川辺川・球磨川を守る漁民有志の会、事業認定申請に対して川辺川工事事務所
に抗議。
10.10 球磨川漁協理事会、建設省との漁業補償交渉を10月中にも始めると表明。
10.10 県民の会、事業認定申請に対して九州地方建設局と川辺川工事事務所に抗議。
10.11 県民の会などで構成する川辺川ダム環境保全報告書検証会、163団体の連名
で川辺川工事事務所に川辺川ダム事業における環境影響調査のやりなおし」を要求。
10.11-25 五木・相良両村役場で川辺川ダム事業認定申請書の公告・縦覧。
10.15 県民の会、ストップ・ザ・川辺川ダム大パレード。
10.15 自然観察指導員熊本県連絡会、五木村の九折瀬洞窟で特殊な鍾乳石。ムーンミ
ルクを確認。
10.15 川辺川・球磨川を守る漁民有志の会、八代支部を結成。
10.23 球磨川漁協木下東也組合長ら、九地建に事業申請認定へ抗議申し入れ。
10.24 球磨川漁協理事会、漁業補償交渉委員会を設置。
10.27 球磨川漁協ダム反対派、理事会に早急に総会を開くよう申し入れ。
10.29 県民の会、川辺川ダムに環境アセスメントを求める街頭署名活動。
10.29 川辺川・球磨川を守る漁民有志の会八代支部、ダム反対署名活動を開始。
10.29 福岡の会「びおふぇすた・2000」に参加。環境アセス署名活動と 川辺川
のアユを販売で清流・川辺川をアピール。
10.30 川辺川ダム建設促進協議会(会長・福永浩介人吉市長)と球磨川上中流改修期
成会、九地建に川辺川ダムの建設促進などを要望。
11.2 球磨川漁協ダム反対派、「9月1日の臨時総代会決議の取り消し」「全組合員
の委任のない補償交渉の拒否」「川辺川ダム反対の決議」を議題とする臨時総会の開
催を漁協に請求。
11.3 民主党代表鳩山氏他8人の国会議員、川辺川を現地調査。市民団体主催の「1
1・3集会」(約700名参加)で鳩山代表「川辺川ダムは中止すべき」と発言。
11.3-12 熊本大学、熊本県立大学、崇城大学などの学園祭で川辺川ダム問題の展示な
ど相次ぐ。
11.4〜5 八代市で有明海・不知火海フォーラム。川辺川ダムが不知火海などの干潟に
与える影響も取り上げられる。
11.6 県民の会の有志など、川辺川ダム基本計画変更に対する異議申し立て却下処分
の取り消しを求め、熊本地裁に提訴。
11.6 球磨川漁協、建設省と初めての漁業補償交渉のテーブルに。
11.17〜19 森と自然を守る全国集会(新潟県村上市)分科会で川辺川ダム問題の報告
(東京の会・渡辺)。


