2008年6月5日、川辺川を守りたい女性たちの会より熊本県知事に対し、以下の申入書を提出しました。

熊本県知事  蒲島郁夫様
                                                                                 平成20年6月5日

                                        川辺川を守りたい女性たちの会 代表 原 育美

                          熊本県営荒瀬ダム撤去計画の撤回に関する要望書


 昨日6月4日、蒲島熊本県知事の唐突な県営荒瀬ダム撤去計画凍結の発表は、県民に大きな驚きと怒りをもたらしました。荒瀬ダム撤去は、坂本村をはじめとする地域住民の強い要望・請願を受けて、前潮谷義子知事が、2010年春から2015年春までの5年間で撤去することが決定され、地域住民もメンバ−となって設置された「荒瀬ダム対策検討委員会」において、その手法など具体的な協議がなされてい最中であり、前例のない国内初のダム撤去として全国から注目を集めていました。

 計画凍結の理由として、当初の予想を上回る100億円の撤去費用が、熊本県の厳しい財政状況から無理であること、ダムの発電設備はまだ充分使用できるため廃棄するのはもったいないこと、さらに、売電により1億円の利益が毎年見込まれることを上げられました。まず、今回の発表が、流域の同対策委員会になんの相談・説明もなく一方的になされたことに、私たちは到底納得できません。荒瀬ダムの撤去は、流域住民による論議を経た結論としてだされた住民の総意であり、「金がない」の一言で易々と撤回できるものでは決してありません。


 財政再建を進める熊本県にとって、100億円と予想される出費が、極めて厳しいことは理解できます。売電による1億円の収入見込みも魅力でしょう。しかし、かつて、鮎踊る川、魚湧く海といわれ、流域に豊かな恵みをもたらしていた球磨川が、荒瀬ダム建設によって鮎の漁獲量が激減したと多くの住民が証言しています。
100分の1にまで激減した、いやそれ以上の減少であると異口同音に住民は証言しています。このことは、鮎漁による収入の大幅な減少をもたらし、地域経済にも大きなマイナス影響を与えました。
そのため、荒瀬ダム撤去は、流域住民にとって、豊かな川を取り戻し、活発な鮎漁を再生させ、持続可能な地域経済の再構築に向けた取り組みの第1歩として、大きな期待がかけられていました。
この住民の期待に応えるべく、最大限の努力をする義務が知事にはあると考えますが、いかがでしょうか。地方経済の持続可能性の確保には、第1次産業の再生を図ることが最重要課題であると考えます。荒瀬ダムの撤去凍結は、この流れに逆行するものであり、納得できるものではありません。

 球磨川の漁業・観光資源h、少なく見積もっても毎年30〜35億円の価値があると試算されています。しかも、球磨川・川辺川で獲れる鮎は、時として「尺鮎」と称され、色・味・香りの三拍子が揃った極上の食材であるとの高い評価を全国の食通から得ています。東京築地市場においても高値で取り引きされています。私たちは、尺鮎トラスト運動を通して、球磨川鮎の価値を再認識あい、激減した鮎の復活と、地域再生プロジェクトの立ち上げを検討している最中だっただけに、知事の昨日の荒瀬ダム撤去凍結発表は、残念としかいいようがありません。

 世界的な水産資源の減少、食料危機が懸念される中、球磨川の恵みを流域に取り戻すことは、県としても重要な責務であると考えます。

 以上の理由から、今回の荒瀬ダム撤去の凍結をまず撤回していただき、流域住民も含め、多様な観点から再度慎重な検討を行っていただくことを、切に要望いたします。





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