国営川辺川総合土地改良事業に農民提訴

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  • 今年6月26日(水)川辺川ダムから農業用水を引く『国営総合川辺川土地改良事 業』は不要とし、866戸の農家が農水大臣を相手取り、熊本地方裁判所に行政訴訟 を起こしました。

  • 国営川辺川土地改良事業とは  農家からの「申請事業」として、農水省が昭和58年に川辺川ダムから水を引く計 画を発表。農水省側は94年11月4日までに「利水事業対象農家の89%の同意を 得た」としています。 これに対し、事業の問題点が多いことに気付いた対象農家は同事業は不要として、 94年12月に1,144戸の農家が農水省に『異議申立書』を提出しました。

    【補足】
    国営の土地改良事業では対象農家の2/3の同意を得ないと事業ができない ことになっています。この事業の対象農家は約4,000戸。そのうちの 約1/3の農家が異議申し立てをしていることになり、農水省の言う「89 %」の農家が事業実施に同意したとは考えられません。

  • 同意の取り方の問題
    この事業は国営の部分と県営または団体営の部分に分かれており、ダムから要所要 所までは大きな導水路で国(農水省)が工事を請け負います。そこから先の農家のた んぼや畑までの小さい導水路は県や団体(市町村)での工事になります。 農家は当然水代を払わなければならないのですが、役場職員などが「水はタダだか ら」と言って同意の印鑑を取っている例が多数あります。また、国営の事業に対する 農家の負担金は「0」になりましたが、県営・団体営の負担金額がいくらになるかは 今でも明らかにされていません。その上、事業内容を詳しく説明されていなかったり、 事業参加の印鑑を、「これは利水事業の除外の印鑑ですから」などと明らかに騙して つかせるなど、行政による組織的犯罪としか言いようのない事実も多数明らかになっ てきています。


    現在の農業用水は主に川辺川などからの自然流水を利用していますが、ダムから の水を引くようになると、農家は現在の農業用水の水利権を放棄させられた上に新 たにポンプアップなどの大がかりな設備が必要となり、農家の負担金額はかなりの 金額になると考えられます。 国営の農家負担額「0」の分はもちろん我々の税金が使われます。(平成6年度試算 でこの利水事業に350億円が見込まれています。しかしながら、実際の工事額は最 低その4〜5倍になるのが通例なので、実際には1500億円から2000億円の国民の税金 が事業終了までに投入されると予想されます。ダム本体工事費用は、少なくとも2000 億円と見られます。

  • 農家の実状
    農家では、国の減反政策に加えて農産物の自由化による農業経営の採算割れや高齢化 ・後継者不足に悩まされており、水を引いたところで、「水代に見合う作物を作る自信 がない」とか「高い水代を払ってまで農業はしたくない」と言う声が聞かれます。 2年前に大干ばつが川辺川土地改良事業の対象地域を襲いましたが、その時も被害が出 たところはほんの一部で、むしろ大豊作でした。大多数の農家で現在、水は足りている のです。

  • 異議申し立て棄却
  1. 異議申立人等の主張は適法な主張とは認められない。
  2. 異議申立人等の主張には理由がない。 として土地改良法に定める決定期限を一年以上も経過していたにもかかわらず、96年 3月29日、農林水産大臣は農家の口頭審理・意見陳述が終結していないまま異議申し 立てを棄却しました。

    そこで、今年6月26日、棄却を不服とした農家が提訴したのです。

    「うちには跡継ぎがいないので参加したくない。」
    「経済的に引き合う作物を作るあてがない。」などの申し立てのどこが
    「理由がない。」のでしょうか。
    またその際、今までに行政側が行ってきた数々の違法な行為への言及・
    お詫びの一言もありません。
    まさに現代の「切り捨て御免」といわざるを得ません。(提訴の声明文より抜粋)

    川辺川ダムは治水・利水・発電の目的のもとに計画されています。この目的の内、利水 事業について、これが否定されるとダム計画自体が見直さなければならなくなります。そ の為農水省は強引に農家への同意を取り付け、この事業の正当性を主張しているのです。 又、各自治体が不当な方法での同意取り付けと云う組織犯罪に加担し、農民をだましてい ることも事実なのです。

    本来この提訴自体で、ダム計画の見直しが開始されるべきなのに、逆に農家の声も住 民の反対も押し切って工事を強行しようとする動きが強くなっています。 皆さんの支援をよろしくお願いします。