■アユ漁を守れ!ダム反対派漁民はますます元気!
 8月29日、球磨川漁協は全組合員を対象にして初めて実施した川辺川ダム問題につい
てのアンケートの集計結果を発表しました。それによると川辺川ダム反対票611、
賛成票420で、反対票が賛成票を大きく上回りました。建設省との補償交渉につい
ても「応ずるべきでない」が「応ずるべきでない」を上回っています。
 ところが、9月1日に開催された臨時総代会では、組合員の総意は無視されたまま、
理事・監事全員の解任と補償交渉委員会の設置が決議されました。
 地元ではこの間、ダム反対派漁民の皆さんが一戸一戸漁民の自宅訪問を行い、ダム
がアユ漁に与える害を説いて回っています。アユ漁を守りたいという漁民の意志は、
10月15日「川辺川・球磨川を守る漁民有志の会」八代支部の結成にも表れました。
 このような漁民の動きに焦った建設省川辺川工事事務所は9月29日までに土地収
用法に基づく事業認定を建設大臣に申請したことを明らかにしました。これは漁業権
も含め強制収用を行いたいという建設省の意思表示に他なりません。このような前近
代的な強行手段を持ち出す建設省の姿勢には強い怒りを禁じ得ません。しかし、この
ことは逆に建設省自身が追いつめられているということの裏返しに他なりません。な
ぜなら漁業権の収用は法的には不可能であり、強制収用の手続きは2年ほどかかると
言われているからです。
 建設省の真の狙いは、強制収用をちらつかせることで漁協内の推進派の動きを早め、
漁業補償交渉を締結して年度内に何とか本体着工にこぎつけるということでしかあり
ません。
 漁業補償交渉の締結には、水産庁も認めているように漁業権を有する流域漁民一人
一人の同意が必要です。逆に言えば漁民一人でも漁業補償交渉締結に同意しなければ、
ダム建設は不可能ということです。このことを良く理解されているダム反対派漁民の
皆さんは、建設省の恫喝にも屈せず今日も漁民回りにでかけ、アユ漁と漁業権を守る
ことの重要性を訴えています。
 県民の会ではこれまで、いろんな形でダム反対派漁民の皆さんを応援をしてきまし
た。今後も、ますます元気な漁民の皆さんを応援していきたいと思います。


  ■球磨川・川辺川をダメにする漁協内部の腐敗■
   〜密室の会議   組合員の声が届かない補償交渉〜

 川辺川ダム建設に反対する過半数の組合員の声は無視されながらも、8月31日までの
球磨川漁協の役員会は組合員やマスコミに対してオープンでした。
 しかし、9月1日の臨時総代会において推進総代派の多数派工作でダム反対の理事や
監事が罷免され、役員がダム推進派でほとんどを占められると事情は一変。組合事務
所への組合員の出入りさえ閉鎖的になり、役員会はマスコミの同席も拒否されるよう
になりました。この密室会議で決められた、役員会の諮問機関であるべき補償交渉委
員会には推進派役員自らが入るという無謀ぶりで、定款も規約も全くない状態だそう
です。納得いかないのは、これらの規約違反を知りながら指導も勧告もしない県漁政
課や、規約違反の上成り立っている補償交渉委員会と交渉をはじめた建設省です。
 密室会議で補償交渉を進める推進派役員や、漁協との話し合いを重視すると言いな
がら、漁業権の収用手続きを視野にいれた事業認定申請をするなど、強権的態度をと
る建設省の後ろには、何がなんでも3月までに本体着工に手をつけなければ困る官僚や
族議員、ゼネコンの焦りが見えます。11月5日のサンデー毎日に掲載された「川辺川ダ
ム入札企業一覧」を見ると、地元企業とダム推進派が結びついているか手に取るよう
によくわかります。
 川のことや組合員のことを考えない役員に牛耳られた球磨川漁協をもとの正常な状
態に戻そうと、組合員は「川辺川・球磨川を守る漁民有志の会」を結成し、頑張って
います。八代で先頭にたってダム反対署名も開始しました。しかし、我々住民も球磨
川の保全に努めてきた漁協の腐敗に対して黙っているようでは、この美しい川辺川・
球磨川を将来に残すことはできません。川は漁協だけのものではなく、漁協の一部の
者の私権で売り渡していいはずがありません。球磨川漁協の問題は、一漁協の内部抗
争ではなく、我々住民の問題として認識すべきです。


