1 咋年12月26日に開催された事前協議において、国土交通省は球磨川水系で正常流量が定められているのは柳瀬地点と人吉地点だけであると断言し、かつ正常流量はダム建設を前提にしていないとも明言した。そこで、私たちは、本年1月7日付け意見書(照会事項)で「正常流量」をめぐりその法的根拠となる公文書を明らかにすることなどについて、国土交通省九州整備局に具体的な説明を求めた。
これに対して、本年1月12日の事前協議で、九州地方整備局は、「正常流量」の根拠となる公文書については、新河川法の河川整備基本方針とみなされる旧河川法の工事実施基本計画(平成9年法律69号附則2条)としては、昭和41年に決定された球磨川水系工事実施基本計画が存在するが、この中には「正常流量」の基準地点古田(八代市)しか記載していないことをしぶしぶ認めた。
また、現在事前協議において説明されてきた人吉地点及び柳瀬地点の「正常流量」は、上記球磨川水系工事実施基本計画で定められたものではなく(昭和63年の改正の際にも両地点の正常流量は工事実施基本計画のなかに盛り込まれていない)、昭和51年に公告された川辺川ダムの建設に関する基本計画にも両地点の「正常流量」は明記されていないことが明らかになった。
九州地方整備局の口頭だけでの説明では、川辺川ダム建設計画を策定する作業の中で柳瀬と人吉地点の「正常流量」値が出てくるというが、これが本当か嘘かはひとまず置くとして、これは両地点の「正常流量」値がダム計画を前提にしていることを九州地方整備局が自白したこととともに、法律上なんらの根拠もないものであることをも認めたものである。
以上、国土交通省九州地方整備局は、昨年12月26日の事前協議で、公然と虚偽の事実を述べたものであり、この点について何ら謝罪すらもしていないものであって、まさに「始めにダムありき」を押し通すためには嘘も平気で使って何ら恥じるところがないという無責任な役所でしかない。
要するに、九州地方整備局が説明してきた人吉地点及び柳瀬地点の「正常流量」の値は、あくまでも川辺川ダムを建設することを前提に行政内部で恣意的に定められたものに過ぎず、なんら法的な根拠のないものであって、このような恣意的流量値を根拠にして新利水計画の計画内容(事業費など)を左右することは到底許されないと言うべきである。
2 そこで、私たちとしては、国土交通省九州地方整備局に対し、次の事項について照会する。
@ 「正常流量」、「現況流量」、「維持流量」の概念とその法的な根拠を具体的に説明すること
A 「正常流量」、「現況流量」、「維持流量」の各値の定め方を、これらを定めたとする地点ごとに、基礎となった資料を開示して歴史的事実に従って具体的かつ客観的根拠を示して行うこと。
その際に、非ダム利水案に関してどうしても調整池が必要というのであれば、これを裏付ける具体的な法的根拠を公文書に基づきこれを示して説明されたい。この点では、人吉地点と柳瀬地点の双方、あるいは人吉地点、柳瀬地点それぞれの地点の「正常流量」値を満たさなければならない具体的理由と具体的根拠につき公文書を示して明らかにされたい。
柳瀬地点及び人吉地点の「正常流量」を決定する際、流量算定の根拠となった基礎資料全部を開示されたい。
B 既存水利権は「正常流量」に優先するのか。するのであれば、具体的にはどういうことについて例を挙げて、かつ法令上の具体的根拠を示して説明されたい。
C 川辺川およびそれ以外の中小河川の既存水利権について、同規模で改修する場合最大取水量について従前どおりの取り扱いとなるか。もし、これを見直すということであれば、非ダム利水案(熊本県農政部が検討しているケース)を実現する上で転用も含めてどのような配慮ができるのか具体的資料を提示して具体的に示されたい。
D 既存水利権を合口した場合に、各既存水利権の最大取水量を合計した最大取水量をもって最大取水量となるのか。そうでないとすれば、その具体的な根拠につき資料を示して明らかにされたい。
E 球磨川本流と川辺川の合流地点以東の球磨川(市房ダム寄り)に関して、既存水利権(百太郎溝など)と「正常流量」との関係で昭和39年の命令書で取水制限が付されていない運用事例となっているとするが、その経緯と命令の根拠をも含めて明らかにされたい。
3 なお、川辺川以外の中小河川に関するため池などに関する協議の進行状況について明らかにされたい。