2005年2月7日、川辺川ダム反対52住民団体より、以下の意見書を提出しました。
 (基本高水、現況河道流量問題については、住民討論集会のページ等も併せてご覧下さい)

                       2005年2月7日

熊本県知事       潮谷義子 様 
熊本県地域振興部 部長 鎌倉孝幸 様

     子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会 代表 中島 康
       (川辺川ダム反対52住民団体代表連絡先)

現況河道流量(人吉地点)及び萩原堤防に関する専門家会議開催に向けた、
国土交通省に説明を求める項目

 貴職の川辺川ダム問題解決へのご尽力に対し、心より敬意を表します。1月28日の「森林の保水力の共同検証等に関する専門家会議」の合意事項に基づき、下記の通り「国土交通省に説明を求める項目」について記します。

1.昨年8月30日の台風16号時の球磨川の全ての観測所の流量の「速報値」及び「速報値」を推算したH-Q式を公表すること。また、球磨川の各流量観測所のピーク流量を含む全ての観測流量値を公表すること。以上を含む台風 16号に関する球磨川の「高水速報」を全て公表すること。

○理由・根拠:現況の河道流量を算定する基礎資料とするため。現況の河道流量を算定するには、最新の河川縦横断図とともに、これらの資料は不可欠なものだと考えられる。

2.人吉地点で、平水位以上の河床を掘削した場合の河道の流下能力(流下可能流量)を公表すること。

○理由・根拠:国土交通省は、平水位以上の河床を掘削した場合の流下能力は毎秒4000トンであると主張しているが、昨年8月30日の台風16号時、実際に毎秒4300トンが流れている。人吉市の中川原周辺等では、平水位以上に相当な量の土砂が堆積しており、現況で平水位以上の河床を掘削した場合の流下能力は毎秒4000トン以上あると考えられるため。

3.人吉地点で、仮に以前の建設省の改修計画通り河床掘削(1.0〜1.5m程度)した場合の河道の流下能力を公表すること。

○理由・根拠:河道掘削をする場合の基礎資料とするため。仮に以前の計画通り河床掘削(1.0〜1.5m程度)した場合でも毎秒4400トンしか流れないと国土交通省は主張しているが、昨年8月30日の台風16号時、実際に毎秒4300トンが流れている。仮に以前の建設省の改修計画通り河床掘削(1.0〜 1.5m程度)した場合、毎秒4400トン以上流れると考えられるため。

4.国土交通省のホームページによると、「市房ダムは、洪水のピーク時に毎秒403トンの洪水を貯留し、人吉地点の河川水位を最大約20cm低下させた」としている。ところが、人吉地点におけるピーク水位(8月30日16時40分)は 3.96mであり、計画高水位(4.07m)まで約 0.1mの余裕があり、堤防の天端までは 1.6m以上の余裕があった。人吉市は、今回の台風16号の出水で、「市房ダムがなければ人吉市内では越水していた」と市としての正式な見解を公表している。ただし、水位の低減量については「各地点で異なり明確な数字は回答できない」としている。当然、このような専門的な見解については国土交通省若しくは熊本県の指導のもとに発表されているものと思われるので、この見解のもととなっている観測、計算資料等を全て公表すること。また万一、この見解が国土交通省若しくは熊本県の指導ではなく、人吉市独自の判断で有る場合には、その判断の正否について、その根拠とともに明らかにされたい。

○理由・根拠:国土交通省が公表した「平成16年8月台風16号洪水痕跡図」を見ると、人吉地区で計画高水位を超えたポイントはあっても、現況堤防高を越えたポイントは存在せず、「市房ダムがなければ人吉市内では越水していた」とすれば、「市房ダムがなければ人吉市内では破堤していた」ことになる。国土交通省及び人吉市の主張の妥当性を検証するため。

5.昨年8月30日の台風16号時の人吉地区の洪水痕跡調査結果を、各ポイントの洪水痕跡の写真、各ポイントのピーク流量時の写真、最新の河川横断図を示した上で明らかにすること。

○理由・根拠:現況の河道流量を算定する基礎資料とするため。国土交通省が公表した「平成16年8月台風16号洪水痕跡図」と、住民が現地で確認した最高水位が食い違う箇所があり、その妥当性を検証するため。

6.昨年8月30日の台風16号で最も被害が大きかった中流域(特に芦北地区など)の治水対策事業の計画を明らかにすること。

○理由・根拠:昨年8月30日の台風16号で最も被害が大きかった中流域(特に芦北地区など)で、改修対象地区であるにもかかわらず、改修がなされていない箇所が存在するため。

7.萩原堤防問題

(1)堤防設計指針の改訂と萩原フロンティア堤防工事中止の関係を時系列で説明すること。

(2)萩原では基本高水の8,600m3/sの時でも水位は一部でHWLを40cm上回る だけであり、10,000m3/s程度の超過洪水によっても越水する個所はない。しかし、平成13年度に実施が発表された難破堤のフロンティア堤防の整備により、八代地区の治水安全対策がより安全なものになるのであれば、早急に実施すべきである。平成12年度「萩原地区実施設計業務報告書」の設計が技術的、法的に不可能であれば、根拠を明らかにして、説明すること。

(3)また、フロンティア堤防については、「現時点では、一般に施行していない」との説明であったが、その後、三重県の雲出川など全国4河川 12ヶ所において完成されていることが明らかになった。萩原に計画されていたフロンティア堤防事業とそれらの事業とはどこが違うのか、また、それら12ヶ所のフロンティア事業は新堤防設計指針と整合性はあるのか説明すること。

(4)国土交通省は、築堤に当たっては深掘れ対策事業が必要だと説明しているが、その事業実施の為に行った調査報告書を明らかにして深掘れの実態を説明する事。

○理由・根拠:萩原堤防問題についての国土交通省の説明が不十分であるため。

8.国土交通省の内部文書(いわゆる塚原メモ)では、2.2)「新たな治水計画の検討」では、「現在の工実を踏襲した整備方針、整備計画を策定し、 F,Nでダム事業を実施するのか、新たな治水計画をベースに整備方針、整備計画を策定するのかの判断が必要。新たな治水計画を策定する場合、洪水調節容量が大幅に増加するため、川辺川ダムを洪水調節専用ダムとする必要がある」との認識が示されているが、この内容について説明すること。
2.3)「上流、中流、下流の安全度及び本川上流の取り扱い」では、「整備方針、整備計画において、下流部、中流部、人吉、本川上流部の治水安全度をどう設定するか整理が必要である」との認識が示されているが、どのような整理が必要であると考えられているのか説明すること。

○理由・根拠:今後、流域の治水安全度を再検討する場合の参考資料とするため。

                       以上





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