■市民も元気!続々集まるアセス署名、建設省相手に本人訴訟!
 昨年から行っているアセス署名活動ですが、皆さんのご協力もあって最近になって
特に署名の集まりがよくなっています。会員の佐々木富男さんが中心となって、熊本
市の下通りアーケード街にて署名集めを行っています。川辺川問題がマスコミでよく
報道されることもあって、さまさまな方が署名をしてくださいます。佐々木さん御自
慢の署名集めセットによって、一日で500名以上の署名が集まることもあります。
11月3日の集会では、佐藤謙一郎衆議院議員が川辺川ダムに環境アセスメントを求
めることを改めて約束しました。県民の会では10万人署名を目指して今後も活動を
継続していきます。ご協力をお願いいたします。
 2年前の川辺川ダムの基本計画変更にたいして、会員の皆さんにもご協力をいただ
いて異議申立てを行いましたが、建設省は不当にも私たちの異議申立てを今年8月8
日、却下しました。理由は、川辺川ダムの基本計画変更という行為は国民の権利義務
の侵害にはならないからというものです。この理由自体には納得できるものではあり
ませんが、弁護士の話によるとこの却下決定を取り消すには、法的には訴訟を起こす
しかないということです。関係団体や県民の会内部でも検討しましたが、やれるもの
だけでも提訴しようということになりました。提訴期限の11月6日、県民の会会員
5名も含む関係5団体計71名が建設大臣を相手取り、川辺川ダムの基本計画変更に
対する異議申立て却下決定の取消しを求めて熊本地裁に提訴しました。弁護士無しの
本人訴訟であり、裁判の行方は見当も着きません。しかし、訴えた本人たちは裁判を
通して、この川辺川ダムの不当性、建設省のやり方の強引さを広くアピールするつも
りです。是非とも皆さんのご支援をお願いいたします。また異議申立て却下に対して
何か行いたいと思っていた方に対して、時間的な制約もあって提訴の呼びかけを行う
事ができませんでした。深くお詫びいたします。


  ■■ 環境アセス署名経過報告 ■■
       衆議院  参議院   のべ
  【熊本】 15,680  15,921  31,601
  【福岡】   409    403    812
  【大阪】  1,397   1,399   2,796
   合計  17,486  17,723  35,209
以上が11月集計分です。近日中にアセス実行委員会(東京)に送ります。


●関西の会から
 ここ関西でも、他県からアセス署名が送られてくるなど川辺川の知名度は増し、ま
た川辺川ダムの悪名は確実に知れ渡ってきています。特に利水裁判での不当判決以降、
環境派市民の間では吉野川可動堰に続きなんとしても止めさせたい無駄な公共事業と
して意識されてきているように感じます。
 時代は変わりつつあります。この運動が「無視する事のできない国民の声」にまで
高まるのももうすぐです!
 川辺川・関西の会 加藤広行


●福岡の会から
福岡の会では、10月29日に地元NPO、NGOが集まる祭り、「びおふぇすた」に今
年も参加しました。会場では、人吉から直送の天然アユを焼き、生ビールと共に販売し、
清流川辺川を福岡の方に大いにアピールしました。アセス署名もいっぱい集まりました。
11月26日(日)11:00-15:00 福岡市東区の和白干潟で行われる「和白干潟祭り」に福
岡の会も出展します。川辺川グッズ、五木村物産販売や環境アセスの署名活動を行い
ます。 福岡の会 松原 学


******************
 みなさんは熊本県の「情報公開条例」をご存知でしょうか。これは県が作成してい
るいろいろな文書を取り寄せて見ることができる制度です。これにより、県の考えや
行政の進め方をある程度深く知ることができます。
 会では、県漁政課と球磨川漁協の不透明な関係を質すためにこの条例に基づく情報
開示請求を行い、県からの指導や漁協からの陳情記録などを中心とした計 200ページ
にわたる資料を入手しました。
 現在事務局で分析を行っていますが、本年3月漁協に対して行われた、臨時総代会
の開催勧告に関する文書なども含まれており、これらの資料は、今後県行政の問題点
をさらに明らかにしていくための質問書などに活用していきます。


******************
 今年の学園祭ではいろんな大学で川辺川が取り上げられたり、熊本県財政の悪化に
より職員の給料までも削減されることになった結果、労組の中でも川辺川ダムなどム
ダな公共事業に疑問の声が噴出しています。この流れを熊本だけでなく全国の流れに
つなげ、本体着工阻止を勝ち取りましょう。(^^)


■熊本県とのやりとり
 8月から11月にかけて、熊本県庁に何度も足を運び、漁政課への抗議や質問書の
提出、県知事宛に県財政に関する質問書提出、県知事との面接要求、情報開示請求(
前ページ参照)などを行いました。(10月には川辺川工事事務所にも抗議に出向き
ました。)紙面の都合で全てをお知らせすることはできませんが、一部ご紹介します。

