治水に川辺川ダム不要
〜 国の資料でも明らかに 〜

※ この資料は、2001年12月に作成されたものです。


概要

民間団体の「川辺川研究会」が11月5日に発表した報告書(球磨川の治水と川辺川ダム)で、「球磨川の治水対策として、川辺川ダムは不要」という事実が明らかとなった。

また、国の内部資料(国土交通省八代工事事務所作成「防災業務計画書」98年版)にも、安全限界以上の流下能力があるという計算結果(H-Q式)が示されている事が判明した。(九州地方整備局は、2001年度版には手書きの「バツ印」をつけており、本件が新聞報道で明らかになった後、手書き部分を消込み修正)

更に、国土交通省が上記事実の否定見解を示した記者会見資料(12月3日)と、熊本県相良村で開催された検討会(3000人参加)で公開した資料からも「治水にダムは不要」の事実が読み取れる、皮肉な結果となった。(不等流計算結果を参照)

川辺川研究会の指摘の通り、流域最大の人口・資産を持つ八代地域では「川辺川ダム不要」は、国土交通省も認めた。これにより、ダムが持つ洪水便益効果は、下流域では完全に消失した事になる。

結果として、洪水便益金額は3090億円から1390に減少し、ダム事業の費用対効果は、1.55から、わずか0.73まで減少する。

費用対効果が1.0を大きく割込む川辺川ダム事業に対しては「強制収用発動」ではなく、「事業再評価委員会」へ審査を差戻し、「中止・凍結」の判断をする事が必要である。


経緯

11月5日に「球磨川の治水と川辺川ダム」の報告書が公表され、「球磨川の治水対策には、川辺川ダムは不要で、部分的な河道掘削や堤防のかさ上げなど、約70億円の費用で対応可能」との治水代替案が提案された。

「川辺川研究会」の報告書が公表された後、国土交通省は八代地区での「ダム不要」を渋々認めたが、九州地方整備局は12月3日に「反論見解」を記者発表し、今まで秘中の秘とされていた「不等流計算結果」の未公開資料を公表せざるを得なくなった。また、熊本県が主催した12月9日の「川辺川ダムを考える県民大集会(3000人参加)においても、ダム不要論に反論しているが、八代地区ではダムなしで洪水流量を流せる事実は否定出来なかった。

しかし、平成10年度に建設省川辺川工事事務所が作成した資料(川辺川ダム事業について)では、八代地区については、ダムを建設しないとしたら50m〜120mにわたって川幅を拡張する必要があり、1500戸の移転が必要と説明していた。八代でダム不要の事実は、11月の川辺川研究会の報告書で明らかにされるまで、ひた隠しにされており、住民向け説明会や議会でのダム説明でも全く触れられていない。

「所管公共事業の再評価実施要項」に基づき、実施された九州地方整備局の「事業評価監視委員会」では、国土交通省から提示された資料(費用対効果:1.55)を元に、今年10月に「事業継続は妥当」との答申を出している。

上記の「事業評価監視委員会」では、川辺川ダム事業については、2回の継続審議を経て、最後は異例とも思える「付帯意見」をつけて審議終了している。

更に、国土交通省は5名の河川工学専門家から構成される「球磨川水系の治水に関する客観性検討委員会」を設置して、治水面での専門家検討を実施した。(5名の委員は国土交通省により選定されているため、市民団体が推薦する専門家を委員へ追加任命するように要望したが、拒否された。)

上記、両委員会での結論は、事実と異なる虚偽の資料に基づいた審査・検討が行われており、川辺川ダム事業の評価については、両委員会に差し戻して再審議に諮るべきである。


国土交通省が公表した「不等流計算結果」

これは、現在の河道状況で80年に一度の洪水流量が流れた状態を計算。
(9000m3から市房ダムの400m3の効果を加味した8600m3の流量)


国土交通省の見解

現在の状態では、安全に流下させる事は不可河床の掘削等の措置が必要。

約1キロにわたって、最高で約40Cm川の水位が計画高水位を上回る。

堤防の断面が不足していることを踏まえた危険水位を超え、この区間ではいつ堤防が破堤してもおかしくない状態である。


川辺川研究会の見解

一部掘削を実施すれば、流下可能という事は代替措置でダム無しの治水対策可能と言う事。

現況堤防は、計画堤防高より高く築堤されており、充分な余裕高を有している。

現況堤防は護岸されており、直ちに破堤するような状況ではない。

八代の治水対策としては、川辺川ダムは全く必要ない。

八代では、既存堤防の強化・整備で充分流域で最大の人口・資産を保持する八代市の洪水調整の便益(1700億円)効果が無くなるので、費用対効果が0.73まで低下する。

事業再評価委員会に差戻し、再検討すべき。


通信販売

川辺川ダムにたいする疑問や治水の問題点、代替案など詳しく解説してある、
川辺川研究会発行の「球磨川の治水と川辺川ダム」を通信販売しています。


通信販売のページへ