2006年10月14日、小委員会に対し「球磨川水系河川整備基本方針策定の為の検討小委員会」に対する抗議及び要望書を提出しました。

2006年10月14日
球磨川水系河川整備基本方針検討小委員会
委員長他委員各位


子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
他川辺川ダム建設に反対する52住民団体
代表 中島 康
「球磨川水系河川整備基本方針策定の為の検討小委員会」に対する抗議及び要望書

 2006年10月19月「球磨川水系河川整備基本方針に関する検討小委員会」が開かれます。この間、2006年4月から2006年9月6日迄6回にわたって開かれた委員会に於いて、森林の保水力の基本高水流量への影響、及び人吉、八代での基本高水流量が検討されてきました。そもそも科学的な結論というものは素人の市民にとっても、自身の持っている経験から十分に理解納得できるものであるはずです。

 同委員会における今までの議論と委員長による採決は、その議論の経緯に於いても結論についても一般市民にとって全く納得、理解出来る物ではありません。議論内容及び結論が難しくて理解できないのではなく、納得できないのです。

 私達は、小委員会の度に、種々の意見書及び質問書を提出してきています。これに対し委員会に於いてはほとんど取り上げられていません。一度読んでいただければ私達が納得出来ないと言っていることが、理不尽な事ではないことがお分かりいただけると思い、今回、再度抗議及び要望書を提出致します。



1.人吉市及び八代市に於ける基本高水流量の設定について
 
 2006年9月6日第6回目の検討小委員会に於いて、委員長裁決によって人吉7000t/s(80年に1回の洪水12h降雨)八代9900t/s(100年に1回の洪水12h降雨)であるとして事務局(国交省)案を認めこれを妥当としました。しかし熊本県民の代表である潮谷知事は、国交省案の条件設定が住民討論集会時の説明と全く変わってしまっていることと、これに対する国交省の説明に納得できない事、基本高水流量と同じか、又はこれを超える洪水が今までに起こっておらず、現実を踏まえた検討をすべきこと、今まで住民側からの声がとりあげられていない事、等々多くの理由のもと、この採決に納得出来ない旨述べているにもかかわらず、委員長は採決を押し通しました。
 知事が言うように、基本高水流量の値を決める為には、もっと多くの議論と検討がなされなければならず、熊本県民としてとうてい納得出来るものではありません。今まで何度となく提出している熊本県民からの要望書、意見書を十分に参考とし、現地を見、現地の声を現地で聞き、住民側専門家を交えた検討を行い、住民(県民)が心から納得する結論を出す為に、今回の採決を白紙とするべきです。

2.
 熊本で行われて来た住民討論集会で、国交省が絶対正しいとして譲ろうとしなかった、基本高水流量の設定条件、データの選び方、計算方法等々全く違ったものになってきています。熊本で説明したことは間違っていたのでしょうか。前回だけでなく何回もこのことは要望書で委員会として明らかにし、熊本県民を納得させるよう申し入れてあるにもかかわらず、何の説明もなく委員会そもものが国交省の言いなりになっているとしか思えません。その様な中で出された採決を認める事は出来ません。今回の採決は撤回すべきです。

3.安全率について

 2006年8月10日の委員会の席上、委員長は住民側の意見の安全に対する考えに疑問を感じる旨の発言が有りました。要は住民が出した意見書の中身を見ると安全について分かっていないと云われている聞こえました。では国交省と各委員の方々は1/80とか1/100はどのような科学的、社会的見地から検討され決められているのか。小委員会の議論を聞く限りでは納得出来ません。又、私達は安全率は高い方が良いことは十分に分かっています。例に出されたYS-11の安全の為には機体全体を10mmの鉄板で作るなら壊れにくくはあるでしょうが、飛ばす為に巨大なエンジンが必要となるでしょう。だから貴重な国民の税金を使う公共事業には費用対効果というものが論じられるのではないでしょうか。私達の計算では川辺川ダムの費用対効果は「1」を遙かに下回っています。又、前回の委員長発言の中で「八代の安全率を100とすることに問題があるのなら、80と100の間をとって90では云々」等ありましたが、素人が効く限り専門的な議論とは思えません。このような議論での採決には納得できません。採決は白紙にすべきです。

4.市房ダムについて

 前回の小委員会に対し出した要望書その1の(3)の項目に明記しましたが、1971年8月1982年7月明らかに過大放流が行われています。このことは人吉市民の多くが知った上で、市房ダムの放流が洪水原因であるという説を信じているのです。今回の小委員会迄、水害体験者等から何回もこのことは言及されているにもかかわらず、当委員会では国交省の説明も委員会での議論も十分というにはほど遠いものです。現地を十分に調査し、十分な検討を加え、人吉市民が納得がいくよう取り扱われるべきです。再度、検討のために小委員会で審議をすべきであると言えます。

5.球磨川・基本高水流量の審議過程における虚構について

 別紙資料で国交省の検討小委員会に於ける基本高水流量の説明には重大な虚構があります。(1)降雨継続時間を48hから12hに変更(2)人吉の基本高水流量(3)流量確率法による検証の仕方(4)森林の保水機能(5)森林の生長と保水力の向上、それぞれについて私達が検証すると、別紙にある通り極めて大きな問題が認められ、今回の国交省案は信用出来ません。採決を白紙に戻し、住民側と十分な検討をするべきです。

6.森林の保水力について

 森林の保水力の問題については、第3回目の検討小委員会に於いて、森林の保水力は、まだ新学説であって、安定した学説になるには時間が必要であり、森林の保水力に期待した治水計画は立てられないとして、森林の保水力が基本高水流量に及ぼす影響はないと結論づけられました。ここにいたる論拠の一つとして、現地共同検証において計測された地表流が全降雨量の約1%であったことを挙げてあります。住民側からは共同検証の計測方法に問題があった為、値についての信憑性に欠けるとして、やりなおしを求め、その為の要望書を小委員会各委員に出しているにもかかわらず、これは無視されています。知事が述べているように「河川整備計画が長期を見据えたものであれば、もうわずかの時間で森林の保水力の新学説に一つの結論が出ようとしているもの」を切り捨て、地表流1%は採用するというのはあまりにも都合良すぎるのではないですか。また、現に山では特に人工林に於いては地表流が頻繁に発生している事実すらも無視してしまうような審議の結果だされた結論はどう見ても納得できるものではありません。結論を白紙にもどし現地調査と共同検証を再開し、審議のやりなおしをすべきです。

7.国交省の説明責任について

 2006年9月6日の委員会で熊本県潮谷知事は委員長の決裁に対し、まだ納得していない点、多々あり、よって熊本県民に対し、説明責任を果たしてもらいたい旨、及び流域委員会の設置を要望しました。私達は先に述べましたこと以外にも今回の国交省の資料説明及び、委員会の審議内容についても極めて多くの疑問点があります。よって委員長も発言していたように是非熊本で住民討論集会に相当する形式で県民に対する説明責任を果たすことを要求し、又検討小委員会からもこれを強く勧告されることを要望致します。

以 上 



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