●県民の会からの質問書
----------------------------------------------------------------------------
                           2000年8月25日
熊本県知事 潮谷 義子 様

子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
                                             代 表 中島 康

川辺川ダム建設事業に対する質問書

 当会は熊本市に本拠を置き、福岡・関西・東京に拠点を設け、川辺川ダム計画見直
しのために活動している団体です。川辺川ダムについては、自然環境面をはじめ、利
水・治水・発電等様々な面からの問題が指摘されているところですが、今般は、現在
危機に瀕している熊本県(以下「県」とする)の財政面から見た課題について、次の
とおり要望及び質問を行うものです。

 県は今年6月、危機的状況にある県財政を立て直すためとして、貴職を本部長とす
る「県財政健全化推進本部」を発足させました。これは、本年度一般会計本予算を見
ても明らかなように、1千億円以上の県債を発行してもなお 258億円の財源不足が生
じており、これに対応するため取り崩してきた「四基金」をも底を突く現状を鑑みれ
ば、遅きに失した措置と言わざるを得ません。
 さらに県財政が好転する見込みがない上に、今後、従来型予算を踏襲すれば、来年
度以降 200億円以上の財源不足となり、赤字再建団体への転落が避けられないことは
明白です。

 私達は納税者として、本年10月末までに策定される財政健全化計画を重大な関心を
持って注目しています。
 そこで同計画の策定にあたり、今後とも県財政を圧迫していくことが明らかで、か
つ当初の目的がすでに失われている川辺川ダム計画について、予算計上及び執行を凍
結することを強く要望するとともに、下記質問について、貴職の誠意ある回答をお願
いするものです。

【 質 問 】
1.県は、来年度からの3年間を「緊急・集中期間」として大型施設の建設抑制など
に取り組むとしているが、川辺川ダムのような大型公共事業はこれらの検討対象に含
まれるか。また、同期間中は川辺川ダム計画の取り扱いをどうするのか。

2.財政健全化計画の策定を含めた事業の見直しにおいては、川辺川ダムのような国
の直轄事業もこれに含まれるか。含まれる場合、事業見直しの結果等について事業主
体の国に何らかの働きかけを行う考えがあるか。

3.川辺川ダム事業費の県負担額について、金利負担等を含めた総額はいくらか。
  また今後、更なる計画変更や国の方針変更等により増額されるおそれはないか。

4.川辺川ダムにおける水質保持策として計画されている選択取水装置・清水バイパ
ス及び副ダムについて、事業費の県負担額は、上記総額に含まれるか。
  含まれない場合、当該費用はそれぞれいくらか。

5.川辺川ダム上流の五木村に計画されている県営五木ダムについて、事業費はいく
らか。

6.関連事業として建設省が行う、堆砂防止の砂防事業に係る県負担額はいくらか。

7.川辺川ダム事業費の県負担額 について、金利負担等を含めた総額に対する償還計
画を明らかにされたい。

8.川辺川流域の治水・利水・発電対策による効果について、川辺川ダムと他の代替
案での財政面における比較検討を行ったことがあるか。あれば、その結果を明らかに
されたい。

9.現在、川辺川・球磨川流域では鮎漁関連だけでも年間40億円の経済効果があると
いわれている。また球磨川下りなどの重要な観光産業を含めた川辺川・球磨川に依存
する流域の経済資源に対して、川辺川ダムが与える影響を試算したことがあるか。あ
ればその結果を明らかにされたい。

 ご回答につきましては、勝手ながら9月8日までに文書により下記事務局までお送
り下さいますようお願いします。
----------------------------------------------------------------------------


●県からの回答
----------------------------------------------------------------------------
              回  答  書

 知事からの指示により、川辺川ダム建設事業に対する質問書について、担当してお
ります地域政策課でお答えします。

(問1及び問2について)
 直轄事業は、事業主体が国であることから県として検討を行う対象とはならない。
 川辺川ダム事業も直轄事業であるので、検討を行う対象とはならない。

