2005年3月14日、川辺川利水訴訟原告団・弁護団より、以下の意見書を提出しました。

2005年3月14日

熊本県地域振興部
部長 鎌 倉 孝 幸 殿

川辺川利水訴訟原告団
団  長  茂 吉 隆 典
川辺川利水訴訟弁護団
団  長  板 井   優

 意   見   書

第1 国土交通省九州整備局の不誠実極まりない対応
 1 本年3月10日に開催された事前協議においては、総合調整役である熊本県地域振興部の指示に基づき、国土交通省九州地方整備局(以下九州整備局という)及び熊本県土木部が、ダム以外利水案に対する見解を項目ごとに検討した結果を責任者名義で書面にして示し、項目ごとに逐一検討することが予定されていた。

   同事前協議に、熊本県農政部は、同月7日付け「平成17年2月20日提案のダム以外案(300億案)策定の前提・手法」と知敷原と棚葉瀬・高原揚水機掛の各水利権の取り扱いについての資料2通とを提出した。

   ところが、九州整備局は同日付け「新利水計画に関する正常流量について」(国土交通省九州地方整備局河川調査官塚原健一)、熊本県土木部は同日付け「既得水利権について」(熊本県土木部次長藤澤寛)と題する各1枚の書面を提出したに過ぎず、かつ、それらの書面はそれぞれの見解を書き連ねものであって、熊本県農政部の提出した書面に対し、項目ごとに検討を行える状況では全くなかった。

   そこで、総合調整役は、逐一検討可能な書面の再提出を求め、協議は約35分間にわたり中断した。


 2 協議再開後、九州整備局及び熊本県土木部は、上記両名の名前を記載した「平成17年2月20日提案のダム以外案策定の前提・手法」と題する書面を提出したが、「その検討に関して河川管理者が関与するものではありません」、「なお、今後、現地調査等により具体的な範囲の確認をお願い致します」、「ただし、新利水計画ダム以外案の取水口地点以下から川辺川の球磨川合流地点までの区間の水利流量については、今後、利水事業者が、確認を行う必要があります」など曖昧な表現が各所に見られ、その記載内容について議論が紛糾した。

   そこで、総合調整役は、九州整備局及び熊本県土木部に対して、熊本県農政部と協議したうえで、表現を書き改めるよう求め、協議は約50分間にわたり中断した。

   その結果、九州整備局及び熊本県土木部から、「平成17年2月20日提案のダム以外案策定の前提・手法niついて」が提出され、ようやく項目ごとの検討が出来る前提が整った。

  事前協議は、昨年秋、総合調整役が、関係農家に示す計画概要素案(ダム案及びダム以外案)に関する検討10項目を整理し論点ごとに議論を進めていく方針を示して以来、約半年にわたり水利権問題で膠着状態に陥っているが、協議の遅れが、九州整備局及び熊本県土木部の不誠実極まりない対応に起因していることは明らかである。

   3月10日に開催された事前協議では、市町村担当者から農繁期に入るので協議を早く進めて欲しいとの切実な要望が出されたほか、九州農政局からも新利水計画策定のための手続の遅れを懸念する声が上がった。

   九州整備局及び熊本県土木部は、事前協議に参加する関係団体の真摯な態度に思いを致して、誠実に協議に臨むよう強く要望するものである。

第2 九州整備局と熊本県土木部に対する照会事項 
 1 
提出する書面の責任者名義を国土交通大臣または国土交通省九州地方整備局長および熊本県知事または熊本県土木部部長と出来ないかどうか。

 2 書面の形式であるが、熊本県農政部の文章を全て引用したうえで、回答する形式にして頂きたい。

 3 文書名であるが訂正された3月10日付け「平成17年2月20日提案のダム以外案策定の前提・手法について」ではなく、文書名を正確に引用して「『平成17年2月20日提案のダム以外案(300億案)策定の前提・手法』に対する回答」として頂きたい。

 4 以下は、平成17年3月10日「平成17年2月20日提案のダム以外案策定の前提・手法について」(改訂版)に対して、照会する。

1) 上記第2項水利権@(ア)の「なお、今後、現地調査等により具体的な範囲の確認をお願いします」を削除願いたい。残すとすれば、これを残す具体的な意味を明らかにして、かつ将来無用な支障を与えないような文言に代えていただきたい。

2)  上記第2項水利権@(イ)(ウ)について、熊本県農政部の示した見解は根拠があると考えるが、根拠ないということであれば、具体的な調査に基づいた具体的な理由を挙げていただきたい。なお、その際、従前の河川管理者の見解では棚葉瀬・高原揚水機「掛」について既得水利権はないとしていたが、これをあるとした経過に即して説明をされたい。 

3) 上記第2項水利権Bの表現であるが、これは熊本県農政部が提出した見解に基づいて申請がなされるのであれば、水利権審査上の支障がないという意味か。そうでないとすれば、どういう意味なのか具体的に説明をされたい。

4)  上記第3項正常流量Aについて「ただし、新利水計画ダム以外案の取水口地点下流から川辺川の球磨川合流地点までの区間の水利流量については、今後、利水事業者が確認を行なう必要があります」は削除して頂きたい。
もし、この文言がどうしても必要だというのであれば、この文言の具体的な意味をその上の6行の文章との関係で明快に説明されたい。

5) 末尾に、河川管理者は新利水事業の策定に当たって事前協議で協議された内容を尊重し、上記の熊本県農政部のダム以外利水案の趣旨に沿った水利権申請手続きがなされたら、本回答の内容を踏まえた処理を迅速に行ないたい、との文言を入れられたい。





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