2010年2月18日、第6回「ダムによらない治水を検討する場」国交省の治水対策案に対し、要望書・意見書を提出しました。

2010年2月18日
国土交通大臣    前原 誠司 様
九州地方整備局長   岡本  博 様
熊本県知事      蒲島 郁夫 様
子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会 
代表 中島 康
清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会
共同代表 緒方俊一郎・岐部 明廣
球磨川大水害体験者の会      会長  堀尾 芳人
川辺川利水訴訟原告団       団長  茂吉 隆典
美しい球磨川を守る市民の会    代表  出水  晃
やつしろ川漁師組合        組合長 毛利 正二
川辺川・球磨川を守る漁民有志の会  代表 吉村 勝徳
第6回「ダムによらない治水を検討する場」
国交省の治水対策案に対する要望書・意見書

住民が求める「ダムによらない治水を検討する場」で実現させるもの

自然の営みを重視した球磨川水系の再生と水害防止対策

私たち住民は、流域住民が暮らしの中で宝としてきた球磨川水系を再生させ、限りなく多くの恵みをもたらしてくれる球磨川水系を守るため、そして自然の歴史が育んだ球磨川水系を含む流域全体の自然を保全するために「ダムによらない治水」を求め続けてきました。

「ダムによらない治水を検討する場」を設置した背景には、蒲島知事の「球磨川そのものがかけがえのない財産であり、守るべきは宝である」という重要な発言があります。この発言は流域住民の川を守る哲学を見事に反映させて頂いたものと住民は認識しています。

また、田中人吉市長の「地球の歴史を踏まえ、減災の考え方で、自然環境に則した様々な防災対策を組み合わせる」という流域住民の民意を反映させた発言もあります。どのような視点で川を保全し、水害防止対策に取り組むべきかを示唆したものです。

いま、住民が国交省の方たちに求めているのは、コンピューターの中の洪水対策だけではなく、現存している球磨川水系の現場に立ち、流域住民が宝としてきた川がなぜ消滅したのかを考え、宝としての川をどうやって再生させるべきなのかの対策とその実行、そして豊かな川の再生を大前提にした水害防止の対策とその実行に取り組むべきではないか思います。

球磨川水系への深い理解と愛情に根ざし、「自然の多様性の保全」と「自然と共生する生き方を求める」21世紀の新しい・自然観・世界観を共有してこそ、「ダムによらない治水を検討する場」で宝としての球磨川水系の再生対策と水害防止対策を堅実な内容でつくりあげることが出来るものと思います。

「ダムによらない治水を検討する場」においてこそ、自然再生推進法が掲げる基本理念を県・国の関係者と首長さんたちは共有して議論を進めて頂きたいものです。         


● 要望

私たちは、次のような自然の営みを重視した球磨川水系の再生と水害防止対策を強く要望します。

【T】住民が求めているものは、宝としてきた球磨川水系の再生である


《1》住民が宝としている球磨川水系はどんな川なのか
・ゆたかな生態系をもった球磨川水系であり
・ゆたかな景観をもった球磨川水系である
《2》住民が宝としている球磨川水系を育んでいる河川環境は
・アユが生きる川を育んできたのは照葉樹林であり
・ヤマメがいきる川を育んできたのは落葉広葉樹林で
・球磨川水系を育んできたのは落葉広葉樹林と照葉樹林である

【U】[T]を実現させるためには、コンクリートから生き物への転換が大切

《1》清流と景観の保全のために、いま取り組まなければならないことは
・清流と景観を破壊している砂防ダムの撤去
・ダム建設のために破壊した里山の再生
・中流域にある荒瀬ダム・瀬戸石ダムの撤去
・市房ダム・幸野ダムの水質を清流に戻す対策

《2》生態系の豊かな球磨川水系を育む多様性の豊かな森林の再生
・国有林・県有林を自然林に再生させること
・モヤシ林は間伐し、混交林に変え、生態系の豊かな人工林を創出する
・広域伐採は行わない

【V】[T]を前提に、住民が求める水害防止対策のための川づくり

《1》自然の川の営みを阻止しない大きな余地を球磨川水系に再生
・自然の営みを重視した総合治水対策 ≪別紙参照≫
※国交省案はこの項目の枠の中でのものでしかありません※
・中流域の水害の一番大きな要因となっている荒瀬ダムと瀬戸石ダムの撤去 
《2》流域全域の浸透能・保水力を高める
・山地の保水力を破壊している林道やトンネルの改修工事
・流域全域の浸透能を高める対策は、山地・田園・都市それぞれの特性を考慮し、その具体的な取り組みをする 

【W】川を破壊している山地崩壊の防止策としての山地保全対策の取り組み 

・流域の山地は脆弱な地質である。これを前提にした山地保全対策はコンクリート開発を廃し、生態系の豊かな山林保全に努めることである



● 意見

第5回に対する意見書とも重なるものもあります。

1、市房ダムの再開発は望まない。望んでいるのは水質改善であり、濁水の解消である。
2、人吉区間の異常な土砂堆積と樹木の除去は急務の仕事である
3、コンクリートづけ遊水池を流域住民は望んでいない。河川審議会が答申した霞堤の再評価や氾濫を前提とした治水対策を真剣に検討されたい
4、自然遊水地(霞堤)を指定した場合は補償制度を確立すべきである
5、川辺川の連続堤防づけは清流川辺川を破壊するものでしかない。宝としてきた川を破壊するような治水対策は持ち込むべきではない
6、「ダムによらない治水を検討する場」に川辺川ダム建設のために用意された人吉地点1/80規模を持ち出す無神経さに住民は強い怒りをもっている。基本高水治水が球磨川水系を破壊し続けてきた事実は住民みんなが熟知している。

なお、川積の増大に関する工事、樹木の伐採、中流域の嵩上げ、市房ダムの濁水の解消、堤防の強化対策等は、球磨川総合開発計画の基、大幅に球磨川に人間が手を加えるようになってからは県・国の河川局の日常の業務であると思います。

それをわざわざ「ダムによらない治水を検討する場」に持ち出して議論することではありません。早急に予算を確保し、具体的な整備作業に取り掛かるべきものです。このような具体的な整備作業を放置していることが流域流民を水害の危機に晒し続けているのです。


県民の会トップへ戻る