(問3及び問7について)
 川辺川ダムの総事業費は、基本計画において約2,650億円と定められており、この額
をもとに県の負担額を試算すれば約580億円となる。このうち平成11年度までに支出
済みのものを除けば、残額は約260億円であるが、交付税措置により県の実質的な負担
は軽減される。
 これまでの県債に係る利払費については、河川整備に係る県債として一括して借り
入れており直ちに算出することは困難である。また、将来の利払いについては、地方
債計画に基づく起債の充当率及び借り入れにあたっての利率等の予測ができないため
計算不可能である。

(問4について)
 建設省からは、ご指摘の設備については、基本計画で定められた事業費である2,65
0億円の中に含まれていると聞いている。

(問5について)
 五木ダムは、川辺川ダムに係る水源地域において生活環境、産業基盤等を計画的に
整備することを目的として策定された水源地域整備計画において、治水事業として位
置づけられた事業である。
 五木ダムの総事業費は約162億円であり、うち4分の3は国庫補助金である。
 なお、県の負担分については交付税措置があり、県の実質的な負担は軽減される。

(問6について)
 川辺川流域で実施されている直轄砂防事業は、昭和38年から40年の3ヶ年連続
の集中豪雨により、流域の至る所で大規模な土砂崩壊が発生し、多くの人命財産等に
甚大な被害を及ぼした災害を契機に、昭和42年から着手されたもので、川辺川流域
の生命財産等を土砂災害から守るための事業である。
 なお、平成11年度までの県負担額は、約77億円であるが、これについては交付
税措置があり、県の実質的な負担は軽減されている。

(問8及び問9について)
 事業主体である建設省等における検討事項であると考える。

 以上、回答します。

平成12年9月29日
 中島 康 様
                 熊本県 企画開発部地域政策課長
                      望月 一範
----------------------------------------------------------------------------


●回答を受けて:県民の会コメント
直轄事業は「聖域」
地域への経済影響も「国まかせ」
〜県、川辺川ダム事業に対し無責任な回答〜

 県は川辺川ダム事業については国の直轄事業であることを口実に種々の判断を避け
ており、いわば「逃げ」の姿勢に終始していると私たちは判断せざるを得ません。

 私たちは、県から出されたこのような無責任な回答に断固抗議するとともに、本県
における無駄な公共事業の代表である川辺川ダム計画に対する県の責任を明らかにさ
せるため、今後とも財政面はもとよりさまざまな角度からの検証を進めていき、引き
続き本計画の見直しを求めてまいります。

 以下、県からの回答に対するコメントです。

 川辺川ダム事業は、国が事業主体の直轄事業であることから、県としては事業見
直しの検討対象としないことを今回明らかにした。

 県は、危機的状況にある県財政を立て直すためとして、知事を本部長とする「県財
政健全化推進本部」を今年6月に発足させ、特に来年度からの3年間を「緊急・集中
期間」として大型施設の建設抑制に取り組むとしている。しかし、国の直轄事業につ
いては見直しの対象としないという一種の「聖域」を設けることは、危急の課題であ
る県財政の立て直しにとって重大な障害となることは明らかである。
 また、事業の妥当性を検討する以前に、事業主体が国であることを理由として見直
しの対象から外すという考え方は、熊本県政が県民の顔を見ず、中央官庁や政府の顔
色ばかりを伺って政策を進めていることの証明である。
 このような、県民を軽視した県の態度には強い憤りを覚えるものである。

 建設省が川辺川ダム建設によって得られるとしている、治水・利水・発電に係る
効果について、県は事業主体ではないという理由で、財政面について、代替案を含め
た検証を行っていない(あるいは行っていたとしてもその結果を公表する考えがない)
ことを今回表明した。
 また、球磨川下りに代表されるような、川辺川・球磨川に依存する流域の観光資源
に与えるダム建設の影響についても、県は同様の理由で試算を行っていない(あるい
は行っていたとしてもその結果を公表する考えがない)ことを今回表明した。
 さらに、費用の償還に係る具体的な計画や金額は、何ら明らかにされなかった。

