2004年12月16日、県民の会より熊本県あてに治水問題や住民討論集会に関する以下の要請書を提出しました。

                       
 2004年12月16日

熊本県知事       潮谷義子 様 
熊本県地域振興部 部長 鎌倉孝幸 様

     子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
      代表 中島 康
       (川辺川ダム反対52住民団体代表連絡先)

要 請 書

 貴職の川辺川ダム問題解決へのご尽力に対し、心より敬意を表します。

 12月2日付け「人吉地点の河道流量に関する要請」に対し、国土交通省九州地方整備局は同日、「3900トンは人吉市街地の約5キロ区間で計画高水位を超えない流量を示したもので一地点のことではない。今回の台風でも流水痕跡調査の結果では19カ所で計画高水位を超えている」と反論しています。反論だけでは、国土交通省は説明責任を果たしたとはとても言えないばかりか、私たち住民の川辺川ダムに対する疑問や不安はさらに増すばかりです。

 また、萩原堤防のフロンティア事業計画がなくなった理由などについても、9月9日に開催された説明会における、住民の質問に対する国土交通省の回答は、信頼性のあるものとは思われず、納得できないものでした。

 情報の共有がなければ、行政と住民との信頼関係は生まれません。下記事項について国土交通省が説明責任を果たすよう、熊本県がコーディネートされることを再度要請します。

1.12月2日付け要請に対して、明らかにされていない下記4点について明らかにすること。

(1)本年8月30日の台風16号時の球磨川の全ての観測所の流量の「速報値」及び「速報値」を推算したH-Q式を公表すること。また、球磨川の各流量観測所のピーク流量を含む全ての観測流量値を公表すること。以上を含む台風 16号に関する球磨川の「高水速報」を全て公表すること。

(2)人吉地点で、平水位以上の河床を掘削した場合の河道の流下能力(流下可能流量)を公表すること。

(3)人吉地点で、仮に以前の建設省の改修計画通り河床掘削(1.0〜1.5m程度)した場合の河道の流下能力を公表すること。

(4)国土交通省のホームページによると、「市房ダムは、洪水のピーク時に毎秒403トンの洪水を貯留し、人吉地点の河川水位を最大約20cm低下させた」としています。ところが、人吉地点におけるピーク水位(8月30日16時40分)は
  3.96mであり、計画高水位 (4.07m)まで約0.1mの余裕があり、堤防の天端までは1.6m以上の余裕がありました。人吉市は、今回の台風16号の出水で、「市房ダムがなければ人吉市内では越水していた」と市としての正式な見解を公表しています。ただし、水位の低減量については「各地点で異なり明確な数字は回答できない」としています。当然、このような専門的な見解については国土交通省若しくは熊本県の指導のもとに発表されているものと思われますので、この見解のもととなっている観測、計算資料等を全て公表すること。

  また万一、この見解が国土交通省若しくは熊本県の指導ではなく、人吉市独自の判断で有る場合には、その判断の正否について、その根拠とともに明らかにされたい。

  また、仮に人吉市がまちがった判断をしていた場合に、国及び県は、なぜ人吉市の公言を放置してきたのか理由を説明すること。

2.本年8月30日の台風16号時の人吉地区の洪水痕跡調査結果を、各ポイントの洪水痕跡写真、各ポイントのピーク流量時の写真、最新の河川横断図を示した上で明らかにすること。

3.本年8月30日の台風16号で最も被害が大きかった中流域(特に芦北地区など)の治水対策事業の計画を明らかにするとともに、強力に推進すること。

4.以上の項目に関する資料を開示した上で、台風16号の出水に関する住民討論集会を開催して、十分な説明を行うこと。

5.萩原堤防問題

(1)萩原では基本高水の8,600m3/sの時でも水位は一部でHWLを40cm上回るだけであり、10,000m3/s程度の超過洪水によっても越水する箇所はない。したがって「越水」で破堤することはないと考えられることから、そもそも「越水」を想定したスーパー堤防は不要であると考えられるがどうか。

(2)第9次治水事業7ヶ年計画の全国のフロンティア堤防計画、及び実施箇所を明らかにするとともに、萩原フロンティア堤防が実施されなかった理由を説明すること。

(3)2001年度に萩原フロンティア堤防に予算1億円が計上された時に、球磨川漁業協同組合が築堤工事に反対した理由を説明すること。

(4)堤防設計指針の改訂と萩原フロンティア堤防工事中止の関係を時系列で説明すること。

(5)人吉地区河床掘削、中流地区嵩上げ事業、萩原地区フロンティア堤防の2004年度残事業及び、2005年度事業予定を明らかにすること。

(6)萩原堤防のフロンティア堤防計画が中止になった理由は、新しい堤防設計指針に合わなくなったと説明されているが、どの部分が設計指針に合わないのか、具体的に説明をすること。

(7)また、フロンティア堤防については、「現時点では、一般に施行していない」との説明であったが、その後、三重県の雲出川などでは完成されていることが明らかになった。萩原に計画されていたフロンティア堤防事業とそれらの事業とはどこが違うのか、また、雲出川のフロンティア事業は新堤防設計指針と整合性はあるのか説明すること。

6.2001年の水防法改正により、「浸水想定区域図」の作成が義務づけられ、全国でも作成が進み、県内の対象河川は球磨川を除く全てで作成が完了している。国土交通省が「全国でも最も危険な河川」という球磨川については 9月に完成予定とされていたが、どうなったのか。

7.
これまで開催を要求してきた、川辺川ダム建設事業費増額問題に関する住民討論集会を早急に開催すること。

8.国土交通省の内部文書(いわゆる塚原メモ)関係

(1) 2.2)「新たな治水計画の検討」では、「現在の工実を踏襲した整備方針、整備計画を策定し、F,Nでダム事業を実施するのか、新たな治水計画をベースに整備方針、整備計画を策定するのかの判断が必要。新たな治水計画を策定する場合、洪水調節容量が大幅に増加するため、川辺川ダムを洪水調節専用ダムとする必要がある」との認識が示されているが、この内容について説明すること。

(2) 2.3)「上流、中流、下流の安全度及び本川上流の取り扱い」では、「整備方針、整備計画において、下流部、中流部、人吉、本川上流部の治水安全度をどう設定するか整理が必要である」との認識が示されているが、どのような整理が必要なのか説明すること。

9.本年8月末の台風16号により濁水化した川辺川は、水位が低下した後も長期間汚濁が続いた。その後の2個の台風でも同様の現象が観測され、鮎漁の最盛期であった同時期の漁獲は、壊滅的な被害をこうむることとなった。このような濁水の長期化は、これまでの川辺川では見られなかったものである。私たち住民団体と球磨川・川辺川流域の漁民は、国土交通省に、この濁水の長期化の原因について調査を要請してきた。特に、朴木砂防堰堤が濁水を発生させ続けた原因についての調査結果を文書で明らかにすること。

10.川辺川ダム水没予定地周辺の国道445号線の瀬目トンネル内部に、長さ約20mに渡ってコンクリートがはがれたり、大きな亀裂が入ったりしているのが分かり、住民に不安を与えていることが報道されている。この周辺には断層が走り、地盤も非常に脆いといわれている。さらに、頭地よりの大平トンネルにも同様な亀裂が入っている。水没地周辺の地盤や地質は安全なのか、両トンネルの調査結果と合わせて文書で明らかにすること。

                            以上