 川辺川ダムは、いうまでもなく熊本県内に建設が計画されているものであり、建設
によって県民が被る各種の影響や被害については、事業主体の国だけでなく所管の自
治体である熊本県も重大な関心を払い、起こりうる課題に適切に対処していく姿勢を
見せるのは当然のことである。
 しかし、県が県民の疑問に答えていく姿勢をいささかも見せず、無責任な「逃げ」
の姿勢に終始しているのは不可解であり、その傍観者的態度は、県政に対する県民の
不信感を増大させていくばかりである。

 以上のように県は、川辺川ダム建設事業について財政面から行った県民の疑問提起
に対し、何ら主体的に対応しようとしていません。さらに国の直轄事業を聖域視する
ことにより、地域の経済など本来地方自治レベルで考えていくべき課題までも、安易
に国まかせとしている実態が浮き彫りとなりました。
 これは県の至上課題である財政の健全化やさらに地方分権などの、これからの地方
自治が目指すべき方向からも逆行するものであり、非常に遺憾なことです。

 なお本回答は、具体的な理由を示すことなく、当会が提示した回答期限(質問書提
出後2週間以内)を大幅に超過してなされたものです。また、質問書の提出は会とし
て行ったにもかかわらず、県から寄せられた回答書には当会代表者の個人名のみが記
され、会の名称はカットされていました。
 これらはいずれも市民団体及び市民運動を不当に軽視したものと受け取らざるを得
ないものであり、県に対しては併せて抗議の意思を表明するものです。


■川辺川にささぐ3コマ劇場(りす作) ※省略※


■イブは市電で遊ぼう
「チンチン電車でダムはいらん!」
 市電を貸し切って、熊本市内のメインストリートを走りながら、川辺川ダム反対を
訴えます。
車体に川辺川ダムストップの横断幕を貼り、車両内では参加者の皆さんに、清流やダ
ムに対する思いを自分の方法でアピールしてもらう予定です。楽器演奏も大歓迎です。
  集合:12月24日(日)13:30
     熊本駅前電停
  経路:熊本駅前出発、健軍折り返し
     (所要時間は約1時間半)
*運賃カンパお願いします。
18時からは県民の会の忘年会も予定しています。いずれも参加希望者は事務局まで
ご連絡ください。(事務局:096-349-8090)


●●イベントインフォメーション●●
■「これからの公共事業を考える」
〜川辺川ダム問題を考えるために〜
   講 師:蔦川 正義氏
      (佐賀大学経済学部教授)
 日 時:12月9日(土)13:30〜16:00
 会 場:熊本市民会館 第9会議室
 資料代:700円
 主 催:熊本学者・文化人の会
 連絡先:熊本大学法学部 木崎安和研究室
 電 話:096-342-2367(直通)
     096-344-2111(内線2367)


■クリスマスに贈る地球環境講演会
「公共事業と日本」
 講師 中村 敦夫氏(参議院議員、俳優)
とき:12月16日(土)13:30開場 14:00開演
ところ:八代市厚生会館
参加費:1,000円
主催:クリスマスに贈る地球環境講演会実行委員会
後援:熊本日日新聞
連絡先(社)八代青年会議所 Tel0965-32-7063


★カンパのおねがい
全労済からいただいた助成金で、10月に待望のカラーリーフレットができ、既にい
くつかのイベントで配布しました。今回、みなさんにお送り致します。先月できたば
かりなのに、大好評のため、増刷しないと足りない状況になっています。増刷するに
は30万円ほど費用がかかります。せっかくきれいなリーフレットができたので、な
るべくたくさんの人に見てもらい、川辺川の美しさをわかってほしいと思います。振
込用紙を同封しますので増刷資金カンパにご協力をお願いします。合わせて会費納入
がまだの方はお振り込みをお願い致します。